- ○前田委員
- 民主党の前田雄吉です。
本年一月九日に防衛庁が防衛省となったわけでありますけれども、昨年の我々の国会審議を通して、我が民主党も賛成しました。その理由として、やはり、よく大臣もおっしゃっておられましたけれども、自衛隊管理官庁から政策官庁への脱皮ということがあると思いますが、それをぜひ実現していただきたいと思っております。
最近よく考えますけれども、過去に、よく有事の話をすると、それは大変な議論になってしまって、もう手がつかなくなるような事態に陥っておったわけです。最近のニュースの中で、私は、なるほど、非常にいいことを言われたなというのがありまして、三月十二日のロサンゼルス・タイムズ、米国がイラク撤退計画策定に着手していると報じられたものであります。そこで、報道官の伝えるところとして、ゲーツ国防長官が、起こり得る将来のさまざまな可能性を検討しないのは国家の怠慢であるということを述べておられます。
国民の生命財産を守る、これは国家の責務であって、そのための防衛政策を議論する、これは我が安全保障委員会の使命であるというふうに思っております。
そこで、これは防衛省になって初めて提出されました、記念すべき第一号の法案である駐留軍の再編特措法を審議するに当たりまして、この法案が我が国防政策にどのようにかかわるのか、また、抑止力の維持は本当に担保されているのか、あるいは地元の負担は本当に軽減されるのかということを念頭に置きながら質問させていただきたいと思っております。
まず初めに、我が国、在日米軍の施設も区域も七五%が集中する沖縄にとりまして、この地元負担の軽減という言葉は、沖縄の負担軽減というイメージが最初に浮かんでくるんですけれども、確かに過重な負担を強いられている沖縄の皆さんにとって、国を挙げて受けとめる、こういう発想は必要だと考えます。
しかし、私は、この交付金制度を見ますと、なかなかそうではないんじゃないかという気がしてしようがありません。財政が逼迫している市町村にとって、厳しい自治体にとって、ここをねらい撃ちにしては、いわば兵糧攻めじゃないかというふうに思います。苦渋な選択をされる自治体に対して、交付金を出してやるからという発想はいかがなものかと私は思いますけれども、大臣の所見を伺いたいと思います。
- ○久間国務大臣
- これは、出してやると言うと、何か知らぬ、非常におこがましいといいますか高圧的に見えるわけです。先ほどの岩国の話じゃございませんが、SACOの場合はその都度予算措置でやっておったわけですね。そうしますと、そのときそのときで予算を計上しない場合だって出てくるわけでありまして、受け入れてくれたのにそういうことがあり得るわけですね。
そういうことはしませんよ、もう受け入れてもらったらきちんと出しますよというのを法律で担保するような格好になるわけでありまして、その市町村にとってみれば、非常に安心して、ここまでいったらこれぐらいきちんと出してもらえるんだということで、その年度で、もうことしは予算は計上しませんでしたというようなことにはならないわけですから。
だから、そういう点で、むしろ、負担がふえる市町村にとってははっきりそういうふうに書いてもらった方がいい。言うなれば、原子力発電所を引き受けたときに、ああいう立法があって交付金が出ている。そういうようなこともあるわけだから、これはやはり国として、向こう十年なら十年間、そういう形できちんと出す、そういう債務といいますか、責務を明示した方がいいんじゃないかという考え方に立ちますと、私は、その方がかえって親切なんじゃないかなというふうに思っているわけであります。
- ○前田委員
- では、この交付金の出し方ですけれども、四段階に分けて出されるというふうに私は伺っております。政府案受け入れがまず第一段階、第二段階がこの環境影響評価の着手、第三段階が施設の着工、第四段階がこの再編の実施と、段階を追って、ここまでやったら出してやる、ここまでやったら出してやるという、市町村に対して、何か、それだったらあめだ、でも、聞かなかったらむちじゃないかというふうに私は思うんですけれども、非常に恐ろしい話じゃないかなというふうに思います。
具体的に、これから、この法案の中身について議論していきたいと思います。
今回のこの法案において、米軍再編に伴い負担が増加する市町村を再編関連特定市町村に指定して、当該市町村に再編交付金を交付するなどの措置を定めるが、再編関連特定市町村に指定される区域の範囲や再編交付金の交付額の算定方法など、多くの事項が政令の事項とされている。つまり、これから政令で定めるという話ですね。これらの点について、笹木議員が質問主意書で、例えば再編関連特定市町村に指定されることが想定される市町村について質問しても、答弁としては、この法律の規定を言いかえたものしか返ってきていないわけであります。
政府として、確かに、法技術的な問題があったり、関係市町村に先入観や予断を与えるという懸念があるかもしれませんけれども、私は、このまま多くの点が政令制定まで明らかにされない、国会がそういったら政府に対して白紙委任状を与えるんじゃないかというふうに思います。非常に懸念されます。
そこでこれは、再編交付金の上限額、あるいは進捗状況に応じた交付の方法とか、再編関連特定市町村に指定される区域の範囲をどのような基準で定めるか、政令で定めることとなっている事項についてどのような考え方で政令を制定されるのかということについて、この委員会の審議を通じて丁寧に御説明いただきたいと私は思いますけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。
- ○久間国務大臣
- 今の政令の話については事務方の方からどういう基準でやるか説明をさせますけれども、その前に、やはり、段階を追ってというのは、これは電源の立法に基づくものもそういうふうにやっているわけですよ。あの場合は、むしろ、そういうことを具体的に書いていなくて事実上やっているわけですから、うちの場合は、むしろ、こういうような基準でと言うだけまだ法律に前進しているような気持ちでございまして、電源立法の場合は全くそれは任されている、そういうことから、あれを参考にしたのは事実でございますので、だから、他に例がないというわけではございません。
これは、立法技術的にもそういう別表をつくってやるということがなかなかしにくいし、どういう事業が出てくるか、どういう関係がどこまで入るかというのは、そのときの米軍再編の具体的な事業の内容が進んでみて、そして調べてみないとわかりませんので、そういうような基準等を一応決めておいて、それに基づいて政令で定める、そういう方式をとったわけであります。
〔委員長退席、寺田(稔)委員長代理着席〕
- ○前田委員
