2007/06/13(Wed)−前田 雄吉(まえだ ゆうきち)国会質問
財政金融委員会 『新破産法について』
○前田分科員
 おはようございます。民主党の前田雄吉です。
 私は、RCC、整理回収機構のウオッチャーとしてずっとRCCを見てまいりましたけれども、最近、特に目に余る回収のやり方、あるいは職員の倫理規定違反ではないかと思うような行為が非常に続いております。私は、そうしたことを当財務金融委員会の委員の皆様にぜひお知りいただきたい、そうした趣旨のもとで、きょう、あえて質問させていただきます。
 特にきょう私が取り上げたいケースは、栃木県の川治温泉にあります、しにせの旅館であります柏屋ホテル、これが債権回収の対象となったわけでありますけれども、この柏屋に関してRCCがいかなることをやってきたか、これを明らかにして、そして、この財務金融委員会の皆様に、これに対しての預金保険機構のあり方等をよくお考えいただきたいと思いまして、質問いたします。
 まず、この柏屋さんの御説明をしますけれども、柏屋さんは川治温泉で最大級のしにせ、一九二六年に創業されております。九〇年代に地元の足利銀行から融資を受けて新館を建てるなど、バブル期は非常に拡張をされたわけですけれども、全国の温泉に本当にあるケースでありまして、バブルの崩壊で経営が悪化して、〇五年には十九億円の債務超過に陥ったという案件であります。そして、足利銀行も経営が破綻したわけでありますので、RCCにその債権が譲渡されたわけであります。
 ここからが問題であります。
 私は、このRCCの債権対象であります柏屋のあり方というのは、大きく三つの問題点を含んでいると思います。一つは、何と、債権回収の対象であります柏屋にRCCがたかり行為をした、これがまず第一点の間違い。第二点目が、裁判の過程におきまして、非常に、これは法務にかかわる話でありますけれども、そこで司法権の独立が侵害されるような案件があった。そして三番目に、RCCが破産申し立てをしておきながら、これは私どもの調査で明らかになりましたけれども、債権譲渡先としてRCC系列の会社を選んだという三点が問題点として挙げられます。
 そうしたことからいきまして、私は、産業再生機構同様に、もうRCCは時代の任を終えた、もうRCCは要らない、解体されるべきだという持論を持っております。
 それで、RCCもこれは最大のサービサーでありますので、金融サービサーの問題について少し私も御説明させていただきたいと思っております。
 皆さん、金融サービサー、これは外資系のものがあり、いわゆる町金系のものがあり、そしてこのRCC自体、また、公認会計士がつくられたサービサーもあります。こうした大体四類型から五類型に分かれております金融サービサーでありますけれども、金融サービサー自体は弁護士法の特例事項でありますので、法務委員会の所轄に近い。しかし、やっている内容は非常に金融行政に密着したことでありますので、私は当委員会でやってしかるべきであるというふうに思っております。
 大企業が発表しました二〇〇六年度の決算書の多くは高収益、しかし、その一方で、中小企業が、倒産や個人の破産、こうしたもので苦しんでおります。地域間格差もあり、また個人と企業の格差もどんどん進んでいる、日本経済の中核を担っている中小企業を何とか今救わなきゃいけない、私はそう考えております。
 ところが、昨今、整理回収機構などが、先ほど申し上げておりますけれども、温泉旅館や病院に対して、迅速な企業再生を図るという名目で、破産法を活用して事業再生をねらう。当時、この柏屋さんの案件が出たときには、美談であると新聞も褒めたたえておりました。しかし、実際はそうではない。
 破産法というのは改正されました破産法でありますけれども、ほとんどが自己破産であります。わずかに一%、二%、それが債権者による破産申し立て。RCCが債権者として破産申し立てをする、先ほど申し上げました温泉とか病院等の再生にこれを使う。では、どういう利点があるんだ。民事再生を打ちますと、一年も二年も長い時間がかかる。しかし、破産法を使って債権者破産申し立てをすれば、わずかな期間で破産決定がされて事業再生に向かえるという話ですけれども、実際には、地域で旅館なども非常に泣いております。
