ターニングポイントとは

 現在活躍している理学・作業療法士、教職員、研究者の方々へのインタビューです。
 今までの医療(教員)人生での、転換期・ターニングポイントについて語ってもらいます。
 さらに、学生時代の経験を織り交ぜながら、 勉強に励んでいる学生さんに向け、熱いメッセージやアドバイスを伝授してもらいます。

ターニングポイント

アメリカでPTに必要なスキル(全5回) 第1回

2008/07/16
杉原 弘康

アメリカでPTに必要なスキル 第1回

みなさん、こんにちは。今日より、このコラムを全5回(隔週)にわたって連載させていただきます、杉原弘康です。

今年1月に住みなれたボストン市のリハビリ専門病院から、サンフランシスコ市の急性期(三次救急)病院に職場を変え、今日に至っています。よろしくお願いします。

写真は現在の職場の病院にある、「リハビリテーション・パーク(庭園)」です。
ここでは、PTは砂浜、じゃり道や急坂を含んだいろいろ場所を想定しての実用的な歩行訓練ができるので、とても助かっています。

また、OTはガーデニング等を使っての治療に使っています。
これらの写真の他にも、実際の理学療法の様子などお見せしたかったのですが、こちらは個人の写真にとてもうるさいので(肖像権の問題)今回は患者さんがいない時の写真に限らせて頂きました。

それでは早速、アメリカでPTに必要なスキルを5つ挙げてみましょう。

(1)臨床スキル
(2)コミュニケーション・交渉スキル
(3)文章(作成)スキル
(4)マネージメントスキルとビジネススキル
(5)適応力(柔軟性)

これらはアメリカでPTとしてサバイバルするための大事なキーワードです。
連載コラムの第1回となる今日は、臨床スキルについてお話しましょう。

(1)臨床スキル

アメリカの理学療法は、専門化がすすんでいます。
役割の分担をはっきりさせて、なるべく短い治療期間で、できるだけ大きな治療成果を上げるためです。

おもな専門分野には、おなじみの筋骨系(Orthopedic)、神経系(Neurology)、心肺系(Cardiopulmonary)から、最近では女性系(産婦人科を含む:Women's Health)が含まれます。

アメリカの理学療法では、スポーツ外傷からHIV感染まで様々な疾病を持った患者さんを治療します。幅広い医学知識が求められ、その中には仮病の見抜き方(!?)まで含まれています。

理学療法でいう「仮病」の主なものは、患者さんが本当は痛くないのに痛いと言うとか、本当は動ける(歩ける)のに動けない(歩けない)と言うことです。

例えば腰痛の治療ではワデルサイン(Waddell's Signs) というテストを使います。
このテストは簡単にいうと、腰痛が痛くなるはずのないことをして「痛い」と言えば、もしかして仮病(?)...となるわけです。こちらでは、たまにこういった実に困った患者さんも見かけます。

最近話題の臨床スキルには、徒手療法(Manual Therapy)、ロコモータートレーニングや、めまい・平衡器官のリハビリ(vestibular rehabilitation)などがあります。

また、これは日本でも同じだと思いますが、入院急性期、入院リハビリや外来のそれぞれで中心になる臨床スキルは、全く異なります。

入院病棟では歩行訓練、外来では運動療法(処方)が重要視されます。
アメリカの理学療法は、患者さんが生きていくのに必要な様々な「動き(動くこと)」についての診断・治療をする専門家として生き残りをかけているのです。

また、アメリカの理学療法は、「とにかく早く治療結果を出す」ということを重視しています。この「スピード感」は、アメリカの理学療法の特徴です。
われわれPTは、患者さんが「とにかく早く歩ける・動けるようになる」ことに必死です。

例えば、私は、今勤めているサンフランシスコ市の急性期(手術後)病棟では、理学療法を1~3日で終えて退院してもらうのを目標にしています。
また、私は前の職場のボストン市のリハビリ専門病院では2~5週間、また同じ病院での外来理学療法で3~5週間(2回/週)くらいで、理学療法を終了してもらうようにしていました。

では早く治療結果を出すために、どんなスキルが効果的なのでしょうか。
マニュアルセラピー(Thrust technique など)は効果が早いとされていて、研究がすすんできています。
また、患者さんが空いた時間に自分で簡単な理学療法ができれば回復は早まるでしょうし、治療のための知恵をみんなで出し合うことは大切で「3人集まれば文殊の知恵」です。

このように、「患者教育スキル」と「患者紹介スキル」(どの専門職に紹介(Referral) するか)は、アメリカで早く治療結果を出すためのキーワードです。
この辺りのことは、次回の「コミュニケーション・交渉スキル」に大きく関わってきます。
 

 

 


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