中国製冷凍ギョーザ中毒事件の真相がまだ解明されないのに、同じ中国産の冷凍インゲンによる中毒事件が発生した。ニチレイフーズが輸入しイトーヨーカ堂が販売していた商品だ。厚生労働省は製造元の煙台北海食品(山東省)製の食品すべてについて輸入手続きを差し止め、ほかに健康被害がないか都道府県を通じて全国調査を開始した。
なぜ、こうした中毒事件が起きるのか。消費者は安心して食べ物を口にできない。体調不良を訴えた主婦が食べたインゲンからは、基準値を最大で3万4000倍上回る有機リン系殺虫剤「ジクロルボス」が検出された。体重60キログラムの人がインゲンを0.07グラム食べただけで健康被害が生じる恐れのある濃度だという。
中国製冷凍ギョーザに混入された有機リン系殺虫剤「メタミドホス」も、通常の残留農薬ではあり得ない高濃度だった。今回も厚労省は「通常の残留は考えにくく、何者かが混入した可能性が高い」という。ジクロルボスは冷凍ギョーザの一部からも検出されている。
冷凍ギョーザ事件では混入場所をめぐり日中当局の見解が対立した。その後、中国の製造元が回収した製品が再流通し新たな中毒事件を起こし、中国公安当局は工場内での混入も視野に捜査を再開している。今回の事件の詳細はまだ不明だが、今度こそ日中政府が協力し、全力をあげて真相究明に取り組んでほしい。
それにしても食の安全を脅かす事件が相次いでいる。9月にはカビ毒や残留農薬に汚染された「事故米」の食用への転売が明らかになり、中国の乳製品に有害物質メラミンが混入していた問題では国内でも大手企業が商品回収に追われた。
経緯がある程度わかっている事故米やメラミンに対し、冷凍ギョーザやインゲンは真相が全くわからない。消費者の不安は募る一方だ。
冷凍インゲンを口にした主婦は石油のようなにおいを感じたという。自分の五感を研ぎ澄ますことが大事だが、それではあまりに心もとない。企業は原材料までさかのぼって安全管理を徹底してほしい。どうすれば故意の混入など悪意から食の安全を守れるかも、官民で真剣に考える必要がある。