2007/02/28(Wed)−前田 雄吉(まえだ ゆうきち)国会質問
予算委員会第5分科会 『薬事法の矛盾について』
○前田分科員
 民主党の前田雄吉です。
 きょうは、質問通告していないことがありますけれども、冒頭に、私の子供たちもかかったインフルエンザに有効であるというタミフルの話を大臣にちょっと伺いたいと思います。
 この二月二十七日の未明に、仙台市で十四歳の男子生徒さんが飛びおりで転落死されました。アメリカの食品医薬品局、FDAによると、タミフル服用後の異常行動などの精神・神経症状は十七年八月から十八年七月までに計百三例あった、そのうち九割以上の九十五件が日本であったということがありますので、私は、もちろん有効だというのはよくわかっておりますけれども、一たん販売を停止されて、速やかに厚生労働省によって因果関係を調べられた方がいいのではないかというふうに思っておりますけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。
○柳澤国務大臣
 タミフルとどのような関係にあるかということは私ども確認しておりませんけれども、いずれにしても、そういう若い少年、そういうような方が今回のような悲しむべき死を遂げられたということに対しては、本当に強く胸を痛めているところでございます。
 タミフルのことについてなんですけれども、今現在、これがそのような精神・神経症状と関係があるというようなことについては、私どもは消極的でございます。そもそもインフルエンザに罹患した場合に、タミフル服用の有無と関係なく、そうした異常な行動に出るということもかねて観察されていたことでもあるという事情もありまして、いずれにせよ、とにかく、まず私どもとしては、本日、インフルエンザ治療にかかわる医療関係者の皆さんへ、注意事項についてのお願いということで、インフルエンザ治療開始後の注意ということで、留意事項について、これを通達するということをいたしたところでございます。
 今、先生は販売中止して云々というお話もございましたけれども、私ども今現在もこの調査をいたしておりますので、それらにつきまして、できるだけ早くに、私どもの認識について改めるべきところがあるかどうか、このことを、調査結果を踏まえて検討してまいりたい、こういうのが現状の私どもの姿勢でございます。
○前田分科員
 ぜひ、大臣、子供たちの命がかかったことですので、速やかに調査をされて対処していただきたいと思います。
 次に、いよいよきょうの本題の健康食品について伺っていきます。
 山形市内の業者が製造しました花粉症の対策用の健康食品のパピラ、これを飲んで意識不明になった女性の方があったという問題で、このパピラに対して、これも通告をまだしていませんでしたけれども、きょうも医薬食品局長がお越しいただいていますので、これへの行政処分をどのようにお考えなのか伺いたいと思います。
○高橋(直)政府参考人
 たしか杉花粉症に効くということで杉の花粉をカプセルに入れたものだったと思いますけれども、関係の業者につきましては都道府県の方で現在調査をしているかと思いますけれども、その点につきまして、たしか現在、販売をとめるようにというような指導をしているかと思います。
○前田分科員
 ここからは通告しておりますので、よろしくお願いします。
 政府の健康・栄養政策について、健康食品を中心に伺いたいと思います。
 この健康食品、今、国民の過半数に及ぶ皆さんが活用されている。それこそ安倍内閣の支持率以上に、それを凌駕するぐらいの国民の関心事項でもあると私は思うんですけれども、やはり多くの国民が安心して、信頼が置ける健康食品の利用ができるような法整備を急いでいただきたいというふうに私は思っております。
 厚生労働省においては、新開発食品保健対策室、これをつくられて、これは、いつどのような目的でつくられて今に至るのか。いまだ名前も何も変わっていないというお話ですけれども、これは本当かどうか。そして、二十年たっても、この間に健康食品に関しての法整備はなかなか、何もなし遂げられていない。特に、健康食品市場は、総務省の調査でも十年間で倍増しております。この対策室はそのままに置かれている。国民の健康食品の利用が過半数に及ぶ中で、僕は、この健康食品に対してすごく軽視しているんではないかというふうに思うんですね。
 確かに、二〇〇三年に健康食品のあり方検討会をつくられて、十三回にわたる討議をされて、提言を出され、新特保制度をつくられて二年に及ぶんですけれども、この新特保制度で健康食品をカバーしようという意図があったと思うんですけれども、この二年間で、条件つきで特保がわずか一例しかない。規格基準型特保を入れても、これは数例しかありませんので、合わせて十例もないということで、大半の健康食品は法の外に追いやられている、制度外に置かれているのが今の現状であります。
 この特保、六千八百億円規模ある、これを含む健康食品市場は二兆円とも言われておりますので、私は、まず、この対策室がいつできて、どんな目的で、今もそのままかというお話を伺いたいと思います。
○藤崎政府参考人
 お答え申し上げます。
