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新宿駅最後の小さなお店ベルク [著]井野朋也

[掲載]2008年10月5日

  • [評者]清野由美(ジャーナリスト)

■坪効率トップの個人店

 JR新宿駅東口改札から徒歩15秒の駅ビル地下。日本一の立地にあるビア&カフェの「ベルク」は、昨今では異例の店だ。セルフサービスのファストフード店だが、どこのチェーンにも属さない個人経営。コーヒー210円、生ビール315円という低料金にもかかわらず、メニューの種類は100以上。雑然とした賑(にぎ)わいに包まれた15坪の店は、朝から晩まで客がひっきりなしに訪れて、1日の売り上げが60万円と、館内ナンバーワンの坪効率を誇る。

 18年前、純喫茶だった店を両親から受け継いだ時、著者は業態を「薄利多売」に大きく転換した。それを成功に導いたのが、効率至上の対極にある、個人店ならではのこだわりだ。それを象徴するのが、本書で明かされる食材原価率。42.5%という数字は、業界的には「ほとんどクレイジー」な高さなのだという。

 その非効率を埋めて利益を上げるスタイルが、まさしく経営努力であり、そこが老若男女多くの客に愛される所以(ゆえん)である。が、そんな人気店は今、駅ビルのオーナーから立ち退きを迫られている最中。大手チェーンと違う経営論理を持つ個人商店は、効率的に管理できないからだ。しかし今、世界の大都市はビル街の足元に、低家賃で個人商店を導入する時代。個人商店はすなわち時代の最先端にある。効率至上で行きたいのなら、むしろ個人商店の価値にこそ気付くべきだ。

表紙画像

新宿駅最後の小さなお店ベルク 個人店が生き残るには? (P-Vine BOOks)

著者:井野朋也(ベルク店長)

出版社:ブルース・インターアクションズ   価格:¥ 1,680

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