 私は、サービス業でこの破産法を活用しての事業再生というのはあり得ないというふうに思っております。とにかく、債権者が一方的に破産申し立てをすること自体、これまで当該企業を支えていた経営者、従業員、取引業者の意向を無視している、そういうふうに思います。また、整理回収機構の掲げる企業再生、地域経済の活性化には全くつながっていない。単に整理回収機構や金融サービサーなどが、一債権者が債権回収の極大化を図るために破産法を活用しているのではないかというふうに私は思っております。
 まず初めに破産手続。新破産法に基づいて、九〇%以上が自己破産であるという報告を受けておりますけれども、債権者が破産を申し立てるケースについて、まず金融庁に、金融機関から債権を買い受けた債権者が破産申し立てをしたのは何件あるのか、伺いたいと思います。後で法務省に、金融サービサーが破産申し立てをしたケースを聞きますので、まず金融庁にお答えいただきたいと思います。
○山本国務大臣
 金融機関から債権を譲り受けた者が債権者となって行った破産申し立ての件数は、当局として把握しておりません。
 一般論として申し上げますと、金融機関におきましては、リスク管理を適切に行う観点から、信用リスクが高まっている状況にある債権を早期に認知し、早期に不良債権処理を実施することが極めて重要であるというように考えております。他方、債務者の再建可能性を的確に見きわめ、再建可能な債務者につきましては極力再生の方向で取り組むことも重要でありまして、監督指針におきましてもその旨を明記しているところでございます。
 また、金融機関が債権譲渡等を行うに当たりましては、債務者等を圧迫し、またはその私生活もしくは業務の平穏を害するような者に対して貸付債権を譲渡していないか等、原債務者の保護に十分配慮することを重要視しておりますし、また、これまでの取引関係や顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえ、顧客の理解と納得を得ることを目的とした説明を行うこと等を重視しております。監督指針でこれを示しているところでございます。
 金融庁といたしましては、このような監督指針を踏まえながら、金融機関がみずからの判断で適切に対応していくことが何より重要と考えているわけでございます。
○前田委員
 今大臣にお答えいただきましたけれども、大臣がおっしゃられたとおりです。債務者の人権に配慮して、そしてまた、債務者の周辺の顧客あるいは関係企業、これにも十分配慮した債権回収のあり方が事業の再生を生むという御答弁、私は非常にすばらしい御答弁であったと思います。
 そして、金融サービサーについて伺いたいと思います。
 同様に、債権者が破産申し立てをするケースは何件あるのか、そして、連帯保証人に対して破産申し立てをされたケースは何件あるのか、それぞれ法務省にお答えいただきたいと思います。
○奥野大臣政務官
 今御質問の件でありますが、法務省においては、サービサーが債務者に対する破産申し立てを行った件数に関する統計は把握しておりません。
 なお、サービサーについては、他の一般債権者と同様、債権者としての立場から、債務超過に陥った債務者に対し破産申し立てを行う権限が認められておりますので、サービサーが破産申し立てをしたことをもって直ちに不当と評価することはできないと考えております。
○前田委員
 不当と評価することは直ちにできないというお話ですけれども、きちんと実態をつかんでいただきたいと私は思います。どれだけの方がこれで苦しんでいるかというのをはっきりとおつかみいただきたいというふうに思っております。
 引き続いて法務省に伺いますけれども、破産申し立て事件で事業の承継が行われたのはこれまで何件あるのか。年度別、業種別あるいは破産申し立て者別にぜひ明らかにしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○奥野大臣政務官
 破産申し立て事件で事業承継が行われた事件の件数については、私どもとしては統計はなく、裁判所に伺っても統計がないということでありまして、承知をしておらないというのが実態でございます。
○前田委員
 今、現実に金融サービサーに取り立てを受けて苦しんでおられる中小企業が多い。ですから、この現状を、ぜひ法務省、おつかみいただきたいと思います。
 そして、引き続いて法務省に伺いますけれども、整理回収機構は、新破産法には切れ味があるなんということを言っておりまして、温泉、ホテルだけではなくて、他の業種でも積極的に活用する、破産法を用いて事業承継をするという方針が報道されております。
