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【主張】大リーグ流出防止 日米間の協定締結を急げ
日本プロ野球組織(NPB)はドラフト指名を拒否したアマチュア選手が海外のプロ球団でプレーしたあと、日本に戻ってきた場合は一定期間、NPBの球団と契約できないことを決めた。大学・社会人は2年間、高校生は3年間凍結される。
社会人野球・新日本石油ENEOSの田沢純一投手がドラフト指名を拒否して、米大リーグ挑戦の意向を表明したことに対する対抗策として打ち出したもので、アマ選手の海外流出に歯止めをかけるのが狙いだ。
しかし、野球選手がどの国でプレーを希望しようと自由である。スポーツマンがトップレベルの舞台で自らの力が通用するか果敢にチャレンジしようとするのは当然で、いかなる人、組織であっても妨げることはできない。
今後、田沢投手の後を追う選手が続くだろう。2年後には、スター候補の斎藤佑樹投手(早大)がドラフトを迎える。
求められているのは、内向きなメジャー流出防止策ではなく、アマ選手獲得をめぐる日米協定ではないか。早急に確かなルールをつくり、それぞれの球界を発展させる道を探るべきだ。
田沢投手がメジャー挑戦の意向を明らかにした際、日本側から「ドラフト対象選手にはドラフト会議まで接触しないことになっている」との声があがり、「一部の大リーグ球団によって慣行が破られようとしているのは誠に遺憾」という声明が出された。
だが、ルール違反として米側を非難するには根拠が弱い。現在の取り決めは「口約束」にすぎないからだ。
危機感を募らせるのは分かる。日米間に不平等感があるのも事実だ。日本側が新人を獲得するにはドラフト会議で交渉権を得なければならない。待遇的にも「契約金1億円プラス出来高、年俸1500万円」と上限が決められている。これに対し、米国球団は日本人選手との交渉、金銭に制限がなく、スカウト活動も自由だ。
だからこそ、日米間のルールづくりを急がなくてはならない。米国側が交渉の席に着くよう、ここはメジャー通で知られ、パイプを持つ前駐米大使の加藤良三コミッショナーの出番である。
日米野球界が共存共栄していくために、コミッショナーが強力なリーダーシップを発揮するよう期待したい。