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2008年10月15日

◎歩きたばこ自粛協定 「点」から「面」へ広げる努力を

 金沢市と長町武家屋敷地区が結んだ歩けるまちづくり協定に初めて盛り込まれた歩きた ばこの自粛は、城下町の風情を残しているまちなかをより魅力的な生活空間にしていくために必要な措置である。歩きたばこを見過ごせば吸い殻のポイ捨てで美観を損なう恐れがあるだけでなく、喫煙しない住民らに不快感を抱かせてしまうだろう。まちのイメージダウンを招きかねない迷惑行為を追放する動きを点から面へ広げていきたい。

 北陸新幹線開業に向け、「二〇一四年」対策の必要性が指摘されている。歩きたばこの 規制は、金沢に足を運んでくれた観光客にまちの魅力を存分に味わってもらう工夫にもなり、これも「二〇一四年」対策の一環と言えよう。一定間隔ごとに喫煙スペースを設けるなどすれば、喫煙者の理解も得やすいはずである。

 長町では、後を絶たない吸い殻のポイ捨てを防ぎたいという住民側の発案で、歩きたば この自粛が協定に盛り込まれることになったという。こうした住民の意気込みは大いに評価できるものの、その一方で、市が規制に関して受け身であるように見えるのがいささか気掛かりだ。

 長町以外にも、たとえば、三茶屋街や兼六園、金沢城公園、金沢駅などの周辺は「城下 町の顔」と言える地区だ。スピード感をもって規制の網を拡大するため、市にも主体的な努力を求めておきたい。

 〇二年に東京都千代田区が歩きたばこを禁止する罰則付きの条例を設けて以来、規制の 動きは全国に波及している。千代田区にならって違反者に罰金を科している自治体も多く、警察OBらを登用してパトロールを実施しているところもある。

 これに対して、長町の場合はあくまでも協定に基づく自粛に過ぎないため、強制力はな く、実効性という点で疑問符を付けざるを得ない。もちろん、モラルに訴えて歩きたばこがなくなればそれに越したことはないのだが、もし、協定で思い通りの成果が得られなければ、もう一歩踏み込んで、条例化して規制を強化することも検討してほしい。

◎金融市場の安定 米の資本注入が大前提

 世界同時株安に一応の歯止めがかかった。G7(先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議 )が金融機関への資本注入を盛り込んだ行動計画を示し、市場に安心感が広がった。イギリスやドイツ、フランスなど欧州主要国が金融機関への公的資金の投入を相次ぎ表明し、金融危機の震源地である米国でも資本注入に向け大きくカジが切られた意味は大きい。

 ただ、米国の注入額は今のところドイツ一国の半分にも及ばず、満足しうる水準とはい えない。金融市場の安定には、十分な額の資本注入が大前提であることを改めて強調しておきたい。

 G7では、日米欧が「金融危機回避に断固たる行動を取り、あらゆる手段を活用する」 とした行動計画を発表した。同時に、欧州の主要国が一斉に資本注入に動き、米国もこれに続いた。行動計画を単なるアドバルーンに終わらせず、実際に行動に移した効果は絶大だった。

 日銀も十九営業日連続で潤沢な資金供給を行ったほか、日本政府は政府保有株売却の一 時凍結などを柱とした金融安定化策を発表するなどして米欧を支援した。日米欧の適切な共同行動が金融危機を瀬戸際で食い止める原動力になったのは疑いない。

 米政府は、金融危機対策として、金融安定化法に基づく約七十兆円の公的資金のうち、 二十五兆円程度をゴールドマン・サックス、JPモルガン、バンク・オブ・アメリカなどに注入する。JPモルガンに対し、三菱UFJフィナンシャル・グループが予定通り九千億円を出資すると発表したことも市場に好感された。

 金融危機がひとまず回避できたのは、私たちがこれまで強く主張してきた公的資金の注 入に尽きる。今後も市場の情勢を見ながら、第二、第三の資本注入をためらわぬことが重要である。

 日本は、国際通貨金融委員会(IMF委)で、経済危機に陥った新興国への緊急融資制 度創設を提案した。潤沢な外貨準備をIMFを通して融資する案は、金融市場の安定に役立つうえに、焦げ付く危険の少ない妙案といえよう。


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