 もともと、法務省の法制審議会倒産法部会で、平成十七年度施行の破産法の草案の審議の過程で、破産手続を利用した企業再生について審議した事実があるのかどうか、そして、債権者からの破産申し立てによる企業再生についてはどうなのか。あるとすれば、その審議の議事録等を明らかにしていただきたいと思うんですけれども、法務省、いかがでしょうか。
○奥野大臣政務官
 破産手続というのは、債務者の総財産を金銭化し、これをもって債務者の総債務の弁済に充てることを目的とする清算型の手続であります。債務者であります企業そのものの再生を目的とする、会社更生法あるいは民事再生手続とは若干目的が異なるものであろうかと思います。
 もっとも、破産手続においても、当該破産者の事業を他の企業に譲渡して、その対価をもって債権者に対する弁済の原資に充てるとともに、譲渡先の企業において当該事業の存続を図って従業員の雇用の確保を図ることは旧破産法の当時から清算の手法の一つとして活用されているわけでありまして、法制審議会での検討の際にも、そのような手法が紹介されたことはございます。
 もし議事録の関連する部分につきまして御必要とあれば、提出させていただきたいと思います。
○前田委員
 ぜひ、また後日、見せていただきたいと思います。
 そして、平成十七年一月に施行されました破産法、その七十八条二項三号の事業譲渡、また、同法三十条一項二号の破産申し立ての乱用禁止の規定について、法制審議会倒産法部会ではどういう場合を想定してこうしたものを立案されたのか、伺いたいと思います。
○奥野大臣政務官
 今御指摘の破産法第七十八条第二項第三号についてでありますけれども、これは、破産管財人が営業または事業の譲渡をするには裁判所の許可を必要とするということを定めておるわけであります。これは、事業譲渡等が破産債権者の利益に重大な影響を有する換価行為でありますから、裁判所の許可に係らしめ、その当否を判断するということにしているものであります。
 事業譲渡等の例としては、具体的には、破産者が法人である場合において、黒字の事業部門を他者に譲渡して、その対価を配当することによって債務の弁済に充てる場合などが想定されているわけであります。事業を行っている破産者の財産について、事業を廃止して財産を個別に売却して換価するよりも、事業を継続したまま事業の譲り受け人を探して、継続中の事業をそのまま売却する方が有利に換価することができるような場合に適用されるわけであります。
 次に、破産法第三十条第一項第二号は、不当な目的で破産手続開始の申し立てがされたとき等には破産手続開始決定ができないということを定めたものでありますが、具体的には、債務名義を持たない債権者が破産手続開始の申し立てを仮装し、それによって債務者を威嚇して債権を取り立てる悪質な場合とか、債務者が企業内部の紛争解決を目的として申し立てをするような場合がこれに当たるようなことが考えられるわけであります。
 これらの規定というのは、旧破産法の規定または旧破産法の解釈を前提として立案されたものでありまして、新しい破産法において初めて取り入れられたわけではなくて、旧破産法をできるだけ引き継いでいこうという考え方に基づいて法制審議会倒産法部会においても議論がされたというふうに理解しております。
○前田委員
 今、新破産法に基づく債権者申し立てについてるる御質問しました。これから具体的に、先ほど申し上げました日光川治温泉柏屋ホテルのケースについて伺っていきたいと思います。
 当ケースでは、ことしの二月十五日に破産申し立てを行ったところ、宇都宮地裁の合議体は、二月の二十一日、つまり一週間たたずに破産手続開始決定を下しているわけであります。東京地裁等、破産事件を専門に担当する裁判官がいるような地方裁判所であれば早いかもしれませんけれども、宇都宮地裁のように、通常民事事件を担当する裁判官がかけ持ちで破産事件もやるようなケースでは、多忙な裁判官がスケジュール調整して合議の日程を合わせるとか、私は非常に困難であると思うんですね。
 通常の民事事案を担当する裁判官が破産事件をも担当する地裁において、債権者による破産手続開始申し立てを合議体が担当したケースについて、破産手続開始の申し立てから開始決定まで要した日数は、過去五年間ぐらいで、平均して何日ぐらいなんですか。お聞きしたいと思います。