 厚生労働省におきましては、昭和五十九年に、当時でございますけれども、厚生省生活衛生局食品保健課に、健康食品を担当する室として、健康食品対策室を設置いたしております。この時点では、広く健康食品に関する調査でありますとか、あるいは啓発と普及でありますとか、そういったことを中心に室の業務を開始いたしております。その後、健康食品に関する関心も大変高まってまいりましたし、また、その重要性にかんがみまして、昭和六十三年に、新開発食品保健対策室と名前を変えまして、厚生省令に位置づけられる省令室というふうに格上げになりました。
 それ以来、増大する健康食品対策に対応できるよう対策室の定員も増員させてまいりまして、平成十九年度においては、健康食品の安全性の確保、安全性の確保のところまでまいりましたが、これを推進する担当官の増員を予定されております。当初四名でスタートいたしましたが、来年度の一名増員がかないますと十一名になるということで、これまで体制の充実を図ってまいりました。
 今後とも、健康食品に対する国民の関心の高まりと消費の拡大を踏まえまして、必要な体制の充実に努めてまいりたいというふうに考えております。
○前田分科員
 今、体制の充実を図るということをお約束いただきましたので、本当に国民の皆さんの関心が高い分野でありますので、ぜひお願いいたします。
 今、ここに食品衛生法を持ってきましたけれども、その四条に、「この法律で食品とは、すべての飲食物をいう。ただし、薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品は、これを含まない。」衛生法では医薬品関係は含まないと言っていて、そして薬事法は、以前は、食品は含まないという条項があったというふうに聞いております。お互いに、この食品衛生法と薬事法は相互不可侵の関係にあった。それが、昭和四十六年の局長通達によって、この薬事法下の、ただし食品を除くという条項が削除されたというふうに聞いております。これはどういう経緯で外されたのか、御説明いただきたい。これを外したことによって健康食品が薬事法下に置かれてしまったというふうに私は考えております。どうぞ。
○高橋(直)政府参考人
 現在の薬事法は昭和三十六年の改正で現在の形になっておりますけれども、その昭和三十六年改正以前の旧薬事法における医薬品の定義の規定では、委員御指摘のとおり、食品を除くということが明示されておりましたが、三十六年のその改正で、この規定が削除されております。
 これは、事柄の実体としては何も変わっていないんですけれども、解釈上当然のことであるので、ただ、それまでは両方でお互いを除くと書いていたものですから、解釈上若干の混乱を来したことがありましたので、逆に今は、食品衛生法の方で医薬品は除く、薬事法の方では何も書いていないということで、医薬品に該当すれば自動的に医薬品、医薬品でないと言えば必ず食品になるということで、解釈上の混乱を避けるためにこういった改正をしたという経緯でございます。
○前田分科員
 そこで、やはり健康食品はどちらの範疇に入るのか、食品なのか医薬品なのか、こういう仕切りが非常に私はあいまいであるというふうに思っております。
 だから、これから話しますように、法的な環境整備をきちんと整えなければいけないというふうに思っております。アメリカでは、一九九四年、薬事法を改正して、議員立法で栄養補助食品健康教育法、これをつくりまして、そしてクリントン大統領のサインでスタートしたというふうに聞いております。健康食品に対して前向きに認知したと考えております。
 この健康食品に携わる人たち、携わるというか、それを愛用している人たち、二兆円にも上るお金を払って、その市場が形成されておりますので、法的にもきちんと環境整備をすべきではないかというふうに私は思っております。
 これは、効能等を何も言えないのが今の現状であります。しかし、消費者にとってみると、正しい情報と安全な商品が提供されるのが当然であるというふうに僕は考えております。この健康食品についても十分な情報開示をしていただく、そのような法的な環境整備について食品安全部長さんはどのようにお考えなのか、伺いたいと思います。
○藤崎政府参考人
 お答え申し上げます。
 最初にまず、この間の法的な取り組みにつきまして、今米国の御紹介をいただきましたが、我が国も、形態は違いますけれども、一定程度そういうことを行ってきておりまして、まず、健康食品に、いわゆる法的な取り組みということで、平成三年に特定保健用食品制度というものをスタートいたしました。また、先ほど先生御紹介いただきましたように、平成十三年に保健機能食品制度というものをつくったということでございまして、これらは健康増進法また食品衛生法等の整備を通じて行ってまいってきております。また、平成十五年には食品衛生法、健康増進法が改正されまして、この際に、食品衛生法の改正によりまして新開発食品等の販売禁止規定の整備でありますとか、また健康増進法の改正によります虚偽誇大広告禁止規定の整備等を行ってまいりました。