- 大臣、言われる側からすればやはり、段階を追って、こういうふうな段階にこれをのんだら出すぞ、これをのんだら出すぞというふうに感じますので、私は、それは親切というよりも、反対に、言われる側から見ると、ちゃんと言うこと聞けよということでしかないというふうに思いますけれども。まあ、それは見解の違いでしょうから、先へ進みます。
とにかく、政令を待つというのが多過ぎますので、私は、では、具体的にどういう指針、また基準をお持ちなのかということ、例えば再編交付金の上限額、あるいは進捗状況に応じた交付の方法、これを具体的に御説明いただきたいと思います。事務方で結構です。
- ○大古政府参考人
- お答えいたします。
まず、交付金の交付額の算定でございますけれども、これにつきましては、負担の程度を点数化して、予算の範囲内で交付するように措置したいと思っております。
再編に伴って住民生活に及ぼす影響の増加の程度ということでございますが、これについては、防衛施設面積の変動ですとか、施設整備の内容ですとか、それから航空機等装備の更新、配備の状況、それから人員の変動、それから、訓練移転の場合ですとどういう訓練移転の内容かというようなことにつきまして、点数化して、交付金の水準を決めていきたい、こういうふうに思っているところでございます。
- ○前田委員
- 算定は、いろいろな変動の要素があるわけで、それをもとに点数化してということですけれども、それだったら、きちんとそれを公表したらどうですか、算定式を。いかがですか。
- ○大古政府参考人
- この種の基準につきましては、やはり、法案成立後、政令を制定する段階で具体的に検討いたしますので、今の審議の際には、我々としてはその考え方についてはできるだけ御説明したいと思いますけれども、具体的に、今申し述べた、例えば点数について何点だということについては、まだ検討中なので、まだ決まっていないということで御理解いただきたいと思います。
- ○前田委員
- 今、委員の皆さん聞いたとおりですよ。そんないいかげんな話でこんな法案を出してきてどうするんですか。これはやはり、せっかく防衛省になって初めての法案ですよ、きちんと出されたらどうですか。もう一度。
- ○大古政府参考人
- 基本的に先ほどの繰り返しになりますけれども、御審議の過程ではいろいろ我々としても考え方を説明していきたいと思いますし、いろいろ国会の御論議を踏まえて、それをも参考にした上で政令をつくるときについては考えていきたいと思っております。
そういう意味で、先ほど点数化という話を申しましたけれども、ただ、現時点では確定しているわけではありませんし、これ以上具体的な内容についてはまだ御説明できないということで御理解を賜りたいと思います。
- ○前田委員
- 内容を明らかにして審議をするのがこの場所でしょう。どうしてこれが出せないんですか。これは、国民の皆さんにかわって私たちは聞いているわけですよ。納税者に対してしっかり説明してください。もう一回。
- ○大古政府参考人
- 繰り返しになって恐縮でございますけれども、交付金の水準につきましては、先ほど言ったような要素を点数化して、政令をつくる際にいろいろ基準を明確にしていきたいというふうに考えております。再三の御指摘でございますけれども、現段階では確定していないということで御理解を賜りたいと思います。
- ○前田委員
- いいかげんな話じゃないですか。ちゃんと確定してからここへ法案の形として出したらどうですか。内容がわからなかったら、私たち審議できませんよ、そんなものは。何時間使おうが、そんな、確定していませんとかなんとか、いや、まだ今のところは出せませんとか、何ですか、それは。これは委員会を侮辱していますよ。やはり、納税者にかわってここで審議をさせていただいているんですから、これは防衛省、しっかりその辺をわきまえていただかなきゃいかぬですね。
さらにまた聞きますけれども、では、再編関連特定市町村に指定される区域の範囲をどのような基準で決めるのか、事務方で結構ですから、具体的に説明してください。
- ○大古政府参考人
- 御質問につきましては、法案の第五条一項に定める政令で定める範囲内の市町村ということだと思いますが、これにつきましては、再編関連特定防衛施設が所在する市町村のほか、再編の具体的な態様に応じて、所在市町村に隣接する市町村とすることになると思っております。
- ○前田委員
- では、政令の定める市町村というんでしたら、その政令がどういうものになるのか言ってください。もう一度。
- ○大古政府参考人
- その点につきましては、再編の実施が周辺に及ぼす影響の程度等を考慮いたしまして、当該市町村において住民生活の利便性向上に寄与する事業を行うことが再編の円滑かつ確実な実施に資するため必要であるといったような点に基づきまして、隣接市町村について指定することになると考えております。
- ○前田委員
- 委員の皆さんで、今の話を聞いて、いや、ここですよと具体的に地域が浮かぶ方がありますか。そういう言葉のマジックみたいなもので、こんないいかげんなことをやってほしくない。何度も言いますけれども、防衛省になって初めての法案ですよ。きちんと決めてから出してくださいよ。
では、大臣、答弁してください。
- ○久間国務大臣
- いや、そうじゃなくて、再編関連防衛施設として、今度の再編事業の中で防衛施設がそこにできるかどうか、そして、できる市町村は、政令ではっきり入るわけですね。それとの隣接する市町村で、それがどこまで関連するかというのは、これはやはり、ある程度そこができてみないとわからない点もあります。かといって、隣接すればどこでも入るというんじゃいかぬわけです。やはりそこで、騒音関係で、隣接して、一体として、そこは気の毒じゃないかというような、例えば岩国なら岩国の、市じゃないけれども市から立ち上がっていくところの隣町村はいいじゃないかとか、やはりそこは、政令にゆだねたからといって、そう恣意的にやるわけじゃございません。まず、再編関連防衛施設がある市町村が入る、しかし、それに関連する市町村も含みますよと、その辺は政令で定めさせていただきたい、そういう考えでございますから、そこはぜひ御理解していただきたいと思うわけです。
- ○前田委員
- 今大臣は、例えば騒音とかそういうことを具体的に言っていただきました。そういう話をきちんと事務方から私はしてほしいんですよ。どうですか。もう一回。
- ○大古政府参考人
- その点につきましては、例えば飛行場であれば騒音が及ぶ範囲、その点について対象となる市町村を指定するということになるかと思います。
それから、例えば人員の増があるような場合については、米軍の移動等に伴って道路の交通量がどれだけふえるかとか、そういうことが主要になるかなと思っております。
- ○前田委員
- 初めからそうした説明をしてくださいよ、読み上げるだけじゃなくて。これは、ここの委員会をばかにしていますよ。何ですか、一体。これからの答弁の中できちんと答えてくださいね。いいですか。
それでは、さらに進みます。
