ニュースの狭間
取材現場でふと目についたこと。毎日ニュースを報道していて、見えてきたこと。バラエティ・ジャパン編集部員が流れていく「ニュースの狭間」にあるトピックを取り上げ掘り下げていくコラム。エンタテインメント・ニュースから、世界が見えてくる。
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第4回アジア海洋映画祭イン幕張が、9月5日(金)から7日(日)まで、海浜幕張にあるシネプレックス幕張で開催された。長編コンペティション部門にはアジア各国から6作品がエントリーし、グランプリを競ったが、この映画祭の良さは技巧を競うことより、多様なアジアの映画を見、それを作った映画人同士、またはファンと映画人が交流し、新しいトレンドを生み出していくことにある。今年も参加した5組のゲストや観客が一体となってフレンドリーな空間を作り出した。
主催はアジア海洋映画祭イン幕張実行委員会。千葉テレビ放送が事務局となり、千葉県、千葉市、財団法人千葉県文化振興財団、財団法人ちば国際コンベンションビューロー、株式会社幕張メッセとともに運営した。
主催はアジア海洋映画祭イン幕張実行委員会。千葉テレビ放送が事務局となり、千葉県、千葉市、財団法人千葉県文化振興財団、財団法人ちば国際コンベンションビューロー、株式会社幕張メッセとともに運営した。
今年の来場者は4600人。映画祭がはじまった当初は3000人であったことを考えると、着実に観客は増えている。3回目あたりから映画祭のラインナップが観客に浸透しはじめ、ここでしか見られない“アジア映画”に固定ファンがついたのだいう。今回は、フィリピン映画『バタネス』の前売りが瞬く間にソールドアウトとなり、追加上映を行った。遠くは北海道、東北などからの観客もいたそうだ。
映画祭設立の根底にあるのは、千葉県フィルムコミッションの立ち上げの席で意気投合した、千葉テレビの野々宮正樹プロデューサーと、大槻幸一郎千葉県副知事(当時)の、「千葉にも、横浜や東京のような映画祭を!」という熱い思い。ただし都心に近い千葉だからこそ、「なぜここでやるのか?」という強い動機には欠けていた。都内に出れば、さまざまなジャンルや国の映画を見ることができる。そこで土地がらを反映させ、テーマを海とし、アジア地域の作品を上映することに限定した。アジアの映画人たちに交流できる場を提供するのだと。
映画祭設立の根底にあるのは、千葉県フィルムコミッションの立ち上げの席で意気投合した、千葉テレビの野々宮正樹プロデューサーと、大槻幸一郎千葉県副知事(当時)の、「千葉にも、横浜や東京のような映画祭を!」という熱い思い。ただし都心に近い千葉だからこそ、「なぜここでやるのか?」という強い動機には欠けていた。都内に出れば、さまざまなジャンルや国の映画を見ることができる。そこで土地がらを反映させ、テーマを海とし、アジア地域の作品を上映することに限定した。アジアの映画人たちに交流できる場を提供するのだと。
スタッフには映画のプロをそろえた。プログラマーに東京国際映画祭「アジアの風」部門を担当していた暉晙創三、総合プロデューサーにベテラン映画プロデューサーの岡田裕。プロの手を借りたことでしっかりとした基盤固めができた。
国際交流に主眼をおいた映画祭という狙いは見事に当たった。参加した監督が帰国後、映画祭の評判をほかの作家に話し、参加希望の話が舞い込むようになった。過去に出品した監督が新作で再びエントリーしたいといってくるケースもあった。
国際交流に主眼をおいた映画祭という狙いは見事に当たった。参加した監督が帰国後、映画祭の評判をほかの作家に話し、参加希望の話が舞い込むようになった。過去に出品した監督が新作で再びエントリーしたいといってくるケースもあった。
だがそれを支える運営資金は潤沢とはいえない。梶野元延アシスタントプロデューサーも「これが一番苦労するところなんです」と苦笑いする。現在、運営費は約3000万円弱。映画祭が成長するにしたがって、その額は減っているという。大手金融破たんがメディアをにぎわす経済情勢もマイナスに作用する。「文化的、社会的に意味のあるイベントなんですが、目に見える形でのスポンサー・メリットを作りにくいんです」。メセナともタイアップともつかないこの手のイベント。協賛してくれるだけでもありがたい。だがなんとも消化しきれない感情も残る。都市近郊で行われる映画祭の在りようは難しい。
