2008年10月11日(土曜日)
【理科】 理科離れについて
ときどきなにかの弾みで、「理科離れ」の話題になる。昔に比べると、日本の子供たちが、理科に興味を持っていない、だから、将来の「技術大国日本」が危ぶまれる、というストーリィだ。僕は、これは事実だと思う。今の子供たちは、明らかに理系よりも文系志向が強い。でもそれは、技術が発展する時代に生きてきた昔の子供たちと、技術が成熟してしまった今の子供たちの差だろう。
しかし、教育が悪い、という意見を耳にする。実験を見せたりして、好奇心を持たせるような楽しい理科の授業をすることが対策として叫ばれている。これには、僕はあまり感心しない。
そういう問題よりも、今の大人たちが理系に対して持っている偏見の方が、子供たちに与える影響は大きいだろう。算数や理科ができたって社会では役に立たない。そんな小難しいことを考えてどうするのだ? 政治家も社長も、偉い人はみんな文系じゃないか。社会を支配しているのは文系の人間なのだ。理系はみんなオタクで、わけのわからない人間ばかりだ。理系は人間味がない。理系は人情がわからない。そういった目で見ているから、それが子供に伝わる。
また、技術者が大儲けをしたという話もあまり聞かない。「手に職があれば食いっぱぐれない」くらいがせいぜいのアドバンテージか。海外では、理系出身者が国の支配層に大勢いるのに、日本では少ない。算数や理科の勉強ができても、学校の先生になれるかどうか。研究に金を使う企業が少ないから、日本では才能を活かして食べていく道がない。
強い言葉を使えば、理系は日本では「迫害」されている。だから、子供たちが理科離れするのもしかたがない。これは、今に始まったことではなく、既に大人になっている若者たちは「技術離れ」の年代だ。
小難しいことを考えて新しい技術を開発するよりも、株や証券を売ったり買ったりする方が数段儲かる。儲ける奴が偉いのだから、社会を支配するのは当然だ。そういう理屈なんだろうな、とは思う。理系の人間はこれらに対して、「まあ、どうでもいいけど」と考えているので反論はない。
そもそも、「日本の経済的発展が危ぶまれる」という理由でしか、理科離れを問題視できないあたりが、いかにも文系だ。