再編交付金、この再編関連特別事業を実施するために交付されるものであるわけでありますけれども、この再編関連特別事業は、「公共用の施設の整備その他の住民の生活の利便性の向上及び産業の振興に寄与する事業であって、政令で定めるもの」とされ、生活の利便性ばかりでなく、産業の振興も視野に入れたものであるということだというふうに読ませていただきました。また、在日米軍再編に当たって特に負担が増大する地域については特に配慮をする必要があることを考慮し、本法案の中でそれらの地域を再編関連振興特別地域に指定するということですが、この再編関連振興特別地域の整備計画においても、生活環境の整備に関する事項のみならず、基幹的な交通施設の整備に関する事項や産業の振興に関する事項についても定めるということでここに載っておるわけですね。
私は、防衛省の予算というのは、本当に純粋に我が国の安全保障にかかわる部分に使うべきものであって、産業振興まで担当するようなものじゃないというふうに思うんですね。確かに、関連するといえばそうですけれども、やはり財政法上、財政法は、審議で通った各省庁が持ったもの、それについてきちんと出すということなものですから、私は、産業振興まで手を伸ばすことは、これは不適当ではないかというふうに思うんですけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。
- ○久間国務大臣
- この再編関連特別振興事業といいますか、具体的に言えば、例えばその地域で、これは地域のために道路網をこの際一緒になって整備する必要があるというふうに、そういう認定をして県知事が上げてきたときには、それはこの再編を進めるためにはやはり非常にいいと判断した場合には、各行政機関の長に加わって、各閣僚で協議を開いて、これは対象事業にしようということで決めるわけであります。だから、そういうときには補助率のアップもしますよと。そして、それは、防衛省がするのではなくて、それぞれの事業の所管官庁がそれを担当しますよ、そのときに補助率のアップはしますよというような、そういうことでございますから、防衛省が直接やる事業とは考えておりませんので、そういうことだったら、やはり米軍再編と合わせてその地域の振興を図っていくということは、私は一緒に考えていいんじゃないかなと思うわけであります。
- ○前田委員
- では、政府は、この再編関連振興特別地域として、普天間飛行場代替施設周辺地域と岩国飛行場周辺地域を想定しているという一部報道がありましたけれども、この真意を、事務方で結構ですから、伺いたいと思います。
- ○大古政府参考人
- お答えいたします。
各種報道があることは承知しておりますけれども、お尋ねの地域の指定につきましては、法律が成立した後、再編関連特定周辺市町村に指定された後でございますけれども、都道府県知事からの申し出を受けまして、駐留軍等再編関連振興会議の議に基づき指定することになりますので、現段階で具体的な地域として決まったものがあるというわけではありません。ないということで御理解いただきたいと思います。
- ○前田委員
- 先ほど来の、本当に、産業振興まで、まだ私はちょっと納得できぬものですから、まあ、確かに大臣のお考えはお考えでいいわけですけれども。
私は、既存の沖縄振興策とこの法律案に基づく振興策、この整合性について伺いたいと思います。
既存の振興策については、本年度、一千億円、沖縄北部の振興策がとられて、予算に入っているわけでありますけれども、沖縄担当大臣が所轄している既存の沖縄振興策とこの法案に基づく振興策との整合性について、大臣に御説明いただけたらと思います。
- ○久間国務大臣
- 沖縄の振興につきましては、別途、沖縄振興という目的からつくられた制度でございますから、それはそれで、これとは別にずっと走っているわけでございますし、特に沖縄振興でやっております公共事業等については、ここでやる補助率よりも高いわけでありますので、多分そちらの方が採択されると思いますから、県からまず上げてこないと思いますね。だから、県から、いや、既存のものじゃないものでこちらの方でやるような事業があります場合にはこちらで上げてくるかもしれませんけれども、それは、上げてきたのを見た上で、それをまた協議会にかけまして、どうするか。そのときには、沖縄担当大臣もありますから、そしてまた沖縄振興法との整合性といいますか、あるいはまたそういう調整もするようなことを書かれてありますので、それはちゃんと念頭に置きながら整理していきますので、競合して非常に困るということにはならないと思います。
- ○前田委員
- それでは先に進みますけれども、グアム移転経費及びその分担割合について伺いたいと思います。
日米で合意しましたグアム移転経費及びその分担割合については、次のようにされております。日本側の金額は総額に占める割合でコミットしたのではなく、施設やインフラの所要に基づき経費を負担するもの、経費については、今後さらに事務的に精査される、このため、財政支出、真水は上限としている、こういうふうにされているわけでありますけれども、実際の負担額及び割合、これは明らかになっていません。
先ほど来、笹木議員の質問もありましたけれども、やはり、この辺について、何度もお聞きしますけれども、大臣にもう一度御説明いただけたらと思います。
- ○久間国務大臣
- これは正直言いまして、こういうようなやり方でやりますよという政府の姿勢が、今度の法律で通りますと、今組んでおります十九年度の予算で調査費も入っておりますから、そういう調査をかけて、いろいろな、現地にどういうようなものを建てるのか、そのときに物価がどうなのか、どういうような形になるのか、我が方もいろいろ言いますけれども、アメリカはアメリカで出してくると思います。
そういうものを両方から積み合わせて、実施計画といいますか、実施設計を組んで、それで煮詰まっていくわけでありますので、我々としては、またアメリカもそうですけれども、さはさりながら、上限がどれぐらいになるかというものを決めておかないと、特にアメリカの場合は、日本がどれぐらいまで出すのかという、それを決めておかないと、向こうの議会対策もあって、日本としては真水では二十八億ドルだというようなことを一応両者の合意で決めたわけであります。そして、アメリカの方もそれに応じてこれだけだ、そういう形で、合計で百二億ドルというような、トータルですけれども。
これも言うなれば概算でありまして、先般、予算委員会のときも、参議院の方で聞かれたこともございますが、ちょっと高過ぎるんじゃないか、アメリカで実際やっている住宅はこんなものじゃないぞ、もっと安いぞ、四分の一以下じゃないかというようなことも指摘もされて、それもホームページにも載っておるぞというような話をされましたので、私たちとしては、それも参考にしながら、これから先、アメリカに対しても、実際こんなにかからないかもしれないじゃないかということで詰めていこうと思っております。