 このような形で、単独の法律というわけではないんですけれども、関係諸法を整備しつつ、また、さまざまな運用を通じて健康食品の質が担保され、そしてまた情報が提供され、また安全が確保されるような対応をこれまで行ってまいりました。また、あわせまして、今先生おっしゃられました情報という問題につきましては、独立行政法人の国立栄養研究所におきましてデータベースをホームページで開設いたしておりまして、そういうものも御参照いただけますし、また、私ども、健康食品等にかかわります健康障害事例等々の御報告をいただいた際には、ホームページ等に公表する、あるいはプレスリリースをする等を通じまして、そのような情報の提供にも努めてまいっております。
 引き続き、今後とも適切な制度の整備と運用に努めてまいりたいと考えております。
○前田分科員
 今御説明があったように、確かに法律はいろいろつくられてきました。健康食品に関する法律は、食品衛生法、先ほどの薬事法、健康増進法、あるいは景表法、特商法などがありますけれども、この二兆円にもわたる有望な産業が、やはり私はまだまだその法的位置づけがはっきりしていない、隅に追いやられているような感がしてやみません。
 健康食品自体も、これは、おいしいとか色合いがいいとかいって決めて食べるものではなくて、消費者は、機能で決めて摂取されるものでもあります。しかし、食べる量も機能もはっきり書かれていない、伝えられていない、それを消費者が摂取するわけでありますので、私は、きちんとやはり健康食品だけの立法が必要ではないかというふうに考えますけれども、大臣はどのようにお考えでいらっしゃいましょうか。
○柳澤国務大臣
 前田委員が大変、現在の健康食品について深い関心をお持ちで、その観点からいろいろな問題提起をされていることにまず敬意を表したい、このように思います。
 ただ、私どもの取り組みについても御理解をいただきたいと思うんですけれども、たとえ健康食品というふうに称しておったとしても、特定の疾病の治療を目的とする、あるいは体の機能に影響を及ぼすということを目的とするもの等については、これは医薬品に当たる、そういう判断をいたして、薬事法に基づいてこれは未承認医薬品として取り締まりを行う、こういう体制になるわけでございます。また、消費者が適切に選択できるよう、事前の許可等により機能に着目した表示を可能とする保健機能食品制度なども実施をいたしておりまして、薬事法それから健康増進法、食品衛生法、この適切な運用によってこれに取り組むということに努めているところでございます。
 具体的には、健康増進法に基づきまして、個別に国の許可を受けた上で、特定の目的で健康の保持、増進に役立つ旨を表示できる、先ほど委員も御指摘になられた特定保健用食品制度がある。それからまた、国が定めた基準に沿っていれば許可なくして食品に含まれている栄養成分の機能を表示できる栄養機能食品制度などもあるわけでございまして、食品の機能に着目した表示を可能とする制度を実施している。そして、その場合には、これらの制度においては、機能とあわせて摂取量も表示することとなります。
 こういうことでございまして、厚生労働省としては、引き続き、法に基づく適切な制度運営に努めていきたい、このように考えている次第でございます。
○前田分科員
 だからこそ、ぜひ、反対に健康食品だけに特化して法律をきちんと整備すべきではないかというふうに私は思っておりますけれども、これからまた委員会でも大臣と議論したいと思っております。
 そして、昔は健康な人と病気の人と、二分割されていたと思うんですけれども、今は、私もそうかもしれぬですけれども、二千万人に及ぶメタボリックシンドロームに象徴されるような、病気でもなくて健康でもない人がふえてきている。もともと日本は、セルフメディケーション、そうした感覚がすぐれた国であると思いますので、国民の皆さんは自分で自分の健康管理をする。そしてまた二〇〇八年には国民総健診制度が出発するわけでありますので、私は、ここに健康食品が、国民の健康を維持するのに一つ非常に有効な手段になってくるのではないかというように思っております。例えば、カルシウムと骨粗鬆症とか、はっきりと予防的な機能を備えたものが健康食品には多いということです。しかし、一回に何錠とか食前とか食後とか、あるいはどんな機能があるかとかいう情報がやはり消費者にきちんと開示されなければ、安心して消費者の皆さんはとれない。
 だから、私は、立法スキームをやはりコンシューマーズファースト、消費者サイドに移して、きちんとこれから立法していただきたいと考えます。特に、薬事法をコンシューマーサイドに切りかえる必要があるのではないかというふうに私は思っております。そう改正すべきであると思っておりますが、いかがお考えでしょうか。
○高橋(直)政府参考人
 薬事法におきましても、医薬品は、疾病の治療のみならず、その予防に使用されることが目的とされるものについても当然その範疇に入るわけでございます。したがいまして、予防の上で有効性なりあるいは安全性が確認されたものについては、これはもちろん医薬品としての承認を与えるという制度になっています。
 そういったものがまた今後出れば、私どもとして、そういったものを審査しまして、予防に役立つものはもちろん役立つということで、私どもとして承認をいたしていきたい、かように考えております。
