eliyaの日記

2008-10-15

[] そもそも、なんのために金融市場ってあるわけ?なんか私の役にたってるの? 15:36

いなばさんのブクマをきっかけにして、すごい勢いでアクセスが伸びています。先日のエントリーは僕の学生向けの授業メモを翻訳したので、経済学のキソのキが欠けています。金融市場の役割は大事なので補足します。

経済学の目的は、モノやサービスを、一番必要な人や、一番活用できる人にあげて、社会の無駄がないようにすることです。金融市場も同じで、とりあえずお金が今いらないひとから、今すぐお金を必要とする人にあげるために存在します。


将来より多くのお金を返してもいいから、今すぐお金が欲しい人がいる。

たとえば、たかし君がgoogleを超える素晴らしい検索エンジンのアルゴリズムを考え付いたとしましょう。でも、検索サイトを開くためには強力なサーバーが必要です。サーバーの元手くらい世界最高の検索エンジンなら数年で軽く稼げますが、たかし君はまずサーバーを借りるお金が必要です。世界中からアクセスが殺到することはわかっているので、巨大なサーバが必要になります。巨大で安定的なサーバーを借りるためには億単位のお金が必要です。(googleはすでに300億円以上サーバーに投じています。

たかし君には億単位のお金はありません。どんなに優秀なエンジニアだとしても、それだけ自分でためるには10年かそれ以上かかるでしょう。もし300億円ためなくてはいけないのだったら、一生働きづめでも無理でしょう。たかし君は億万長者になるチャンスを逃しますが、世界の損失でもあります。googleより効率的な検索エンジンがあるなら、みんなハッピーになるのに、たかし君にお金がないばかりに実現することができません。

これはコンビニをはじめたいと思ったおじさんや、新しい液晶工場を作りたいと思っている企業でも同じです。

いつでも「今の」お金が余っている人はいる。

お金の貸し手というと、銀行を想像するかもしれませんが、銀行は預金を通じて消費者からお金を借りています。結局、主要な資金の出し手は私たち普通の人です。私たちは、万が一に備えて貯金をするし、引退後に備えた貯蓄もします。引退資金は、引退したときに確実に手元にあれば、働いているときは別に他の人が使っていてもかまいません。もちろん手元資金に余裕がある企業もお金の貸し手です。


金融市場は、今すぐお金が必要な人と、お金を使うのは後でいい人を結びつける

金融市場は、今すぐお金が必要なたかし君と、引退するまでとりあえずお金を使うあてがない普通の消費者をつなぐ役目を果たします。貸し手としては別にタンスに置いておいてもいいわけですが、借り手としてはそれでは困るので、「将来あなたが必要になったときには、お礼をつけて返しますよ。」っていうわけです。それが金利です。

金融市場があるから、タンス預金より有効なお金の使い道があって、引退資金をためている普通の人は得をします。たかし君は当然ハッピーです。コンビニをはじめたいと思ったおじさんや、新しい液晶工場を作りたいと思っている企業も得をします。最後に、無関係な消費者も、最高の検索エンジンや、近くの新しいコンビニから利益を得ます。金融市場は大事です。

YHEYYHEY 2008/10/16 12:27 はじめてブログを拝見させていただきました。
どの記事もとても分かりやすく、感銘を受けましたのでコメントさせていただきます。

僕は経済学科出身で、大学ではスティグリッツ系譜の藪下先生から経済の基礎を学びました。時を同じくして「クルーグマン教授の経済教室」を手に取り、理論に留まらない事例を勉強させてもらい、僕もクルーグマンのファンになりました。

知識レベルや経済(学)への関わり方などはeliyaさんには到底及びませんが、僕もクルーグマンのノーベル経済学賞受賞はうれしく思っています。

また覗かせていただきますね。
今後も期待しています。

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