これについては、金額が、こういう数字がこれから煮詰まっていくというふうに理解していただいて、そして、煮詰まりましたらまたそれを予算で決めていくわけでございますので、法案じゃなくて、今度は予算委員会等でも毎年毎年これぐらいを出すというようなことを具体的に決めていくわけでございますから、事業実施までには、スキームとして、大体の金額の、積算単価もこのぐらいだということについては公にすることができるかもしれませんが、現段階ではまだ調査すらしていないわけでございますので、その数字についてはとにかくカウントできないというのが正直なところであります。
- ○前田委員
- 今大臣が言われたとおり、まだ安く施設ができるじゃないかとか、可能な限りその額を、経費を節約するのは当たり前の話です。
それと同時に、やはり本法案の審議ということになりますと、大前提として、実際に我が国が負担する額がどのぐらいであるかということを早急に明らかにするべきではないかというふうに私は思います。
今まで委員会審議を通して私がその議論から受けた心証は、やはり順序が逆じゃないか。政令で定める、今は何も決まっていません、今はまだ調査もしていません、これから金額を決めますと。反対じゃありませんか。これこれこういう政令をつくりました、その上でこういう法案の案文ができました、だから御審議してください、そういう順番がこれからこの審議では必要ではないかというふうに私は思います。
再度大臣に、私は、我が国の負担額、早急に明らかにすべきであると思いますけれども、いかがでしょうか。
- ○久間国務大臣
- これは正直言って、早急にはなかなか数字は煮詰まらないと思います。これから精査して、そして実施設計を組んで、そして金額が決まるわけであります。
だから、その前にではなぜ法律を出すかと言われますけれども、こういう法律で、こういう仕組みでやりますよということを法律ではっきりしないと、米軍の方は、日本は出すのか出さぬのか、あるいはまた、どういうような仕組みでやろうとしているのか、やるのかやらぬのか、そこが非常にあいまいになってしまいますと、それではもう進まぬよということになります。
進まないということになりますと、海兵隊の移転が、ちゃんとグアムの移転が決まってから海兵隊は移るということになっておりますから、今のまま移らないというようなことにもまたなりかねないんですね。
私は、やはりせめてその仕組みを、こうしてやりますという姿勢をあらわす意味でこういう法律というのは必要だということで、最初は、正直言って、法律が必要なのかどうか、これはJBIC、国際協力銀行法の一部改正をやれば済む話じゃないかという議論も中にはあったわけです。しかし、それでは日本の姿勢がきちんと出ないじゃないか。やはりこれは、日本の今度の米軍再編にかける姿勢をきちっと法律で示すことによって、アメリカと合意をしたこの内容をやりますよということを言うことが、公にすることが大事だと思って、法律を出すべきだということを主張した手前からいいますと、私はぜひこの法律は通していただきたいと思っているわけであります。
〔寺田(稔)委員長代理退席、委員長着席〕
- ○前田委員
- 確かに、やる気はあるとか姿勢を示すのは大事だと私は思いますけれども、ここは納税者の皆さんに対してきちんと御説明する場です。もちろんアメリカに対しての姿勢もあるでしょうけれども、納税者の皆さんに対してきちんと説明していただく、これこれこういう考えですよということを。だから、政府がグアムの移転経費を、詳細をいつまでも明らかにしないというのは、実のある審議ができない、そういうふうに私は思います。
では、一体いつになれば、大臣、明らかにしていただけるのか、伺いたいと思います。
- ○久間国務大臣
- 実施設計を組んで積算して、いろいろな単価について、これぐらいならやれるという、そして向こう何年か、四年なら四年間の見通しを立てて、これで四年間なら四年間で事業を完成するという見通しが立った時点で数字が決まるわけでありますから、その時点で予算を今度は国会にお願いして、JBICが幾ら出資するか、あるいは無利子融資をする場合だったらどれぐらいの金額を融資するのか、そういうのをこの委員会にかけて、予算案として出していくわけでありますので、その時点でそれを御審議いただくわけでありますから、現在は、こういう仕組みでいきますという、それについての制度のつくり方、これを今御審議していただいておりますので、ぜひそれは御理解いただきたい。
といいますのは、交付金についても同じことでありまして、交付金も、具体的にいろいろなところから上がってきませんと、再編関連でどこまで広がって、どこまで各市町村が受け入れていくか、それによって決まってくる。そのときにまた予算申請をして、予算書を政府内で固めて、御審議を願って決まっていくわけでございます。
だから私は、数字については、いつということを今ここでなかなか言えないというのはそういうことで、これから先のそういう作業を見ながら決めていくわけでございますので、ひとつ御理解していただきたいと思うわけです。
- ○前田委員
- だからこそ私は、では、今は数字は決まらない、あるいは内容が決まらないというのだったら、先ほど来申していますけれども、せめて政令の方向とか方針ぐらいはきちんとこれからの委員会審議で示していただきたいと思います。
先ほど来出ています国際協力銀行についての質問に移ります。
私も、国際協力銀行、JBICウオッチャーとして、この七年、JBICを追っかけてきましたけれども、今までJBICは、これはいいことをやったというのは一つしかありません、非常に厳しいかもしれないけれども。環境ガイドライン、これはきちんとされているというふうに私は思います。しかし、例えばパブリックコンサルテーションのやり方一つとっても、関係のステークホルダーを呼ばずに、受注企業だけ呼んで、いや、これでパブリックコンサルテーションですとか言っていましたよ。もうさんざん私も言いまして、やっと環境NGOもそこに加えていただけたとかいうケースもあります。
それから、異議申し立て制度、これは財務金融委員会でやらせていただきましたけれども、これも非常におかしな話で、融資が決定して実行してからでないと異議申し立てができない。簡単に言いますと、住宅を買ってからしか、ここの家は欠陥住宅だと言えない。そんなもの、初めから欠陥住宅だったら買いませんよね。融資に問題があったら最初から融資すべきじゃない。この異議申し立て制度もだめ。
具体的なケースで、午前中の審議の中で笹木議員が言われましたけれども、マレーシア、パハン・セランゴールの導水事業、首都のクアラルンプールが、マレーシアは非常に水不足であります、無収水率といいまして、収入にならない水が二〇〇〇年の段階で一八%あったということです。
