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【社説】

高齢者医療 見直しは現役の理解を

2008年10月16日

 後期高齢者医療制度の見直しは医療制度全体にかかわる問題だけに部分的修正では済まない。衆院選目当てのその場しのぎに終始するのではなく、給付と負担のあり方に遡(さかのぼ)って議論すべきだ。

 七十五歳以上を対象にした後期高齢者医療制度で、これまでサラリーマンの子供らに扶養されていて保険料を納めていなかった二百万人の被扶養者についても十五日、年金からの保険料天引きが始まった。

 四月からの天引きが間に合わず延期していた二十九区市町村での天引きも同時にスタートした。

 これらの自治体では天引きまでの半年間、金融機関での納付が必要だったが、郵送された納付書に気が付かなかったり、既に天引きされていると思い込み“未納”になっていた高齢者が少なくない。そこに納付を求める督促状が突然送られ、それについての問い合わせが各自治体に殺到した。今回も制度の周知不徹底が混乱を招いた。

 高齢者の反発を受け、これまでに二度、保険料の減免措置が行われた結果、四分の三の高齢者の保険料が新制度前よりも下がったが、減免の仕組みが複雑になって理解しがたくなってしまった。

 近づく総選挙への影響を心配した政府は制度の「改善」を約束した。舛添要一厚生労働相は先週、批判のある後期高齢者医療制度の七十五歳の区切りをなくすため、同制度と国民健康保険制度(国保)を一体化し、都道府県単位に再編する「私案」を公表したが、十分に練った内容とはいえない。

 確かに国保は市町村別に分立していて小規模ほど財政基盤が不安定であり、私案が指摘するように広域化するのが望ましい。

 だが、都道府県には保険料を徴収するノウハウがない。都道府県が後期高齢者医療制度の保険者を引き受けるのを拒否したのはこのためであり、実現は容易ではない。また、一体化した保険制度の財源として健康保険組合などからの拠出金をあてにしているのも安易すぎる。西濃運輸健保組合などが解散に追い込まれたのは、高齢者医療への拠出金の増大に耐え切れなかったのが原因であることを忘れてはならない。

 制度をどのように変えるにしても現役世代の支援が欠かせない。

 後期高齢者医療制度では財政面で高齢者と現役世代との負担割合を明確にした長所もある。高齢者の不満を和らげるために制度を見直すとしても、現役世代が納得できるものでなければならない。

 

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