ターニングポイントとは
現在活躍している理学・作業療法士、教職員、研究者の方々へのインタビューです。
今までの医療(教員)人生での、転換期・ターニングポイントについて語ってもらいます。
さらに、学生時代の経験を織り交ぜながら、 勉強に励んでいる学生さんに向け、熱いメッセージやアドバイスを伝授してもらいます。
ターニングポイント
アメリカでPTに必要なスキル(全5回) 第2回
2008/08/04
杉原 弘康
アメリカでPTに必要なスキル 第2回
第2回の今回は、「コミュニケーションスキル・交渉力」の話です。
アメリカで働いていく上で、「コミュニケーション」は多くの日本人にとって大きな関門だとと思います。
私自身、もうすぐアメリカに来てもうすぐ7年経つのですが今だに悪戦苦闘させられることがあります。
コミュニケーションと一言で言っても、それにはいろいろなのトピックを含んでいます。
医療英語や日常英会話のことはもちろんなのですが、今日はこれらとは少しちがった視点の「コミュニケーション」についてお話しします。
英会話に関しては、アメリカでPTとして働くためにネイティブなみの発音で流暢にしゃべることがそれほど重要だとは感じません。(そうであればカッコいいことは勿論なのですが。)
多くのアメリカ人が、いろいろな国の言葉を母国語としていて特有のアクセントを持っていることも多いので、こちらの発音に訛(なまり)があっても気にしません。
それよりも、間違いなく必要とされるのは、「分かりやすく」そして、「伝わる」ということです。
声のトーン(強弱)、身振り手振り、顔の表情、そして言葉を同時に使ってとにかく相手に伝える、分かってもらうことが、コミュニケーションの秘訣です。
アメリカで患者さんとの実際のコミュニケーションでとても大切なのは、これから行う治療や手順、効果(と副作用)を「説明」すること、患者さんが「理解」して、「同意」していることを確認することです。
この一連の手順をアメリカの患者さんは「親切で丁寧」と感じるようです。
実際こうすることで、患者さんの「信頼」と「やる気(Motivation)」が変わってきます。
[やる気」が変わると、「結果」が変わってくるわけです。
患者さん自身が理学療法の効果とその手順を知ることは、治療効果を上げるための必要条件です。
また、「交渉力」はコミュニケーションスキルの大きな一部分だと感じます。
PTがケースマネジャーと協力して、入院期間延長や特別な器具の保険適応を医療保険会社に対して交渉することもありますし、また、患者さんに少しでも早く回復してもらうために、自分とは違う分野のエキスパートのPTとの連携が必要なことがあります。
医師、OT、看護師などの他職種の方々の協力は常に必要です。
多方面の方々の様々な協力を得るためには交渉力が勝負です。
私の尊敬しているPTのメアリー先生の「交渉力」にはいつも感心します。
彼女の交渉テクニックは、あくまでも相手の具体的なメリットをきちんと説明すること、淡々とシンプルに説明していること、それと「私が( I )」とか「あなたが(You)」という言い方を極力避けて、そのかわりに「私たちは(We)」と話を進めていくことです。
このようなことに気をつけることによって、お互いが感情的になって交渉がもつれることを防ぐことができるようです。
先日、私もこの交渉テクニックで「手」を専門としているエキスパートPTと協力してある患者さんの理学療法をスムーズに行うことができました。
そして、何よりも大切なのは「ハート」(こころ)でしょう。
こちらが「応援団」であることが伝わっていること。
これは言葉や国境の壁を確実にこえていきます。