これは何かというと、収入にならない水というのは、盗水、水が盗まれる、それから、管が古くて壊れて水が出ていっちゃう。それだったら管を直した方が早いんじゃないかということが現地でも非常に言われておりながら、結局、額として八百二十億円。ODAとしては、これはプロジェクト借款として過去最高額ですよ。
当時、二〇〇五年三月三十一日に、国際協力銀行、JBICは、マレーシアのセランゴール州と首都クアラルンプールへの水供給を目的としたマレーシアのパハン・セランゴール導水事業に関して、マレーシア政府との間で八百二十億四千万円を限度とする円借款の貸付契約に調印したわけでありますけれども、当時は既にODAの見直しの時期に入っていた。そして、マレーシアは発展した国でありますので中進国として位置づけられているわけでありまして、ODA卒業国であります。そこにこの円借款供与、これはアジア経済危機の後の新宮沢構想を契機にして、特別円借款と称してこの借款が開始されたわけであります。
こうしたことも、確かに必要とされればいいですけれども、これはまだ根拠となる報告書すら開示されていない。だから、非常に僕はJBICに対して懐疑的な見方をいたします。そのもともと問題のあるJBICを使って、目的外の仕事をさせていいものかどうか。
JBICはもともと、国際協力銀行法第一条、「国際協力銀行は、」中略「我が国の輸出入若しくは海外における経済活動の促進又は国際金融秩序の安定に寄与するための貸付け等並びに開発途上にある海外の地域(以下「開発途上地域」という。)の経済及び社会の開発又は経済の安定に寄与するための貸付け等を行い、もって我が国及び国際経済社会の健全な発展に資することを目的とする。」とあります。これが目的なんですよ。
それなのに、どうして移転経費にここを使うんですか。堂々と税金で使ったらどうですか、そんなJBICを使うなんて言わずに。だから、非常にスキーム自体も間違っているというふうに私は思います。
さらに質問を続けます。平成二十九年三月三十一日までの時限立法として本法案は出されているわけでありますけれども、国際協力銀行が出資する資金に関して返済期間は四十年から五十年と報道されていますが、これは事務方で結構ですので御答弁いただきたいと思います、本当ですか。
- ○大古政府参考人
- お答えいたします。
具体的なスキームにつきましては、まだ日米間で協議中でございますので現段階で確たることは言えませんけれども、例えば家族住宅につきましては、米国での事例を踏まえますと、事業期間はおよそ五十年程度になるという事例がありますので、今回のJBICの活用についても、返済期間としては五十年程度になるというふうに考えているところでございます。
- ○前田委員
- これは、施設が四十年、五十年もつか、ええっという、私は非常に不安があるんですね。最後の最後までアメリカ政府に償還をきちんと求めますか。
- ○大古政府参考人
- 住宅の場合は住宅手当で償還されることになりますので、それは期間が五十年であろうと、確実な償還を求めるのは当然であると思っております。
- ○前田委員
- 不良債権化しないようにきちんと求めてください。
国際協力銀行の業務の特例については、返済期間が先ほど来出ています四十年から五十年と、非常に長期にわたります。ですから、平成二十九年三月三十一日以降も当分の間なおその効力を有することになっておりますね。
他方、今国会に、政策金融改革の一環として株式会社日本政策金融公庫法案が提出されております。同法案が成立すれば、国際協力銀行に関しては、新たに設立される株式会社日本政策金融公庫に吸収されることになります。本法案において、この点について業務の継承等の規定は整備されているものの、政策金融改革の方向から照らし合わせて、この法律案上、期間を限定せずに相当長期にわたって駐留軍の再編促進金融業務を継続することは妥当かなというふうに僕は思いますけれども、これは大臣はいかがお考えでしょうか。
- ○久間国務大臣
- 相当長期にわたって建設したり融資をするのであればそれはいかがかと思いますけれども、これはつくるのは短期間でつくるわけでありまして、ただ、償還が長いからその継承をずっとどこかがやっていくことになるわけでございますから、その辺はその法律の行革の関係でも別に抵触しないというふうに理解しております。
- ○前田委員
- それでは、私はさっきからJBICの問題を挙げておりますので、今度はJBICに伺いたいと思います。
どんな借款を供与されるときも、私は根拠をきちんと示さなきゃいかぬというふうに思っています。先ほど来出ていますマレーシアのパハン・セランゴール導水事業、これについても根拠をしっかりと説明していない。
ことしの三月四日のマレーシアのニュー・サンデー・タイムズ、ここには、マレーシアにおける環境工学の専門家から、その必要性に疑問を呈して、この導水事業の必要性ですよ、どういうふうに書かれているかというと、本当にこのダムが必要なのかどうか、新たな調査をすべきである、また代替案も検討しなくてはならない、こういうコメントが寄せられているわけであります。また、同紙では、民間企業からもケラウ・ダムに頼らない代替案が提案されているわけであります。
ODAとして日本政府がこうした巨額な資金支援を実施しておるわけですけれども、現地のメディアにも事業に対してこんなに疑問がいっぱい出ているんですよ。ましてや、そうした必要性もしっかり説明しないようなJBICが、この大事な我が国の安全保障にかかわる移転の経費にかかわってくるということは、私は問題があると思いますよ。
まず、このセランゴールの導水事業についてですけれども、現地メディアでもそもそも論が言われている、これをどうJBICとして受けとめられるか、ちょっと伺いたいと思います。
- ○武田政府参考人
- お答えいたします。
まず、本事業でございますけれども、先生のお話がございましたとおり、マレーシアの首都クアラルンプールを含みますセランゴール州、ここの継続的な人口増加等に伴います水需要、こういう増加に対応するために、隣のパハン州の水源から導水を行い、また水不足の改善を図るものでございまして、一昨年、二〇〇五年に円借款契約を締結してございます。
今先生がおっしゃいました現地報道につきましては、私どもも承知をしてございます。ただ、本事業対象地域における水需要につきましては、現時点においても引き続き深刻な状況にあると私どもは承知しておりまして、また、これらの地域における新たな水資源開発、これが困難であるということから、本事業は引き続き必要である、こういうふうに判断してございます。
また、マレーシア政府そのものは、代替案といたしまして、地下水開発、工業用水のリサイクル、他地域からの導水等々の検討を行いましたけれども、これらにつきましてはいずれも、水資源量、コストなどの面から、本事業の代替案とはなり得ない、こういう結論を出していると私どもは承知してございます。
