金沢カレーで世界を目指す(宮森宏和氏)
日々精進、スタッフ全員が徳を積んでいくことが大切と語る。宮森氏は自信の内面も磨く、まるで僧侶のような人物だった
「たかが野球、されど野球」と言ったのは、誰だったろうか?
話は、松井秀喜がニューヨークヤンキースに移籍して、初の打席に立った日、2003年4月9日にさかのぼる。
1死2・3塁で4番打者が敬遠された後、松井の打席がめぐってきた。その結果は、見事に満塁ホームラン! これが松井秀喜のメジャーにおける初のホームランとなり、ファンは大歓声を上げた。この出来事は、まだ皆さんの記憶にも新しいだろう。
このホームランを、遠く離れた北陸の地、金沢でテレビ観戦していた1人の人物がいた。彼の運命も、このホームランによって大きく変わることになったのである。
今回ご紹介するゴーゴーカレーグループの代表、宮森宏和氏(1973年12月10日生)が、その人である。
それまで、松井秀喜とは同郷人であること以外に、何の接点も無かったのだが、テレビ画面で、あの松井のホームランを見た瞬間に、「俺もこうはしていられない、メジャーにならなければ」と、心に強く思った! いや、強く誓ったと表現した方が正しいのだろう。
それまで、独立を考えていたわけでもなく、ましてや起業の準備などまったくしていなかった。
旅行代理店のサラリーマンだった宮森氏だったが、このホームランを見た瞬間の強烈なインスピレーションによって、即、退職の意向を会社に告げたのである。
メジャーになると決めても、これから野球でメジャーを目指す年齢でもない。そこで、起業の手段として、宮森氏が目を付けたモノ。それは地元で人気のあった金沢カレーだった。
金沢カレーとは何か?
それぞれの店によって違いはあるものの、基本的には、ルーは濃厚でドロッとしており、味は昔ながらのカレーといった感じであろうか。それをステンレスの皿に盛り、ルーの上にトンカツを乗せてソースをかける。
付け合わせには、キャベツの千切りが添えられる。これをフォークまたは、先の割れたスプーンで食べるのである。
昔懐かしい雰囲気と、文句なしのボリューム感の金沢カレー
恥ずかしながら金沢カレーというものを、私は知らなかった。
確かに、地方に行くと時々、その地方独特の食べ物や、意外な食べ方が見受けられる。
例えば、名古屋ではスパゲッティに餡がかかっている。岡山でラーメン屋に行けば、デミグラスソースの丼がメニューにある。また、長崎の佐世保バーガーは、他所とは違ったジャンボサイズのハンバーガーとして、既に知られている。
私は大阪人であるが、お好み焼き定食やうどん定食も、ほかの地域の方々からは変わった組み合わせだと思われているようである。
話がそれたが、とにかく地元独特の金沢カレーを世に知らせたことが、宮森氏のビジネスの成功につながったと、私は思う。
宮森氏は、あるカレー店で約5ヵ月間の修業をした後に、土地勘のある金沢ではなく、メジャーを目指して、あえて東京・新宿の西口に出店したのである。
それから4年の月日が流れた。
現在は直営店として、新宿本店、新宿東口中央通店、金沢本店、野々市役場店、そしてNY本店がある。このNY店はマスコミに取り上げられ、全米に紹介されたそうである。
加盟店としては、秋葉原1号店、ルネスかなざわ店、保古町店、近岡店、輪島店、掛尾店、富山呉羽店、長野中央通り店、鹿島店、鹿児島宇宿店、沖縄南風原店。
年内にはNYに2号店の出店予定があり、国内でも、松山、富山、倉敷、名古屋、大阪と、出店計画が目白押しである。
「ゴーゴーカレー」新宿本店。宮森氏の記念すべき第1号店、いや第1号ホームランである
ここまでの経緯を見て、さぞ競争心に溢れた負けん気の強い人物のように思われるかも知れない。
「商売はケンカと同じ!」「ビジネスは競争だ!」と発想する経営者は多いと思うが、宮森氏はこのような発想の経営者とは根本的に違っている。「ビジネスのためのビジネスは絶対にしない」と断言しているのだ。
宮森氏は、ワタミの渡邉美樹氏が設立代表者となっている特定非営利活動法人「SAJ スクール・エンド・ジャパン」の金沢支部長としても、熱心に活動している。募金箱をゴーゴーカレーの各店に設置し、カンボジアに学校を作るための募金を集めているのだ。
ゴーゴーカレーグループでは、その理念ともいうべき、ゴーゴースピリッツを掲げている。それはどういうものなのか?
われわれは、ありとあらゆる世界を元気にすることを目的とし、「世界で一番元気なグループ企業に絶対なります!」
宮森氏にとって、ビジネス活動は、このゴーゴースピリッツを達成するための手段に過ぎない。
当面は、松井秀喜の背番号55番にちなんで、世界55カ国に出店し、出店総数555店舗を目指すという。
もちろん、これもゴーゴースピリッツを達成するための通過点に過ぎないようだ。
宮森氏の表情からは、「自信」というよりも「確信」を感じる。初打席で初ホームランを放った松井秀喜の心境に似ているのかも知れない。
「ありとあらゆる人を幸せにする! それが自分の責任です」と語る宮森氏。これからの活躍にエールを送り続けたい。ゴーゴーゴー!
2007年9月19日|Posted by 力彩 宮島
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