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危機管理産業展2005での石原慎太郎都知事・佐々淳行氏特別インタビュー(後編)
国が行うべき4つの「防ぐ」行政とは?
元内閣官房内閣安全保障室長
佐々 淳行氏
佐々:
一方で、国がやらなければいけない、「防ぐ」という字のついたが4つの行政があります。
1番目は「防衛」。これは地方自治体、国民、企業では決してできません。
2番目に「防災」。大きな人命救助や避難誘導、緊急治療といった活動は、国もしくは地方自治体でないとできない。
3番目は「防疫」。鳥インフルエンザなどの疫病を防ぐことです。これも小さな自治体ではできませんし、民間にもできることではない。これも国が行う必要があります。
そして4番目に「防犯」があります。しかし、これは国民の協力や「自助」、「互助」がないとできないのです。
今、日本は警察官を大量増員がしています。それは日本の警察官1人が担当する国民の数が561人と多過ぎるからです。たぶん、イタリアは279人。世界で最も多いといわれているイギリスですら385人です。つまり、日本の警察官は先進国の2倍もの負担をしているわけです。
理由は簡単で、1980年から95年まで、ハイジャックや人質誘拐事件、デモや学園紛争などの大きな事件が何もない平和な時代だったからです。こうなると警察官を1人も増員しません。実際、過去15年間で警察官の増員は1名もなかったのです。
しかし、これから犯罪は増えます。「ハッカー」だとか「ストーカー」だとか、新しい犯罪がどんどん確実に増えてくるわけです。そうなると警察官は圧倒的に不足するんです。
このことに対して、今、石原都知事は、100人の都職員を警視庁に派遣して、街頭に立たせるというようなことも先駆的にやっていらっしゃる。また、交番を近代化、コンピューター化することにも取り組んでおられます。
「自助」「互助」「公助」、そして「防衛」「防災」「防疫」「防犯」―――これが危機管理のすべてなのです。
危機管理への先行投資を惜しむな!!
佐々:
危機管理については、そのための投資も重要です。個人では家族や自分の安全を守るために、子供のランドセルに発信機をつける、大きな音の出る警報器を持たせるといったことや、窓ガラスが割られないように家の窓を強化ガラスにするなどの投資があるでしょう。
また、自治体や国は、大きな火災が起こったときの消防飛行艇や、ヘリコプター消火、あるいはサリン事件などが起こったときに、化学・生物兵器、放射能を検知するCBR検知器なんかを用意する必要がある。
<炭疽菌・郵便物の仕分けをする作業員>
炭疽(たんそ)菌を警戒し、手袋を着けて郵便物の仕分けをする作業員(アメリカ・ニューヨーク)
(写真提供:時事通信。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うことは禁じられています)
米国で9・11のあと、ダシュル上院議員や大手マスコミの幹部の元に、炭そ菌の入った封筒がくるようになり、「Anthrax騒動」といって大騒ぎになりました。しかし、米国が炭そ菌で大騒ぎしているときに、日本はけろっとしていたんです。アフガニスタン、イラクの派兵に協力して、自衛隊を出した時期なのに、まったく警戒していなかった。
ところが、日本国内でもこれに倣った粉入りの封筒が3通が送られるという事件が起こった。1通目は小泉首相、2通目は中谷防衛庁長官、3通目は田中真紀子さんに送られたが、幸いどなたにも被害がなかった。
なぜかというと、警視庁のCBR班が敏速に対応したからです。彼らは1500万円するCBR検知器を購入していた。怪しい封筒が届けられたという連絡を受けて、官邸に直行し、検知器を使って15分以内にデンプンであることを明らかにして、処理した。彼らの行動を小泉総理も大いに褒めた。つまり、検知器への投資が大いに役に立ったんです。
CBR検知器は、ポータブルで、サリンも炭そ菌も感知するし、放射能も測定する。しかし、日本に導入されたのは警視庁の1セットだけだった。そういう大騒動が国内であったのに、国、自治体はもちろん、企業でも検知器を購入しようとしないんでしょうか。私は不思議でならないんです。
愛知万博は終わりましたが、これからも国内では、大きなイベントはたくさんあります。そのイベントの責任者というのは、少なくとも1500万円の安全に対する投資をしなさいといいたい。危機管理には常に先行投資が必要で、事が起きてからでは遅いんです。
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