過去最悪のペースで被害が出ている振り込め詐欺。全国の警察は10月を「撲滅強化推進月間」として、人海戦術による被害防止に取り組んでいる。年金振込日の15日は、「全国で被害を1円たりとも出さない」を目標に、現金自動出入機(ATM)の8割にあたる約8万1千カ所を、約5万6千人の警察官が警戒する大規模な態勢をとった。
大阪府警でもこの日、約2500人が約2千台のATMに張り付いた。大阪・難波の高島屋大阪店周辺では午前10時から、制服姿の警察官約20人が7カ所に分かれて警戒。三菱東京UFJ銀行の出張所では、2人の警察官がATMに向かう高齢女性らに「振り込め詐欺に気をつけてください」と呼びかけていた。
警察庁が10月を「月間」としたのは、ここ数年、頭打ちだった被害が再び急増したことが背景にある。「オレオレ詐欺」の手口が一気に広がって社会問題化したのは04年下半期。この年の被害額は約284億円に達して過去最悪の被害が生じた。様々な対策で翌年からは250億円超で推移してきたが、今年は8月末までで既に213億円。1日平均約63件、約8800万円と04年を上回るペースで被害が頻発している。オレオレ詐欺は前年同期比で1.3倍、社会保険事務所や自治体職員を装う還付金詐欺は3倍超という状況だ。
このため、警察庁は犯人グループの全体像を把握して一網打尽を狙う捜査手法から、被害防止を優先させる方針に転換した。