【第42回】 2008年10月16日
“アルバイト以下”の待遇に喘ぐ
若手正社員の悲惨な職場事情
店長になると「月給35万円の固定制」とだけ説明され、残業代は全く支払われなかった。時給計算すれば、アルバイト時代の時給を割り込でしまう。ほぼ365日、深夜までオープンしている居酒屋では、長時間にわたる深夜労働はどうしても避けられない。
「なんでこんな時間に仕事しているんだろう……」
深夜3時頃、時計を見ながら和夫さんはしばしば疑問を感じてしまう。
こういった長時間労働は、なにも居酒屋業界に限ったことではない。裁量労働制による「みなし残業」で長時間労働やサービス残業が増えていること、非正社員の増加により正社員の時間外労働が増えているとことなどが、その背景にある。
男女共同参画会議の「仕事と生活の調和に関する専門調査会」が07年に発表した報告書によれば、週60時間以上働いている労働者は全国平均で5人に1人、東京では3人に1人という状況だ。そのため、20~30代でも過労死する人が出てきている。疲れ切った社員の離職率は高まる一方だ。
なかでも飲食業界の競争は激しい。和夫さんが籍を置く居酒屋チェーンも経営難に陥り、この夏から店舗のスクラップ&ビルドが始まった。
和夫さんの店舗もスクラップされる候補に入っており、店長から副店長、あるいはヒラ社員への降格も避けられない。むろん業績が低迷して店がなくなれば、それで終わり。これでは日々の努力も虚しくて仕方がない。
一方で、こういった「名ばかり正社員」の現状を冷静に見つめている学生も少なくない。
「学生アルバイトならいいけど、正社員として就職しようとは思わなかった」と断言するのは、大学4年生の小池真希さん(仮名・22歳)だ。
真希さんは北関東で生まれ育ち、大学も実家から地元の大学に通っている。自宅付近に、有名な大手アパレルの店舗が新規出店したため、オープニングスタッフとして05年4月からアルバイトを始めた。理由は、「時給が高かったから」(真希さん)。
地域の学生アルバイトの相場が時給800円なのに対し、大手アパレル店の時給は900円。オープン当初は準備に追われ、1日8時間、週5日シフトに入った。
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