視力矯正が必要な子供が増加しているが、子供の視力について知らない親が少なくないようだ。視力が低下しているのに矯正しないままでいると、疲れやすくなったり、頭痛や肩こりが起こったりするなど、健康に影響を及ぼす可能性もある。目に負担をかけないためにも、目の状態にあった正しい視力矯正が必要だ。(平沢裕子)
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文部科学省は、裸眼視力1・0未満の近視を「視力の異常」とし、子供の視力を毎年調査している。昭和54年度には、裸眼視力1・0未満の小学生は17・9%、中学生は35・2%だったが、昨年度は小学生28・1%、中学生51・2%と約1・5倍に増加。黒板の字が見えにくいといわれる0・7未満も、小学生は8・4%から17・5%、中学生は25・5%から37・9%と増えており、こうした子供は視力矯正が必要といえる。
近視は、遺伝や環境が原因で起こると考えられているが、30年前に比べ子供の近視が増えているのは、環境の影響が大きいといえる。小児眼科が専門の西葛西井上眼科こどもクリニック(東京都江戸川区)の勝海修所長は「30年前にはパソコンや携帯電話、ゲーム機は子供の身近になかったが、今は日常的に接しており、大人以上に目を酷使している可能性が高い」と、IT機器の普及が子供の近視増加の一因と指摘する。
学校で行う視力検査で裸眼視力が1・0未満の場合、学校から保護者に通知がいくが、勝海所長は「眼科医の私自身、自分の子供の視力低下に気づかなかった。学校からの通知を見て初めて、子供の視力低下を知る保護者は少なくないのでは」と話す。
子供の視力低下が分かっても、すぐに眼鏡などで視力矯正を行うことには抵抗のある人もいる。背景には、誤った知識が広まっていることがある。例えば、「小中学生なら一度視力が落ちても、また回復する」「視力矯正をすると余計に目が悪くなる」「眼鏡をかけたりかけなかったりすると、さらに視力が低下する」と思っている人もいるのではないだろうか。
勝海所長は「これらは医学的にはいずれも根拠のないこと。体調によって多少の視力の変動はあっても、近視が劇的に回復することはほとんどない。また、正しく視力矯正ができていれば、それによって視力が落ちることはなく、眼鏡をかけたりかけなかったりすることで、視力が悪くなることもない。むしろ、視力矯正のタイミングが遅れることで、子供の目の負担が増える方が問題」という。
学校の検査は1年に1回のため、次の検査までに視力が落ち視力矯正が必要になっているケースも。家の中や外出時の子供のしぐさや様子を見ることで、目の状態がある程度は分かるので、一度チェックしてみるといいだろう。
一般的に小学校高学年以上では、両目で見たときの視力が0・7以下であれば、視力矯正をした方がいいといわれる。両目で0・7以上あっても、黒板が見えにくかったり、スポーツのときにボールが見えにくいなど、子供自身が不便と感じている場合は、やはり視力矯正を考えた方がいい。
視力矯正には、眼鏡とコンタクトレンズ(CL)があり、それぞれの利点、欠点を理解した上で選ぶ必要がある。とくに女子の場合、外見上の理由から小学生でもCLを望む子がいるが、安易な利用は禁物だ。
勝海所長は「私自身はCL使用の年齢目安を12歳からとしているが、最終的には子供の成熟度を見極め処方している。見えにくいなどの症状は近視だけが原因とは限らず、他の病気が隠れていることもあるので、異常に気づいたら早めに眼科医の診断を受けてほしい」と話している。
◇
■子供の目の状態のチェックポイント
【屋内】
(1)よく目を細める、目つきが悪くなった
(2)テレビやパソコンに近づいて見ている
(3)勉強や読書などに根気がなく飽きっぽい
(4)物を見るときに顔の左右どちらかを前に出して見る
(5)体の左右どちらかだけ、よくどこかにぶつける
【屋外】
(6)信号の道路標識がきちんと見えているか
(7)駅構内の表示が読めているか
(8)車に乗ったときに前の車のナンバープレートが読めるか
(勝海修所長の話を元に作成)
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