【第42回】 2008年10月16日
“アルバイト以下”の待遇に喘ぐ
若手正社員の悲惨な職場事情
かといって、それで給与が増えるわけでもない。あまりの激務に8キロも痩せてしまったという。
月末に診療報酬明細書(レセプト)の記入業務などをする時期には、残業時間が特に増えて、終電近くまで仕事が続くこともしばしば。しかし、友子さんの病院では残業代は一律時給800円しかもらえない。
これは明らかに労働基準法に違反しているが、従業員が指摘しても院長は「残業代を出してやっているだけありがたいと思え」と取り合わない。
こんな状況だから、勤務年数5年目にして友子さんの現在の年収はわずか約220万円に過ぎない。正社員とはいえ、これでは派遣社員と同じ賃金水準である。NPO法人派遣ネットワーク(本部・東京都新宿区)によれば、06年の派遣社員の時給は全国平均で1327円、平均年収は226万3692円となっている。
すっかり嫌気が差している友子さんだが、周囲を見渡せば、医療事務は派遣など非正規雇用化が進んでいる職種でもあり、病院を移ったところで明るい展望は見えない。友子さんは今、異業種に転職すべきかどうか真剣に悩んでいるという。
毎日18時間は下らない
恐るべき「超長時間労働」
また、離職率が20~30%とも言われる居酒屋業界にも悲惨なケースが多い。マクドナルドの「名ばかり管理職」同様、労働環境はかなり厳しいのだ。
菊池和夫さん(仮名・27歳)は都内の高校卒業後、居酒屋チェーンでアルバイトをしていた。3年後、21歳の時に居酒屋チェーンの社長から「新規出店するから、店長候補で社員にならないか」と誘われ、正社員となった。
接客業にやりがいを感じていた和夫さんにとっては、魅力的な申し出だった。先が見えない時給900円のアルバイト生活からの脱出。しかし、ここから和夫さんの「恐るべき長時間労働の日々」が始まったのである。
和夫さんは、ランチの仕込みのために毎朝10時には出勤する。ランチタイム終了後は、夜の営業のための準備。夕方、店がオープンすると深夜3時まで接客は続く。閉店後、後片付けを済ますと時計の針はすでに朝5時を回っているのが常だ。
「仕事の合間のちょっとした空き時間に店内で仮眠しても、18時間労働は下らない」と、和夫さんは憔悴し切った様子で語る。
入社後半年は1日も休みがとれなかった。半年後、店長になると責任はさらに重くなった。急に休みを入れるアルバイトの穴埋めにも出勤しなければならないため、年に4日程度の休みしかとれないのが現状だ。
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