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【社説】

有毒インゲン 『ギョーザ』事件教訓に

2008年10月16日

 中国製冷凍食品に混入された有毒物で中毒になる事件が繰り返された。日中の捜査当局が、ギョーザ事件で対立し解決が遅れている影響が大きい。これを教訓に今こそ協力し徹底捜査すべきだ。

 主婦を入院させた冷凍インゲンには原液に近い殺虫剤が含まれていた。残留農薬とは考えられず何者かが混入した可能性が高い。混入は中国の製造過程か、日本の流通時か、断定ができていない。

 しかし、今年一月末に発覚した、中国製冷凍ギョーザへの殺虫剤混入事件で犯人が捕まり厳罰に処されていれば、事件再発の可能性が低かったのは間違いない。

 ギョーザ事件で日中両政府は当初、協力し事件を解決すると申し合わせた。しかし製造元の河北省石家荘市の工場や当局、国家品質監督検査検疫総局が相次いで中国で混入された可能性を否定した。

 日本の警察トップが日本で混入された可能性を否定すると、中国公安当局は捜査終了を待たずに記者会見を開き、中国で混入された可能性は「極めて小さい」と反論した。両国の国民感情は悪化し、インターネットでは相手国を非難する意見が渦巻いた。

 捜査が軌道に戻ったのは五、七月の首脳会談で福田康夫首相(当時)が胡錦濤国家主席に中国食品の信頼回復には事件解決が不可欠なことを訴え、胡主席が再捜査を指示してから。問題のギョーザが中国でも中毒事件を起こしていることがわかり、製造元で殺虫剤が混入された可能性が高まった。

 九月に発覚したメラミンによる乳製品中毒事件は、同じ石家荘市にある別の工場が汚染源だった。昨年末に消費者が訴えてからも製造元や地元当局は事件をひた隠しにした。ギョーザ事件で中国での殺虫剤混入を否定した国家品質監督検査検疫総局のトップもメラミン事件で辞任に追い込まれ、隠ぺい体質が問題にされている。

 こうした経過を振り返れば、インゲン事件の解明に必要なことが浮かび上がる。日中の関係者や当局が相手国に責任をなすり合わず真に協力する。二十三日に麻生太郎首相がアジア欧州会議(ASEM)出席のため北京を訪れる。日中首脳会談で事件解明を誓い合う絶好の機会だろう。

 繰り返される中国食品の事件に消費者は怒っている。しかし、物価高で安い中国食品は食卓に欠かせない。事件解明で食の安全を確保することは日本だけでなく中国消費者の訴えでもあるはずだ。

 

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