世界経済は混乱のただ中にあって、人々は疑心暗鬼の連鎖反応に陥っている。
いま各国に大切なのは、この連鎖を断ち、人々に安心して経済活動ができるような環境を提供することだ。日本はそのリーダーシップをとるべきである。施策に当たっては次の点に留意したい。
第一に、金融危機への対応を含めた対策のスケールは、何人の予測も超える大きいものでなくてはならない。
こんなことを言うと不謹慎と思う人もいるだろうが、それは木を見て森を思わない発想であって、ちまちまとした小出しの対策は事態を混乱させるだけだ。
経済の引き締めと緩和を繰り返す「ストップ&ゴー」政策の失敗を思い起こしたい。霞が関の「埋蔵金」などは危機のためにあるのではないか。
第二に対策は、新しい活力を創造するものでないといけない。人類の歴史において活力の創造といえば「産業革命」をもって最大とするが、それはまさに既存の社会システム「馬車と運河による海運」と蒸気機関車の戦いであった。
当時、蒸気機関車への偏見は抜きがたいものがあり、一般の人だけでなく先進的な評論家からも批判を受けた。
英有力誌「クオータリー・レビュー」は「スピードが速ければよい、というのであれば、やがて我々は自分自身を大砲で撃ち出すことになろう」との趣旨で冷笑したのであった。
ショックから始まった混乱はショックによって収まる。ここは英断が望まれる。
日本の政治経済がその任に堪えうるか否かによって、21世紀の日本の世界における位置は決まる。この一週間は日本にとって最大の試練の時期となるであろう。(可軒)