全国各地で飲酒運転による悲惨な事故が相次ぎ、2007年9月に飲酒運転の罰則強化などを盛り込んだ改正道交法が施行された。その罰則強化から1年がすぎたが、県内では全体の取り締まり件数は減少しているにもかかわらず、県内18警察署管内で弘前署の検挙件数がなぜか増加している。
 県警によると、県全体で見た検挙件数は罰則強化前が930件、強化後が633件と約3割減少している。この状況の中で弘前署が14件、七戸署は25件、それぞれ強化前に比べて増加。県都を抱える青森署が強化前の半分以下になったことからも、弘前署の増加の突出ぶりがうかがえる。
 なぜ罰則強化された後でも、弘前署では検挙件数が増加したのだろうか。
 弘前署の沼山進交通第一課長と酒井徹交通官は、6月にタクシー運転手が起こした飲酒運転による当て逃げ事件(有罪判決済み)を例に挙げ、運転者自身の規範意識や飲酒運転に対する認識の甘さが根底にあるのでは―と指摘する。
 県全体では飲酒事故は週末の土日に集中。時間帯も明け方の午前4時―同8時までが増加傾向にある。さらに正午―同4時までの明るい時間帯でも発生があるなど、時間帯に関係なく飲酒事故は発生している。
 弘前署管内ではどうだろうか。同署によると、明け方から早朝にかけて飲酒運転の取り締まりを行うと、アルコールがまだ残った状態の運転者を摘発する場合があるという。さらに、同署管内の運転者のマナーの悪さは従来から他県の観光客などに指摘されることもあるといい、根底にはこうしたモラルの低さがあるのではとみられている。
 同署では、「少しの距離なら平気だろう」「事故を起こさないから大丈夫」などといった身勝手な運転者が多く、「失うものの大きさを認識していない」ことも飲酒運転がなくならない理由に挙げている。
 飲酒運転をすると免許停止または取り消しされ、事故を起こした場合は通常よりも甚大な被害に及ぶ場合が多く、会社や家族、友人の信頼を一瞬にして失ってしまう。その認識が足りないのでは―という見方だ。
 沼山課長は「飲酒運転者を排除し、みんなが安全に通行できるように取り締まっていく」と決意を新たにしている。酒井交通官も「これからも指導と取り締まり強化、広報活動など両面から厳しく対処していく」とする。
 データからは飲酒運転増加の明確な理由は分からないが、飲酒運転をしないというドライバーのモラルが今問われているのは間違いない。