○奥野大臣政務官
 御指摘のような場合における破産手続開始申し立てから破産手続開始決定までに要する日数については、統計を持っておりませんので承知はしておりません。
 ただ、実務上は、個別の裁判所において事案の内容に応じてできるだけ早く審理をするというのが建前ではございますので、迅速に仕事をしているというふうに理解しております。
 なお、債権者による破産申し立て事件における破産手続開始申し立てから破産手続開始決定までの平均審理時間というのは、御指摘の平成十四年から十八年までの平均をとってみますと六十二・三日であるということでございます。
○前田委員
 この栃木県の川治温泉の破産の申し立てから開始決定まで、わずか六日間です。今、平均は六十二・三日とおっしゃいましたので、その十分の一です。どうしてこんなに早くいったのか、私は不思議でなりません。
 そして、ここからが、皆さん、先ほど申し上げた二月の二十一日、この破産の手続開始決定がおりた日に、RCCの宇都宮副支店長、調査役が、柏屋さんの方からすると映画の一シーンのように入り込んでいって、ざあっと帳場を押さえて、そして、破産決定が開始されたということで押し入ってきたということであります。
 そのうち、RCC職員が一泊していくという話になりまして、皆さん、しゃぶしゃぶフルコース一万六千九百五十円。何と、そこを出ていくときには、いや、私は部内関係者だから一万円ということで、六人の皆さん、フルコースを食べて温泉につかって、そして、まけとけと言う。
 これはたかり行為じゃありませんか。私は、こうしたRCC職員は厳格に処罰されるべきだと思います。預金保険機構に十分にこうした監督をすべきである。なぜならば、預金保険機構が一〇〇%出資するのがRCCでありますので、私はこうした指導を厳格にしていただきたい。RCC職員がいかにたるんできているか。こうしたことからも、私は、もうRCCは解体すべきであるというふうに思っております。
 そして、先ほど冒頭に申し上げた、この日光の川治温泉柏屋ホテルのケースで、何と、司法権の独立が侵された、これから憲法の教科書に載るのではないかというぐらいの非常な事態が起きました。それについてお話ししたいと思います。これは初めて委員会で取り上げさせていただきますので、財金の皆さんも十分にお聞きいただけたらと思います。
 先ほど言いました、本年二月二十一日に開催された宇都宮地裁における審尋手続において、実は、宇都宮地裁の園尾所長が、立会した上に、債務者片山則夫氏に対して、約二十分超にわたる長時間、同氏が破産者であることを前提とした尋問を行っております。そして、宇都宮地方裁判所の説明によれば、所長は合議体の構成員ではなくて、書記官の補助者、補助として事実上立会したという答弁を受けております。
 所長が書記官の補助者で入る、そんなことがありますか。そして、実はその宇都宮地裁の所長園尾さんは、ミスター破産法と言われている、この「破産法」を書いた人なんですよ。そんな人が裁判に入って尋問をしたら、当然、裁判官は影響を受けるわけであります。
 司法権独立、よく大学の教科書にありますけれども、司法権独立というのは二つの意味があるんだと。一つは立法権と行政権からの独立、そして司法権独立の核心は、裁判官が裁判をするに当たって独立して職権を行使することで裁判官の職権の独立を確保しているんだ、この裁判官の職権の独立こそ司法権の独立の核心だということであります。
 皆さん、ちょっと思い出していただきたいんですけれども、一九六九年、長沼ナイキ訴訟において、当時の平賀健太札幌地裁所長が、事件の担当の福島重雄裁判長に対して、判断の一助という前提を置いて書簡を送りました。俗に言う平賀書簡というものですけれども、そうしたらどうなったか。裁判官は、裁判官が自身の良心に基づいて判決を下すんです。それに対して、外から書簡を送っただけでこれが大事件になって、今、憲法の教科書に載るような平賀書簡事件というふうに発展したわけであります。
 この宇都宮地裁の尋問のときに、何と、ミスター破産法の所長がそこに同席したということは、裁判官の独立を侵害したというふうに私は思っております。憲法七十六条三項は、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」というふうに定めており、裁判官の職権の独立を言っているわけであります。
