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海自特殊部隊員が15人と格闘訓練し死亡、暴行の疑いも

2008年10月14日

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写真海上自衛隊特別警備隊の訓練の光景=07年6月28日、広島・宮島沖地図   

 広島県江田島市の海上自衛隊第1術科学校で9月、特殊部隊「特別警備隊」の養成課程にいた3等海曹の男性(25)が、1人で順に15人を相手にする格闘訓練中に頭を強打し、約2週間後に死亡していたことがわかった。多人数を相手にした訓練は異例で、3等海曹が同課程を外れる直前に実施されていた。海自警務隊は、訓練名目の集団暴行にあたる可能性があるとみて、傷害致死や過失致死などの容疑で捜査している。

 海自呉地方総監部(広島県呉市)などによると、3等海曹は9月9日夕、第1術科学校の体育館であった「徒手格闘訓練」に参加した。教官2人の立ち会いのもとで、午後4時ごろから防具とグローブを着けて他の隊員15人を相手に1人につき50秒ずつ、パンチやけりで格闘。午後4時55分ごろ、14人目の相手のパンチがあごに当たって倒れ、意識不明になった。呉市内の病院に入院したが、頭蓋(ずがい)骨内の急性硬膜下血腫で25日に死亡した。

 海自などの説明では、3等海曹は愛媛県出身で高校卒業後に海自に入隊。潜水艦部隊から今年3月に特別警備隊養成の応用課程に入った。8月に本人から「辞めたい」との申し出があったため、9月11日に潜水艦部隊へ戻ることになり、今回の訓練が急きょ決まったという。

 3等海曹の遺族によると、海自幹部からは訓練について「(異動の)はなむけのつもりだった」と説明されたが、父親は「なぜ15人で殴る必要があったのか。海自は非を認めるべきだ」と反発している。

 2〜3人程度を相手にした徒手格闘訓練は広く行われているが、相手が15人というのは異例。今年7月にも、特別警備隊の養成課程をやめる直前だった隊員が16人と徒手格闘訓練をし、歯が折れるなどのけがをしたという。

 呉地方総監部は今回の隊員死亡を受けて部内に事故調査委員会を設け、原因究明にあたっている。杉本正彦・呉地方総監は13日、報道陣に対し「訓練中にこのような事故が起き、遺族に大変申し訳ない」と話した。訓練の内容などについては「事故調査委で原因を究明し、再発防止を期したい。警務隊の捜査にも全面協力する」と述べるにとどまった。

 呉地方総監部は3等海曹の入院や死亡は公表していたが、15人を相手にした訓練だったことは明らかにしていなかった。

     ◇

 〈海上自衛隊特別警備隊〉 99年3月に能登半島沖で発生した不審船事件を契機に、01年3月に創設された海自初の特殊部隊。70人規模で、隊員は海自内から選抜される。政府が海上保安庁だけでは対応が不可能と判断して海上警備行動を発令した場合に、武装して不審船に乗り込み、立ち入り検査や武装解除をする。英国の特殊空挺(くうてい)部隊(SAS)などを手本にし、養成課程では、必要な語学力や空中や海上からの強行突入術、狭く暗い場所での射撃術などを習得する。

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