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【社説】

金融安定化策 世界が結束の再確認を

2008年10月15日

 米国が包括的な金融安定化策をまとめた。週明けの株式市場は急反発し、金融危機は最悪の時期を脱した気配もある。日米欧は保護競争に陥ることなく、協調体制を強化していかねばならない。

 先週末の先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)を受けて注目された株価は、ニューヨーク市場が史上最高の上げ幅で急反発し、東京市場も日経平均株価が前週末比で史上最高の上昇率を記録して、九四〇〇円台を回復した。

 為替相場も米欧の対応を好感して、ドルとユーロが買い戻され、円安ドル高・ユーロ高が進んだ。危機がらせん的に深刻化していく悪循環には一応、歯止めがかかった形だ。

 米国は先に成立した緊急経済安定化法で最大七千億ドル(約七十一兆円)の公的資金を用意したが、このうち二千五百億ドル(約二五・六兆円)を大手金融機関への資本注入に充てる。さらに、無利子預金について預金保護上限の撤廃なども盛り込んだ。

 米国が資本注入を決める一方、日本や欧州も金融対策を急いでいる。中川昭一財務相兼金融相は地銀への公的資金注入を可能にする金融機能強化法を復活させる方針を表明した。政府・日銀が保有する株式の売却を凍結し、株式空売りの情報開示も強化する。

 欧州はユーロ圏十五カ国の首脳が緊急会議を開き、公的資金による資本注入や銀行間取引の政府保証などで合意した。

 日米欧による慌ただしい動きは、いずれも政府による金融機関と金融市場の保護策だ。米欧当局は金融システムを守るために、政府と中央銀行が全面介入する以外にない、と腹を固めている。

 いまは「大恐慌にも匹敵する」といわれるほどの非常時である。政府の役割は決定的に重要だ。歴史的にも異例な政府介入は無策だった場合の損失に比べて、正当化できる。資本注入を訴えていたクルーグマン教授はノーベル経済学賞を受賞した。

 ただ、次々に示される新しい対策が保護競争にならないか、一抹の懸念は残る。他国を犠牲にして自国の利益を優先する行為があってはならない。預金保護をめぐって、英国とアイスランドの関係が険しくなった。米欧間でも緊張の目がないとはいえない。

 日本が緊急主要国首脳会議を開く構想も浮上している。金融市場が一段落した後は、各国があらためて結束と共同行動の原則を確認すべき局面ではないか。

 

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