 私は、この柏屋さんのケースで、こうしたことが本当に許されていいのかというふうに思っておりますけれども、法務省はいかがお考えでしょうか。
○奥野大臣政務官
 地方裁判所における裁判一般について申し上げますと、裁判所法の規定により、民事事件については一人の裁判官が単独で事件を取り扱うことが原則とされているのは、今御指摘のとおりであります。ただ、合議体で審理及び裁判をする旨の決定を合議体でした事件など、法律で定めがある一定の事件について、三人の裁判官の合議体により審理が行われることもできるわけであります。そして、合議体で審理するか否かについては、その決定をする合議体の判断によるところとなるわけであります。
 委員の御指摘の点でございますけれども、地方裁判所長が民事裁判における合議体の構成員となった件についてはどれだけあるかということについては、裁判所でも把握しておりませんし、私どもとしても承知していないということであります。
○前田委員
 私は、書記官の補助としてミスター破産法の宇都宮地裁の所長が加わっていること自体、合議体の結果の形成に重大な影響を及ぼす。これは司法権の独立の侵害であるというふうに思っております。最近、裁判がおかしいという御指摘が非常に世間でも強くなっておりますけれども、その最たる例ではないでしょうか。私は、こうしたことが実際にRCC絡みでこの宇都宮地裁で行われているということに対して、非常に問題点を感じます。
 そしてまた、さらに法務省に伺いますけれども、破産法三十条一項二号は、不当な目的での破産手続開始の申し立てを禁じております。日光の川治温泉の柏屋ホテルを担当した裁判官は、この不当な目的の有無について、自己の良心に従って慎重に吟味すべき事案であったというふうに私は考えております。
 こうした事案の審理において、新破産法制定に携わった園尾所長は、当時、破産法、国会の答弁にも行政局長として来られていました。その園尾所長が加わって、いまだ破産手続開始決定が下されていないにもかかわらず、同氏が破産者であることを前提とした尋問をすることで、合議体を構成する裁判官の心証に影響を与えなかったことはないと思いますが、この点、法務省はいかがお考えでしょうか。
○菊池政府参考人
 お尋ねの点は、具体的な事件について、裁判所の取り扱いや審理に関することでございますので、政府の立場からコメントすることはお許しいただきたいと思います。
 一般論として申し上げますと、例えば債権者から破産の申し立てがありますと、裁判所としては、まず、破産手続開始決定の要件があるかどうかということを判断するわけでございます。その要件は、破産法によりますと、債務者が支払い不能であるか、あるいは、法人の債務者である場合には、支払い不能のほかに債務超過ということも要件になっております。
 裁判所としては、申立人が提出した申し立て書や添付されている疎明資料から判断するわけでございますが、その際に、一番利害関係のある債務者からも事情をお聞きするということもあるようでございます。これは法律では審尋と呼ばれておりますけれども、あくまで一般論でございますが、破産の申し立てがあった場合には、裁判所としては、相手方である当事者の言い分を聞くという手続をとっていることもあるというふうに聞いております。
○前田委員
 いや、そういう一般論の立て方は、それはそれでいいのかもしれませんけれども、とにかく、私は、司法権の独立が侵された事案であると思っております。個別の事案は答えられないということですけれども、個別の事案こそ大事であると思っております。
 そして、もう一回RCCの方に話題を戻しますけれども、先ほど、しゃぶしゃぶフルコース一万六千九百五十円、これを一万円に値切っていったRCC職員たち、彼らは、破産管財人補助者、そういうタイトルを持って事業譲渡に関する管財業務に関与していると言われております。私は、破産管財人補助者というのは極めて不明瞭な概念であって、これははっきり申し上げて、RCCが申立人である以上、RCC職員を破産法七十七条の破産管財人代理に選任して管財業務に関与させることはできないことから、代理という言葉を使わずに、新たな破産管財人補助者なる肩書をつくって、与えたと思うんですね。
 そもそも、破産管財手続において、裁判所の許可のもと、破産管財人が破産管財人補助者なる者を選任するということはあり得るんですか、法務省。
○奥野大臣政務官