○前田分科員
 先ほども大臣のお話の中にもありましたように、健康増進法の中に、著しく誇大な表示をしてはいけないという一条が入っておりました。ちょうどこの法律は、BSEのときとか食肉偽装のときにつくられた法でございますけれども、このたった一条を通して、通知、通達、ガイドラインと、拡大解釈の、私は、裁量行政の重いものが健康食品にのしかかっているのではないかというふうに思っております。
 著しく虚偽誇大ということはどういうことであるかということを御説明いただきたいと思います。
○藤崎政府参考人
 お答え申し上げます。
 先生御指摘の、著しく虚偽誇大についての解釈ということでございますが、健康増進法第三十二条の二においては、著しく事実に反する表示をし、または著しく人を誤認させるような表示をしてはならないと規定されております。
 この趣旨でございますが、健康の保持増進の効果等について、著しく事実に相違または著しく人を誤認させる広告が十分な取り締まりがなされることなく放置された場合に、これを信じた国民が適切な診療機会を逃してしまうおそれ等もあり、国民の健康の保護の観点から重大な支障が生じるおそれがあるということで、このような事態を避けるために規定されたものでございます。
 そして、その規定で言う、それでは何が著しく、あるいは事実に相違するかということでございます。
 まず、著しくということでございますが、この判断は個々の広告等に即してなされるべきでありますが、例えば、一般消費者が、広告等に書かれた事項と摂取した場合に実際に得られる真の効果との相違を知っていれば当該食品を購入しないような場合、これに該当するのではないかということでございます。
 また、事実に相違するとは何かということでございますが、これは、広告等に表示されている健康保持増進効果等と実際の健康保持増進効果等が異なることを指しております。
 また、人を誤認させるとは何かということでございますが、これは、食品等の広告等から認識することとなる健康保持増進効果等の印象や期待感と、健康の保持増進の実際の効果等に相違があることを指すものと解しております。
 このような基準に基づきまして、国民の健康の保護の観点から、健康食品における表示の適正化を図っております。
 ところで、では、具体的にどんな表現なんだということがあろうかと思いますが、例えば、即効性でありますとか、万能でありますとか、最高のダイエット食品でありますとか、あるいはがんが治ったなどの治療、治癒に関する言及でありますとか、天然、食品だから安全、全く副作用がない、こういうようなことなどが、例えばでございますけれども、こういうものに当たるのではないかというふうに考えております。
○前田分科員
 時間が来ておりますので、最後の質問にさせていただきたいと思います。
 今、ヨーロッパのハーブをOTCにする議論がなされているというふうに聞いております。ハーブのOTC化について、これは本当であるかということを伺いたいと思います。
 特定保健用食品は、人試験が必要であります。OTCとハーブは、人試験なしでなされます。本来的な健康食品の機能を何年も放置しておいて、放置とは皆様は言われぬかもしれぬですけれども、製薬会社が推すハーブのみをわずか一年で承認しちゃうというのは非常に問題であると私は思っております。製薬会社がSOSを出せば厚生労働省が動くという構造があるのではないかというふうにも私は懸念しますけれども、人試験を要求される特保に比べてOTCの水準は低い、人試験もなく欧米のハーブ医薬品を市場に出すということは非常に乱暴な議論ではないかというふうに私は思っておりますけれども、これを出す理由を伺いたいと思います。
○菅原大臣政務官
 今、前田委員から御指摘ありましたハーブの件でございますが、御指摘のヨーロッパのハーブに該当するOTC、いわゆる一般用医薬品につきましては、平成十五年並びに十七年にそれぞれ一品目が新医薬品として承認申請されているところでございます。いずれも赤ブドウの葉から抽出したエキスをカプセルに詰めたものでございまして、これらの医薬品につきましては、国内において治験段階で実施されました人の百八十症例の臨床試験成績、あるいは外国において実施されました臨床試験成績及び動物を用いた毒性試験成績等が提出されているところでございまして、こうした流れの中で、現在、医薬品医療機器総合機構におきまして、この審査をしているところでございます。
 厚生労働省といたしましては、これらの試験成績に基づき申請された医薬品の品質、有効性及び安全性を適正に審査して、その承認の可否をその状況において判断していきたい、このように考えております。
○前田分科員
 とにかく高齢化が進んで、我が国の国民の健康状況も心配であります。美しい国もいいですけれども、健康な国をぜひつくっていただきたい。そして、戦後の薬事法を盾に医薬品の権益保護にだけ頼る、そうした健康・栄養政策はいかがなものかと私は思います。ですから、きちんとした法整備の環境を整えていただきたい、これをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。