また、マレーシア政府は、本事業の実施に当たりまして、現地住民を含みます関係者との協議を適切に行っている、こういう点からも、マレーシア政府の検討過程は妥当なものであった、こういうふうに考えてございます。
- ○前田委員
- 先ほど来、いや、これは代替案を政府が考えたけれどもそれはコストに合わないからとか言われていますけれども、やはり融資締結前から事業の必要性に対して疑問が投げかけられていたわけであります。
それに対して、根拠というのはどういうものであるかということをはっきりと示した調査報告書があるわけですよね。パハン・セランゴール導水事業E/Sに係る案件形成促進調査、SAPROF、サプロフと我々は言っておりますけれども、最終報告書、これが出ているんですよ。これはどうして開示されないんですか、国際協力銀行。
- ○武田政府参考人
- お答えいたします。
私ども国際協力銀行は、円借款の供与契約締結におきまして、各事業の内容、必要性、妥当性、また環境社会配慮面での審査結果、成果の目標、こういうものを示しました事業の事前評価表、こういうものを国際協力銀行のウエブサイトで公表しておりまして、本事業におきましても同評価表を公表し、本事業の必要性についても説明をいたしてございます。
- ○前田委員
- 私は、そんなことを聞いていない。
いいですか、この導水事業のSAPROF、これはどうして開示されていないんですか。これを聞いているんですよ。
- ○武田政府参考人
- まず、事業の必要にかかわります事業事前評価表、これにつきましては、先ほど申し上げましたとおり公表してございます。
また、SAPROFと申します事業の案件形成促進調査なる調査そのものは実施しておるところでございます。これにつきましては、私ども国際協力銀行とマレーシア政府との間の協定に基づきまして事業の実施内容を作成しておるものでございまして、事業内容等々機微にわたるところがいろいろあるということで、そういう性格のものでございますので、公表については差し控えさせていただいてございます。
- ○前田委員
- うそだ。うそを言っている。
いいですか。平成十七年の十二月一日、私はそのとき決算の理事でした。決算委員会から、衆議院シンガポール及びマレーシアにおける決算行政監視等実情調査議員団というのを組みまして、この報告書が出ているわけですよ。
私自身が、マレーシア政府の水資源大臣、リム・ケンヤク大臣に申し上げて、この事業の推進に当たっては、三つの点を示した。十分な情報開示がなされること、パハン・セランゴール導水事業、先ほどのE/Sに係る案件形成促進調査、SAPROFについてとにかく開示すること。厳格な環境社会調査を実施すること。それから三番目に、すべてのステークホルダーを集めた公共性の高い会合を開催する。これを提案したら、リム・ケンヤク大臣は、もちろんであると言われたわけですよ。そういう、開示するという言質を得たわけですよ。
そして、さらにまた次の会合の、ラハマン経済企画院副長官、この方との会談の中で、JBICが同報告書と同じものを所有している、日本の納税者に対して開示、説明責任を果たすべきだと私が指摘しましたら、ラハマン副長官は、私からもJBICに言うという開示の許可を出した。このときにJBICの職員もいたんですよ、この現場に。
何がマレーシア政府に、開示されていないからなんて、うそばかり言っちゃだめですよ。そういうことをやっているから、私は、この大事な安全保障にかかわるスキームにJBICに加わってほしくないんですよ。
どうですか、もう一回この説明を。
- ○武田政府参考人
- お答えいたします。
まず、SAPROF調査報告書につきましては、過去にも申し上げておるとおりでございますけれども、基本論といたしまして、まず、マレーシア政府との間の信頼関係に基づいて行われている、こういう調査でございまして、私どもが円借款事業の検討、調査を行うに当たりまして、今後、マレーシア側から十分な情報が提供されないおそれがある、あるいは円借款事業の適切な事業に支障を来すおそれがあるということから、公開はしてございません。
ただ、これはあくまでも基本でございまして、ただいま先生がおっしゃられましたとおり、本件につきましては、私どもも、NGOの要請あるいはマレーシア側からの了解も得まして、一部開示をいたしてございます。そのようなまさに信頼関係に沿って、そしてマレーシア側の了解も得て、一部開示をしておる、こういうことで説明させていただいておるところでございます。
- ○前田委員
- JBIC、一部開示だったら、最初からそうやって言えばいいじゃないですか。これは、実際に現地で、リム・ケンヤク大臣は政権の重鎮ですよ、彼が許可をしているんですよ。それを、一部開示していますと胸を張ってどうするんですか。きちんと全部開示して、このプロジェクト借款に対して根拠はあるんだということをしっかり示すべきですよ。
これから、JBICが加わったスキームでこの移転経費の一部を賄うということになって、私は、この融資の透明性あるいは情報公開について非常に不安が残る。だから、JBICに加わってほしくないんだ。
いいですか。きちんと、何に関してもうそを言わずにやるべきですよ。では、きちんと開示しますね。いいですか、JBIC。もう一回、答弁。
- ○武田政府参考人
- SAPROFの報告書につきましては、私どもと借入人との間の信頼関係に基づいて、基本的に非公開としておるところでございますけれども、まさに借入人の了解を得るということを前提といたしまして、相互の信頼関係を失わないような範囲におきまして開示をいたしておるところでございまして、こういうことで、今後も、借入人との信頼関係、それから国内での説明責任というものを全うしてまいりたい、こういうふうに思います。
- ○前田委員
- とにかく、やはり私は、いや、今開示しておるところでありますけれどもなんて言っているけれども、現地がいいと言ったらきちんと開示すべきですよ。私は、これからこういうスキームの中にJBICが入られるんだったら、やはりそういう部分をきちんとしてもらわないといけないですよ。
さらに、同事業に関しては、融資契約を締結する二〇〇五年以前より、ラクム森林保護指定地域、これは非常に広くて一千五百五十ヘクタール、ここの水没、オランアスリと言われていますマレーシアの先住民族三百二十五名の移転など、環境、社会問題に関する懸念が取り上げられています。
私も、現地で先住民族のオランアスリの研究者にしっかり会って話をしてきました。オランアスリはこの移住に関して同意しているんだと言われましたけれども、同意書を私は一切見たことがない。先ほどのラハマン経済企画院副長官とのお話の中で、私は見たことがない、それはマレーシア政府が開示してくださいというふうに聞きましたら、いや、JBICは同じものを持っていると言いましたよ。JBICはそれまで、いや、一切私どもそれは見ていませんと。これまたうそを言っていましたよ。