 破産管財人が、破産管財業務、大変膨大な作業でありますから、それを遂行するに当たっては事務補助者を選任する場合があるということは、私どもとしても承知しております。
 破産管財人がこれらの事務補助者を選任すること自体については裁判所の許可を必要とするものではありませんが、事務補助者を雇用する場合であって一定額以上の報酬を支払うようなケース、そういう場合には裁判所の許可が必要になるわけであります。実務上、雇用に当たっては事前に裁判所の許可を求めることが多いものと承知しておるわけであります。
○前田委員
 裁判所の許可を得ないということですけれども、では、破産管財人補助者、これがRCCの職員六名であった。彼らがそこでしゃぶしゃぶフルコースを食べて一万円に値切っていったということは、私は、これはたかり行為であって、ほかの何物でもないというふうに思っております。この問題がここに残るわけであります。
 そして、先ほどの三点目、RCCのこの件に関しての大きな問題点として、実際に破産申し立てをRCCがしました、そして事業継承者として、事業譲渡先として選んだのは、何と、驚くなかれ、スターツアメニティー株式会社。本年五月九日、宇都宮地方裁判所は、このスターツアメニティーに対する事業譲渡に関する基本合意書の締結を許可したということでありますけれども、私どもは調べさせていただきました。
 このスターツアメニティー、同社は、破産手続開始決定の申立人であるRCC、この代表取締役奥野善彦氏が所長を務める奥野総合法律事務所を顧問法律事務所としているスターツ株式会社の系列企業であります。つまり、RCCが破産申し立てをして、そして譲渡先に、RCCの代表取締役社長である奥野氏の系列企業に譲渡を決定した。
 こんな、自分で申し立てしておいて、自分の関係のところがちゃんともうかるように仕組んだというのは、これは犯罪行為じゃありませんか。私は、これは絶対に問題であるというふうに思っております。
 一般に、債権者が債務者の事業を特定の者に譲渡しようと企てて破産手続開始を申し立てた場合でも、そのことだけでも、破産法の三十条一項二号の不当な目的による申し立てにほかならぬのではないでしょうか。これについて、法務省はいかがお考えでしょうか。
○奥野大臣政務官
 私と同姓の社長でありますが、全く関係ございませんから。
 破産法三十条一項二号の不当な目的による申し立てに当たるかどうかは、個別の事案における諸事情を考慮して、裁判所によって判断されるものであります。
 御指摘のような、債務者の事業を特定の者に譲渡しようと企て破産手続開始を申し立てた場合が同号に定める不当な目的による申し立てに該当するか否かについても、個別の事案でございますので、一概にお答えすることはできないものと考えられます。
○前田委員
 先ほど来申し上げております、RCCが申し立てて、RCCの代表取締役に関係する系列企業に事業譲渡をする、その決定をするということは、自分のところに自分で水を引いていることにほかなりません。ですから、こうしたことは厳格に見ていただかなきゃいけない。
 RCCのこの柏屋さんのケースにおける問題点、一つ目がRCC職員によるたかり行為、二番目が司法権の独立を侵害した、三番目が今の譲渡先、RCCが申し立てを行っておいて関係の系列企業に譲渡をする。この三点の問題点からして、RCCはもう時代の任を終えている、ここは解体すべきであるというふうに私は思っております。
 時間が大分迫ってきましたので、これから以降、バブルの末期から、銀行が貸し手の責任を追及されるべき事案、そしてまた、RCCの過酷な取り立てが本当に正しいかどうかという事案について質問させていただきたいと思います。
 まず、熊谷にあります坂石米穀のケースです。私は以前、大臣に予算の分科会で質問させていただきました。法務省は、職権で代位登記手続をすることはあり得るというふうに言っておりますけれども、勝手にみずほ銀行は相続の代位登記手続をしました。私は、これは非常に問題であるというふうに思っております。
 確かに、坂石さんらの本籍地の熊谷市の戸籍が戦災で焼失したために、相続人がほかにいないことの証明をもってこれにかえるというふうになっているために、坂石氏は、それではしようがないということで、まずその場は、腑に落ちないけれどもということでありました。しかし、この事案が発覚しまして、国会等で質問させていただいておりますと、急遽みずほ銀行は、責任を問われることになったために、坂石さんに無断で、RCCに坂石米穀の債権を売却しました。このようなみずほ銀行のあり方に私は問題があるというふうに思っております。