映画祭が終わって1週間。グランプリを取った『海角七号』が、台湾の映画興行史を塗り替えるほど大ヒットしているというニュースが入ってきた。あ、あれだ。あの映画だ。あの俳優さんが出ている、あの監督が撮った映画だ。どんな表情で、どんな発言をしていたかを思い出し、映画自体をもよみがえらせる。あの場にいた者なら誰しも聞いた瞬間にこのプロセスをたどっただろう。このニュースは、空間を共有した者、映画祭を訪れた者だけが味わえる喜びを届けてくれた。
映画祭が終わって1週間。グランプリを取った『海角七号』が、台湾の映画興行史を塗り替えるほど大ヒットしているというニュースが入ってきた。あ、あれだ。あの映画だ。あの俳優さんが出ている、あの監督が撮った映画だ。どんな表情で、どんな発言をしていたかを思い出し、映画自体をもよみがえらせる。あの場にいた者なら誰しも聞いた瞬間にこのプロセスをたどっただろう。このニュースは、空間を共有した者、映画祭を訪れた者だけが味わえる喜びを届けてくれた。
【コンペティション作品と参加者のエピソード】
海難事故で父親を失った少年がたくましく成長していくさまを描いた『奇跡の海』の松生秀二監督は、テレビの演出家出身。65歳で映画を初監督し、これからは映画でと決意表明した。
『奇跡の海』
監督:松生秀二
出演:篠田拓馬、田中好子、渡辺裕之
『奇跡の海』
監督:松生秀二
出演:篠田拓馬、田中好子、渡辺裕之
父親の形見である8ミリカメラの使い方を学びに犬とソウルに向かう少年のほろ苦い成長物語『少年監督』のイ・ウヨル監督は、苦労して映画を学んだことを告白。初監督&日本初公開にもかかわらずサインをねだられるなどさっそく日本のファンを獲得した。
『少年監督』
監督:イ・ウヨル
『少年監督』
監督:イ・ウヨル
大恋愛のすえに結ばれた夫を漁で失った女性の海との戦いと再生を描くフィリピン映画『バタネス』。主演のF4のケン・チュウと人気女優イサ・カルサドのスケジュール調整での苦労を問われたデイヴ・フコム監督は、「台湾からもマニラからも離れていたから囲い込んでしまえばこちらのもの」とちゃっかり。
『バタネス』
監督:アドルフォ・アリックス・ジュニア、デーブ・フコム
主演:朱孝天(ケン・チュウ)、イサ・カルサド
『バタネス』
監督:アドルフォ・アリックス・ジュニア、デーブ・フコム
主演:朱孝天(ケン・チュウ)、イサ・カルサド
ティーンエイジャーのひと夏の恋を4つのエピソードを交差させて描いた『夏休み ハートはドキドキ!』の出演者チャンタウィット・タナセーウィーはバックパッカーに扮した蒼井そらとの共演に「オリンピック代表に選ばれた気分」、またタイでは未発売の蒼井作品をどうやって知ったのかと問われたソンヨット・スックマークアナン監督は「オフィシャルには知りません」と答え爆笑を誘った。
ソンヨット・スックマークアナン監督からひと言
『夏休み ハートはドキドキ!』
監督:ソンヨット・スックマークアナン
出演:チャンタウィット・タナセーウィー、蒼井そら
ソンヨット・スックマークアナン監督からひと言
『夏休み ハートはドキドキ!』
監督:ソンヨット・スックマークアナン
出演:チャンタウィット・タナセーウィー、蒼井そら
60年前の恋と現代の恋愛模様を手紙というモチーフでつないだ『海角七号』のサミュエル・ウェイ監督と主演のVan(ファン・イーチェン)は、ヒロインに扮する田中千絵が酔ってVan演じる郵便配達員の家の前で管を巻くシーンが好きだと声をそろえた。その暴れっぷりにほれてか、二人とも「台湾では全力でお守りしますが、日本では守って欲しい」と田中にこん願。田中は日本人女優であるが、『頭文字<イニシャル>D THE MOVIE』(05)への出演をきっかけに中国語を学び始め、現在は台湾をベースに活動、本作で初の主役を射止めた。
『海角七号』
監督:魏徳聖
主演:范逸臣(Van)、田中千絵、中孝介
『海角七号』
監督:魏徳聖
主演:范逸臣(Van)、田中千絵、中孝介