そういう隠し事をして、それは本当に国民に対しての背信行為ですよ。いいですか、JBICには税金が半分入っているんですよ。その辺をきちんと認識して、これからこのスキームの中にもし入られるとすれば、やられない限り、やはりJBICへの信頼は置けないというふうに国民は判断します。
今言いました先住民族の移転に関して、深刻な懸念が残っております。では、JBICとして、これからこの環境、社会問題に関してどういう方針を打ち出されるのか、私は少し聞いてみたい。
- ○武田政府参考人
- お答えいたします。
まず、先住民族に対しましては、マレーシア政府より、住民協議がなされまして基本的に移転に同意している、こういうことを私どもとしては確認してございます。また、移転対象住民の意向などを聞くために、住民あるいはNGOなど現地関係者を招きましたモニタリング会合が、一昨年の円借款契約調印後、三回開催されておりまして、私どもといたしましては、適切にモニタリング会合が開催されるようマレーシア政府に申し入れているところでございます。私どもも、その会合の内容については十分にフォローしてきておるところでございます。
- ○前田委員
- 今、私どもモニタリング会合をしっかりフォローしていると言われましたけれども、過去にこの住民移転に関しては、JBICは、しっかりと説明責任も果たさず、深刻な問題をさんざん引き起こしてきました。例を挙げましょう。フィリピンのサンロケ・ダム、インドネシアのコタパンジャン・ダム、スリランカの南部ハイウエー建設事業、全部、住民問題に関しての深刻な問題を引き起こしてきました。それに対して何もやっていません。パハン・セランゴール導水事業においても、いまだにこれが残るわけであります。私は、こうした姿勢が、やはり税金を半分預かる者として適切かどうかというところがあると思うんです。
JBICは、こうした問題、今私が列挙しましたけれども、では、こういう問題に対してこれからどういうふうに対応されるのか。もう一回ちょっと説明してください。
- ○武田政府参考人
- お答えいたします。
今回のマレーシアの案件につきましては、私どもとして、マレーシア政府がどのような手を打っているかについて十分にフォローする、かつまた、モニタリング会合というような形で、マレーシア政府、住民、NGO等の協議が適切に行われるように、こういうことをマレーシア政府に申し入れをし、かつその協議の内容等々についてウオッチをする、こういう姿勢で取り組んでいる次第でございまして、また、先生がおっしゃられましたインドネシアの事業あるいはフィリピンの事業におきましても、基本姿勢といたしましては、今申し上げたような姿勢でもって取り組んでおるということでございます。
以上でございます。
- ○前田委員
- マレーシアのパハン・セランゴール導水事業、巨大な八百二十億の円借款ですよ。それで、さらにもっと大きな額になるのではないか、我が安全保障委員会が所掌するグアム移転経費等、私は、もう一回JBICは襟を正していただきたい、そういう気持ちで今質問をさせていただいております。
この導水事業についても、直径五・二メートルの巨大な導管で掘るんですよ、地下に四十五キロ。このばかでかい計画をやっていくわけですよ。それよりも、先ほど申し上げたように、地元の民間企業からも、無収水率を下げるには管を直した方が安くつくじゃないかといった代替案がいっぱい出ていますよ。先ほど言った三月四日の現地の新聞にも、環境工学者の方からそういう記事が載るわけです。
ということは、JBICは、何でもお金を出せばいいんだ、政府の言うとおりになって出していけばいいんだ、政府の財布だという考えではだめですよ。きょうは、防衛省が最初の記念すべき法案であるのに、政令の具体的な内容も言わない、これから算出してから予算額を出していくとか、これはそのときに審議すればいいなんて言っていますけれども、やはり納税者の皆さんにきちんと説明していただきたい、それがこの委員会の趣旨でありますので。
とにかく、私はもう一回JBICに伺いますけれども、こういうパハン・セランゴール導水事業のように、不十分な説明そして説明責任も果たしていない、透明性も担保されていない、そういう状態のもとでの融資が実施されて、またさらに、先ほど言っております先住民族のオランアスリの移転という環境、社会問題も放置、私はあえて放置と言いますよ、対応していないからね。それで、この事業の融資を実施している、問題も何も解決されていない。
そんな状況下で、今回の米国の駐留軍移転促進事業においてJBICが資金の貸し付け等の業務を実施するに当たって、貸し付けが適切に実施され、また貸付金が適切に使われているかどうかということについて、どのような形でこれから情報公開を実施して説明責任を確保していかれるのかということをJBICに伺いたいと思います。
- ○野崎政府参考人
- お答え申し上げます。
当行といたしまして、駐留軍移転促進事業に係る資金の貸し付け等の駐留軍再編促進金融業務、これを実施するに当たりましては、政府とも十分に相談しつつ、適切な情報公開の確保に努めていく所存でございます。
- ○前田委員
- 適切な情報公開に努めていく所存です、それはだれでも言えますよ。具体的にどうするんですか。説明してください。
- ○野崎政府参考人
- お答え申し上げます。
こうした問題につきましては、政府の御意向を十分に反映しつつ、必要なものに関しまして適切に情報公開、これをやっていくということかと存じます。
- ○前田委員
- 私は、JBIC本体、JBICの本社に一人で乗り込んでいきました。情報公開されていないけれどもと。それから、先ほど一番冒頭に挙げたように、パブリックコンサルテーションで何にも、はい、皆さんに意見を聞きますと言っていて、呼んでいるのは受注企業だけとか、そういうばかなことを繰り返されてはいけないわけでありますよ。我が国の安全保障にかかわる部分にタッチするわけですよ、皆さん。そんな政府の方針とかなんとか、皆さん笑ってみえますよ。いいですか。
どういうふうに、例えば定期的にパブリックコンサルテーションをやるとか、一体どういう形でされるんですか。もう一回。
- ○野崎政府参考人
- そうした点につきましても、今後とも、よく政府に御相談申し上げながら、適切に対処していくということかと存じます。
- ○前田委員
- 私はその言葉はJBICから何回も聞きました。
先ほど来、皆さんもよくわかったと思いますけれども、事業の根拠になる報告書すら、マレーシア政府が出していいと言っているのにJBICはひた隠しに隠しているとか、やはりきちんとそうした説明責任は果たしていただきたい。いいですか。