 やはり債権譲渡するに当たってはきちんと説明すべきものであるというふうに思っておりますけれども、その説明義務を果たしていない。こうした債権譲渡のあり方は正しいのかどうか、金融庁に伺いたいと思います。
○山本国務大臣
 個別金融機関の個別の取引につきましてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。
 一般論として申し上げれば、銀行が債権者代位による相続登記や債権譲渡を行おうとする場合におきましては、顧客に対してみずからの営業上の判断を的確に説明する体制が整備されていることが必要であると考えております。
 こうした観点から、主要行等向けの監督指針等におきましては、金融機関による取引関係の見直し等の場合における説明体制の検証に当たっての着眼点として、これまでの取引関係や顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえ、顧客の理解と納得を得ることを目的とした説明体制が整備されているか等を示しているところでございます。
 金融庁といたしましては、このような監督指針も踏まえながら、金融機関が顧客に対する説明を十分に尽くすことが何より重要であろうというように思っております。
○前田委員
 個別の案件があって、それが重なって全体があるわけでありますので、個別の案件を大事にしていただきたい。そして、今大臣がおっしゃったように、やはりきちんとした説明責任を果たさなきゃいかぬ。それが、私は今みずほ銀行に問われるべきものであるというふうに思っております。
 そして、これまた前回、予算の分科会でやらせていただいたんですけれども、金融機関が債権を譲渡するに当たって、見境のない債権譲渡がなされて、債務者が債権取り立ての被害に遭って苦しんでいるケースが非常に増加しております。
 前回私が質問しました、三井住友銀行が債権譲渡したケースでは、債権譲渡先企業の本社がタックスヘイブンのケイマン諸島にある。その会社が、今回さらに、債務者の社長の年老いたお母さんが長年暮らしている自宅まで競売にかけてきた。これは非常に、脱税的行為もあり、そして債権回収のあり方も問われるべきことではないかというふうに思っております。
 金融庁はどういう指導をされているのか、御説明いただきたいと思います。
○山本国務大臣
 個別金融機関の個別取引につきましてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。
 一般論として申し上げれば、債権譲渡契約は民間当事者間の契約の問題でございます。基本的には、経済合理性に基づく的確な経営判断にゆだねられるものと考えております。
 ただし、金融機関が債権譲渡等を行うに当たりましては、債務者等を圧迫し、またはその私生活もしくは業務の平穏を害するような者に対して貸付債権を譲渡していないかなど、原債務者の保護に十分配慮することが大事でございます。これまでの取引関係や顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえ、顧客の理解と納得を得ることを目的とした説明を行うことが大切だというように思っている次第でございます。
○前田委員
 では、タックスヘイブンに本社があるところに債権譲渡をしていった、これは国税として、きょう国税庁からもお越しいただいていると思いますので、どういうふうに見られるでしょうか。
 こんな債権譲渡のあり方はいいんでしょうか。さんざん公的資金の注入、税金で助けてもらっていた銀行が、今度債権譲渡したら、脱税的行為ができるタックスヘイブンのケイマン諸島に本社があるようなところに譲渡していく。譲渡は自由かもしれないけれども、これは問題じゃありませんか。私は、国税庁として、この会社に対して厳格に対応すべきであるというふうに思いますけれども、国税庁、いかがでしょうか。
 今、見えないということですので、私は意見として申し上げていきたいというふうに思っております。
