和久井キャスター)
10年前、病に倒れハム工場をたたんだ職人が
かつての常連客の声に応えて10年ぶりにハムを作りを再開ました。
夢を追い続ける84歳のハム職人。
その思いを取材しました。
(VTR)
【栗山天満宮祭】
先月、栗山町で開かれた秋まつり。
(水野さん)
「美味しいよ〜、全部手作りで私が作っている」
(客)
「うまい!」
(水野さん)
「うまいですよ、防腐剤入ってないからね」
(子供)
「美味しい〜!」
(水野さん)
「美味しいしょ」
水野友一さん84歳。
この道20年以上のハム職人です。
露店に出したハムはロースとばら肉の2種類。
防腐剤など添加物は入っていません。
【くりやまハム工房】
水野さんのハム工房は栗山町内にあります。
ことしの夏、自宅の車庫を改造して作りました。
(水野さん)
「全部手作りでスクラップになるの物をもらってきて自分で改造して燻煙庫に改造した」
ハムはすべて手作り。
作れる量も限られています。
(水野さん)
「手作りなので感触で判断するしかない」
“おいしくなれよ”そんな思いを込めながら
水野さんはいつも仕込みをします。
そして燻煙ー。
(水野さん)
「燃えないように消えないようにやるのが難しい。
これは美味しいと言われる瞬間が何にも変えられない」
水野さんは37歳の時に栗山で養豚を始めました。
肉へのこだわりは人一倍で、60歳の時、この豚肉を活かそうと岩見沢にハム工場を作りました。
工場は軌道に乗り、1日300個以上のハムが全国へと発送されました。
しかし…。
(水野さん)
「変な物があるから入院して詳しく診てもらったらいいと北大へ。
退院する時に病名を聞いたところ診断書に前立腺がんと書いてあ ってがんとわかった」
(妻・房子さん)
「検査室から出てきたら(医師に)肩を叩かれてもう2年しかもたないと言われた」
ガンと宣告された水野さんは家族と相談して工場をたたむことを決めました。
74歳でした。
ハム作りの一線から退き治療に専念する水野さんを支えたのが
常連客の“どうしてもまた食べたい!”という言葉でした。
(水野さん)
「あの時のハムは素晴らしく美味しかった、また食べたい、
でももうだめだよねと。それならまたやってみようと」
【工房・思い出の品】
こうして水野さんは今年、10年ぶりにハム作りを再開しました。
工房にはかつて岩見沢の工場で使っていた道具がありました。
毎日握った包丁。
そして「ベーコン釘」。肉を吊り下げる道具です。
(水野さん)
「若い時の気分になる、これ持ったら。持つ前はさぁできるかなと思うけど、これ持ったらやらんにゃならんと思う。私に(ハム作りを)やれという意味で残ってたのかもしれない」
肉の燻煙を始めて4時間。
ようやくハムが出来上がりました。
(水野さん)
「こういうつやと色を出すためにここにつきっきりでいる。これは最高立派だと思う」
この日、水野さんがハム作りを再開したと聞いた
かつての常連客がハムを買いにやってきました。
(客)
「美味しいし、日持ちは難しいが家族が集まった時に出すといい」
今月初め、水野さんは岩見沢に向かっていました。
(水野さん)
「ぜひ待ってるよと言われた。昔の人がいるから今日がある」
かつての常連客に再びハム作りを始めたことを知らせるためです。
(水野さんとやりとり)
「お蔭様でハム工房できたからそのうち一回見に来て下さい」
「奥さんと二人三脚でやってるの見て、体壊さなきゃいいなと思ってた。
「本当に体壊れちゃったもんね」
「不眠不休で働いてた、あの時は。安心したこれで」
「90歳まで頑張るから。あと6年ある」
(水野さん)
「こんにちは〜」
由仁町にある木工所です。
水野さんはハム作りに欠かせない「おがくず」をここで分けてもらっています。
(水野さん)
「桜がすごくいいので昔から使っている」
(岩崎芳吉さん)
「素晴らしい年輪を重ねて一線に立って頑張っているのは栗山の誇り」
(カンカン・トンカチの音)
この日、水野さんに思いがけないプレゼントがありました。
木工所の岩崎さんがハム工房の看板を作ってくれたのです。
(岩崎さん)
「水野さんの年輪と同じ位の年輪の木、奥さんと長生きして
水野さんの技術を若い人に受け継いでもらうことを願う」
(水野さん)
「(看板を)触るといいハム作れよと伝わってくる。
これからもうひと踏ん張りやれよと教えられたような気がする」
84歳の現役ハム職人、水野友一さん。
伝統の味とともに、いま第2の人生を歩み始めています。
END
和久井キャスター)
放送前にハムを頂いたのですが、とても美味しかったです。
水野さんの夢は自分が作ったハムを大勢の人に美味しいと喜んでもらうことだそうです。
今後は、ハムの種類を増やしていきたいと話しているそうです。
どうぞこれからもお元気で私たちに美味しいハムを作ってください。
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