これから私は要望しますけれども、とにかくJBICは事業者や当該政府の言うことをのみ重視する方向にあるというふうに私は思います。だからこそ、反対に、現地の住民やステークホルダー、そしてこれからは、我が国の安全保障にかかわるんでしたら日本国民の声もきちっと重視して、そこに対して、納税者に対して説明責任も果たしていただきたい。政府が言うとおり私たちはお金を出していきます、それだけの話じゃありませんよ。いいですか。これだけはお約束いただきたい。どうですか。
- ○野崎政府参考人
- ありがとうございます。
先生の御指摘も踏まえ、適切に対処していきたいと存じます。
- ○前田委員
- きちんと、そのとおりしてください。もうそれしか言いようがありません。いいですか。
これでこの法案についての話は一たん閉じさせていただきますけれども、とにかく、これから何事についても具体的な話をしていこうじゃありませんか。
それで、最近ちょっと気になったことを最後に一つだけ挙げさせていただきたいと思います。デンソーの機密情報持ち出し事案についてであります。
デンソーの中国人技術者が同社の機密情報を持ち出すという事案が発生しました。同社は軍事転用可能な情報は含まれていないと説明されていますけれども、他方では、かねてより中国が他国の高度な技術を入手しようとして努力しているのは事実である、日本企業は持っている技術にどれだけ軍事的な価値があるのかわかっておらず、軍事転用への警戒感が薄い、こういう指摘もあります。
北朝鮮による去年の七月五日の弾道ミサイル発射事案や十月九日の核実験など、我が国を取り巻く安全保障関係は非常に緊張した状態に入っていると私は思います。軍事転用の可能性を否定できない情報の流出は非常にゆゆしきことだというふうに私は思っております。
二十年前に議員立法で常会に提出されましたいわゆるスパイ活動防止法、私は、これは制定すべき時期に来たんじゃないかというふうに思いますけれども、まず、どうでしょう、防衛大臣のお考えを伺いたいですね。
- ○久間国務大臣
- 相手に情報を渡したらその相手から第三者に渡ってしまうと思われますと、非常にそういうところで情報が入ってこなくなる、そういう問題がございますから、情報の秘匿というものについてはやはり神経を使わなければならない、そういうことはもうよくよくわかっております。
しかしながら、さりとて、どこまでそれを厳しくすることがいいのかどうかについては、国民的なコンセンサスを得る必要がございますから、なかなか難しいわけであります。だから、今私たちがちょっと考えておりますのは、せめてアメリカと日本の間で、今度アメリカに行きましたときも話をしようと思っておりますけれども、世界各国、六十一カ国と、要するにGSOMIAという一般協定を結んでおります。
それは何かというと、やはり相手の企業が、企業同士で交わしたものでも、そういう防衛秘密といいますか、向こうでいう国防秘密といいますか、そういうものについては漏らさないということをやはり守らせるべきだ、そういうような行政協定を各国と結んでおるなら、日本は確かに今までは日米安保条約に基づく刑事特別法があったりなんかして、いざとなったら刑事事件として、あるいはまた防衛省を通じてのいろいろな問題は防衛秘密として刑事罰があるからということで担保されているという話でしたけれども、企業同士が下請で入ったときなんかはそれが守られないんじゃないか、そういう問題も出てきております。
企業同士がこれから先お互いに相互運用でいろいろなことをやり始めますと、下請として直接使うことだってあり得るので、一般協定なんかを結ぶ必要があるんじゃないかな、そういう思いがございますけれども、まだスパイ防止法というほど国民世論がまとまってきていないんじゃないかなという気がいたしますので、その辺についてはやや慎重にならざるを得ないんじゃないかというのが私の率直な今の感想であります。
- ○前田委員
- 今大臣もおっしゃいましたけれども、非常にゆゆしきことでありますし、そこまで至らなくても、我が国、先ほどのデンソーの事案は、パソコンを一個盗んだという軽犯罪にしかならない、罰せられないわけですね。そうした事態だけでも改善をしなきゃいかぬというふうに思っています。
その中で、ちょうどきょう経産省もお越しいただいておりますので、経産省にもちょっと伺いたいと思います。
私は、経産省が平成十八年十二月、発表された調査がありますけれども、これはなかなかよく調査されていると思います。我が国製造業における技術流出問題に関する実態調査ということで、製造関連企業はどういうふうに情報流出について思っているかといったことを聞いた資料であります。外務委員会でも長妻委員が副大臣にも質問したと思います。
それによりますと、何と三五%以上の製造関連企業が情報流出があった、こう回答しているわけであります。こうしたものの具体的な防止策は、経済産業省、どのようにとらえているのか、伺いたいと思います。
- ○石黒政府参考人
- お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、平成十八年十二月に当省で行いました調査によりますと、約三六%の企業が技術流出と思われる事象があったということで回答いたしております。さらに、技術流出のルートについて聞きますと、技術流出があったと回答した企業の約七割が物を通じて流出しており、そのうち約七割が最終製品のリバースエンジニアリングや製造装置を通じて流出している、また約六割が人を通じても流出しておって、そのうちの約六割が退職者を通じて流出しているというふうに回答しております。
このように、必ずしも法令違反の行為とは言えない事例も多数含まれていることには留意が必要でございますけれども、いずれにせよ、御指摘のように三割以上の企業では意図せざる技術流出が発生していることは事実でございます。
このような観点から、こうした状況を踏まえまして、当省としては、これまで技術流出防止指針、営業秘密管理指針などのガイドラインを策定いたしまして周知徹底を進めるとともに、不正競争防止法の改正や外為法の厳格な運用などを進めてきたところでございます。今回のアンケート調査も企業に注意を喚起するということでございまして、今後もこのような取り組みの推進により、我が国企業の適切な技術管理を徹底してまいりたいと思っております。
- ○前田委員
- 時間が来たようなのできょうはこれでやめますけれども、経済産業省、いい調査をされて、私は、ちゃんと防止策もきちっと対応されているというふうに思います。
とにかく納税者に対して説明がつくように、きょう、防衛省になって最初の法案審査でありますので、私はこれからぜひ防衛省に望みたいのは、とにかく具体的にどうするのかということをきちんと書いて、それからちゃんと法案を出していただきたい。もしそれが出せなかったら、きちんと御答弁いただきたい、初めから。
これだけをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
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