 そして、今度はまた悲惨なケースがあります。近畿大阪銀行、大阪の井上典子さんのケースでありますけれども、この井上さんは、不動産に競売をかけられただけではなくて、井上さんの年金専用口座、これにまで入って債権回収を図っているということでありますけれども、私は、債権者が、債務者のこうした本当の最後のよりどころまで入って回収していくというあり方について、非常に問題ではないかというふうに思っております。
 まず、金融庁、債権回収のために、債務者らに対して、給与の差し押さえ、仮押さえも含みますけれども、あるいは動産の差し押さえ、売掛金の差し押さえ、これも仮押さえを含みます、行った件数と回収額について、年度ごとに説明していただけますか。そのうち、連帯保証人に対するものがあれば、それについても件数と回収額をそれぞれお答えいただきたいと思いますけれども、よろしくお願いします。
○佐藤政府参考人
 御指摘いただきました差し押さえの件数及び既回収額につきましては、金融庁としては把握いたしておりません。
 一般論として申し上げますと、金融機関が取引関係の見直し等を行う場合には、顧客に対してみずからの営業上の判断を的確に説明する体制が整備されているということが必要であると思います。
 こうした観点から、私どもの監督指針におきまして、金融機関の延滞債権の回収に係る説明対象の検証に当たっての着眼点といたしまして、これまでの取引関係や顧客の知識、経験及び財産の状況に応じ、かつ法令にのっとり、一連の各種手続を段階的かつ適切に執行する体制が整備されているか、こういった点を示しているところであります。
 私どもといたしましては、このような監督指針も踏まえながら、金融機関が債権回収に当たって顧客に対する説明を十分に尽くすということが何より大事であるというふうに考えております。
○前田委員
 しっかりと実態をつかんでいただきたい、実態をつかんで政策として生かしていただきたい、これを申し上げておきます。
 そして、最後の質問になりますけれども、バブルの末期、相続税対策の名目で、提案型融資を各銀行がしました。特にひどかった三菱とみずほ、旧第一勧銀のケースについて、私は、せんだって金融庁に権限発動を求める申し立てを行いましたけれども、調査されていると思います。
 例えばみずほ銀行、旧第一勧銀のケースですけれども、プラットホームで五百万円をぱっと渡すということがあったんですよ。そうした融資をしておきながら、取り立ての方は非常に、私は銀行の優越的地位の濫用になると思いますけれども、これは被相続人が九十歳でまだ御存命です、その九十歳の方が住んでいる自宅を競売にかけて、抗議すると、銀行は何と言ったか。こちらは競売する権利があるにもかかわらず抑えてきた、それを逆に権利侵害などというのはどういうことだと一喝したということですけれども、これは、融資も身勝手、回収も身勝手。
 金融庁は、この銀行の提案型融資のケースについて、僕は銀行が競売にかけていくというのはやめさせるべきだと思っておりますけれども、いかがお考えでしょうか。
○山本国務大臣
 個別金融機関の個別取引につきましてはコメントを差し控えさせていただきたいと思っております。
 一般論として申し上げれば、担保追加設定等の取引関係の見直し、競売等の担保処分を行う場合、顧客に対してみずからの営業上の判断を的確に説明する体制や、優越的な地位の濫用と誤認されかねない説明を防止する体制が整備されていることが重要であろうというように考えております。
 このような観点から、主要行等向けの監督指針等におきましては、金融機関が取引関係の見直し等を行う場合の説明体制の検証に当たっての着眼点として、これまでの取引関係や顧客の知識、経験及び財産の状況を踏まえ、顧客の理解と納得を得ることを目的とした説明体制が整備されているか等を示すとともに、不公正取引との誤認防止の観点からの着眼点として、優越的地位の濫用と誤認されないよう、客観的、合理的理由について顧客の理解と納得を得ることを目的とした説明体制が整備されているか等を示しているところでございます。
 金融庁といたしましては、このような監督指針も踏まえながら、金融機関が顧客に対する説明を十分に尽くすことが重要であると考えるところでございます。
○前田委員
 金融大臣におかれましては、ぜひ、この提案型融資、貸し手の責任、しっかりと見ていただきたいと思います。
 そして、RCCの非情な債権回収が続いておりますので、預金保険機構に関しましてはぜひ指導を徹底していただきたい、それをお願いしまして、時間ですので、私の質問を終えさせていただきます。
 ありがとうございました。