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ノーベル賞:経済学賞にクルーグマン氏 貿易理論を刷新

 【ロンドン藤好陽太郎】スウェーデン王立科学アカデミーは13日、08年のノーベル経済学賞を米国人でプリンストン大学のポール・クルーグマン教授(55)に授与すると発表した。自由貿易とグローバル化による影響を説明し、貿易理論を刷新したことが授賞理由。

 伝統的な国際貿易論に代わり、生産規模が大きくなるほど効率が高まる「規模の経済」という概念を導入。大量生産する大手企業が、地域の中小企業に取って代わる構造を明かした。また、自由貿易とグローバル化によって、経済活動が活発な都市に人口が集中することなどを説明する「新経済地理学」の基礎を作った。

 クルーグマン氏はエール大卒、マサチューセッツ工科大で博士号を取得した。00年からプリンストン大学教授。82年から83年までレーガン政権の経済諮問委員を務めた。「借金依存体質」の米経済に警鐘を鳴らし、ブッシュ政権批判の急先鋒(せんぽう)としても知られる。著書には「恐慌の罠(わな)-なぜ政策を間違えつづけるのか」「グローバル経済を動かす愚かな人々」などがある。授賞式は12月10日にストックホルムで行われる。

 ◇日本にインフレ目標提言

 ノーベル経済学賞の授与が決まったポール・クルーグマン氏は、バブル崩壊後の1990年代にデフレ不況が長期間続いた日本経済を分析し、「インフレ目標」の導入による景気回復策を提示するなど日本の経済政策にも大きな影響を与えた。

 同氏は98年の論文で当時の日本経済について、名目金利がゼロ近くに低下し金融緩和が限界に達し、金利引き下げによる景気刺激が行えない「流動性の罠」に陥っていると指摘した。

 1929年からの世界恐慌時には公共事業による財政政策が処方せんとされたが、クルーグマン氏は90年代後半の日本では予算の制約や効率性などの問題点があるとの考えを示した。そのうえで、景気を回復させるため、日本銀行が一定の物価上昇率を達成する目標(インフレ目標)を掲げ、人々の間に「物価は上昇する」という「インフレ期待」を醸成すべきだと主張。デフレから脱却し物価が適度に上昇すれば、実質金利が低下し債務負担が軽減されると説明した。

 クルーグマン氏の理論は「インフレ目標」論者の理論的支柱となり、経済財政諮問会議の前民間メンバーの伊藤隆敏・東大教授など支持者も少なくない。【尾村洋介】

毎日新聞 2008年10月14日 東京夕刊

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