大型スターぞろいの宙組にあっても、特に目を引く178センチの十輝いりす。その魅力は幼いころから鍛えられたダンス力で、スキのない、それでいて優雅な動きが長身の魅力をさらに増していることがある。もともとショーでの活躍が目立っていた十輝だが、最近は芝居での活躍も目立ってきた。今回の『Paradise Prince』では等身大の若者を生き生きと演じている。
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-『Paradise Prince』は宙組では珍しい現代もの。演じる上での苦労は?
「宙組はいままでコスチュームものが多かったですからね。今回は現代もので、携帯電話は出てくるし、セリフとかも『マジー』とかあるし、不思議な感じですね。年齢的にも大和さんや陽月が23、4歳で、自分も26、7歳の役。本当に等身大ですね。そういった意味では、普段の自分のままで、あまり役を作らなくてもいい。だから逆にどこまで作ればいいのか…あまり不自然に作りすぎてもいけないし、素の自分を見せすぎてもダメ。ただ今回は芝居の出来上がりが早くて、8月の終わりか9月の頭にはもうできていたんです。だから何度も練り直す時間がありましたね」
-今回はアニメスタジオが舞台。どのようにして役作りをしていった?
「私の役は落ちこぼれのアニメーターのジャック。時代に乗り遅れ、3DやCGがもてはやされる中、自分の所属するのは昔からある平面的な2Dの部署。時代遅れなんですよ。役作りはアニメDVDなどのメイキングに出てくるアニメーターさんを参考にしました。でも自分の演じるジャックはオタクっぽいというよりは、むしろ職人気質な人間なんです。コンピューターについていけず、昔は結構やり手の売れっ子だったのに、トラブルに巻き込まれたこともあって屈折したヤツなんです。私自身、昔のディズニーとかジブリの作品が好きなので、2Dの世界は合っていると思います」
-最近は本公演でも徐々に大きな役がつき始めた。自分自身で思うところはある?
「新人公演を卒業して本公演1本になって2年。自分にとってはこれからが大切だなと思っています。やはり新人公演のころって本役を見て勉強しなきゃいけなし、もちろん本公演は大切にしているんですけど、新人公演もあるし…みたいなところもあったのも事実です。でも本公演での役というのは、新人公演とは全く違う。お客様によいものを見せなきゃいけないんですが、自分自身テンションの低い日もある。でもその低い日でもある一定以上のどこまでできるか、そういったことだと思うんです」
-長身で動きも優雅。タカラヅカの男役にはまさにピッタリ。
「小学校の3年生のころからタカラヅカは見ていたし、ずっと入りたいとは思っていて、中学卒業のときに受験しました。当時から背は高かったんですが、ポニーテールにメガネ。2次試験のとき周りを見ると、みんなきれいだし、メガネの子なんて誰もいない。悪目立ちしてましたね〜(笑い)。受験スクールも通っていなかったので、合格してからがカルチャーショックの連続でした。バレエはやっていたけど、歌もお芝居も初めて。それからが大変でした」
-やはりいまでもダンスが大好き?
「バレエは3歳のころから、新体操も小学校2年のときからやっていて、ダンスは昔から好きですね。でも最近は芝居と歌の楽しさも感じるようになってきました。お稽古を沢山するのはもちろんですが、舞台の場数というのがスゴク自分を成長させてくれますね。ガラリと変わるものではありませんが、少しずつ自分の身に着いていくといった感じです」
-その舞台で影響を受けてきた人はいる?
「やはり宙組の歴代トップさんたちですね。私は組が誕生して2年目に初舞台だったんですが、以来ずっと宙組でやってきましたから。姿月(あさと)さんは一番最初のトップさんでしたので、そういう意味では存在は大きいですね。和央(ようか)さんはやはり一番長く勉強させていただいた方。私も影響を強く受けたと思います。貴城(けい)さんは短い間でしたが、それまでとは全然違うタイプでしたし、大和(悠河)さんはナチュラル。みなさんタイプが違うし、みなさん格好いいですよね」
後編は10月21日掲載
十輝いりすのプロフィール
◆十輝いりす(とき・いりす)◆ 7月15日生まれ、東京都出身。1999年「ノバ・ボサ・ノバ」で初舞台。大型男役として早くから注目を浴びる。新人公演で重要な役を次々とこなし、2006年バウワークショップ「Young bloods コスモ無限大」で主演。本公演での活躍も目覚しい。身長178センチ。愛称「まぁ」「まさこ」。