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百日ぜき、大人に急増 2000年以降 予防接種受けても免疫力低下

[キーワード]小児科

[更新日時]2008年10月12日

 ■20歳以上、2%から40%に

 激しいせきが長期間続く百日ぜきにかかる大人が増えている。医師の間でも「子どもの病気」と誤解され、風邪やぜんそくと誤って診断される患者も少なくない。医療機関への受診が遅れ、感染に気付かないまま職場や学校で蔓延(まんえん)させてしまう例も目立つ。はしかと同様、予防接種を受けていても免疫力が低下してくるのが流行の一因とされ、厚生労働省の研究班と日本ワクチン学会は9月から、11-12歳でワクチンを追加接種する臨床試験を始めた。 (阪口由美)

 ◆乳児に死亡例
 百日ぜきは、短いせきが連続的に起こり、息を吸うときに「ヒュー」という音が出る典型的な発作が特徴。原因は百日ぜき菌で、せきやくしゃみの飛沫(ひまつ)で感染する。その感染力は、はしかに近く極めて強い。

 国立病院機構福岡病院(福岡市南区)の岡田賢司・小児科部長によると、重症化しやすい乳幼児では、せきの発作で息が吸えず、低酸素脳症などで死に至る例も年に数例報告されるという。このため、小児科医は生後3カ月以降なるべく早く予防接種を受けるよう呼び掛けている。

 1970年代半ばにワクチン接種後の死亡事故があり、接種率が落ちて罹患(りかん)率が上昇した時期もあったが、副作用の少ないワクチン開発以降は再び接種率が向上。現在の予防接種法による無料の定期予防接種では、ジフテリア、百日ぜき、破傷風の三種混合(DPT)ワクチンを使用し、生後3-12カ月に3回、その1年-1年半後に1回接種。計4回で十分な免疫がつくとされ、流行規模は縮小してきた。その数値に近年、異変が現れ出した。

 ◆データに異変

 国立感染症研究所(東京)によると、全国約3000の小児科定点医療機関から報告された今年の患者数は、9月21日までの集計で5000人を超す。比較可能な2000年以降の年間報告数を上回っている。4歳以下の患者は減少しているが、20歳以上の割合が激増。00年の2.2%から今年は40%近くとなり、百日ぜきは「大人の病気」と化した。

 この数値はあくまで小児科からの報告データ。岡田医師が「氷山の一角」と話すように、成人の患者はさらに多いとみられる。岡田医師が07年5月-08年2月、呼吸器内科も含め「長引くせき」で受診した成人を調べたところ、69人中52人が遺伝子診断や血液検査で陽性。高割合で感染が確認された。

 また、これらの患者が病院を訪れたのは、せきが出始めて平均約5週間後。すでに「回復期」で、他人に感染させた後だという。岡田医師は「大人は比較的軽症で終わるが、心配なのは、知らないまま感染源になって職場などで広がり、家族感染でワクチン未接種の赤ん坊が発病すること」と懸念する。

 ◆早期の治療を

 なぜ大人に流行するようになったのか。感染研などによると、ワクチンによる免疫力は年月とともに低下する。加えて「昔に比べて患者が減少したことで、菌に接して免疫力を高める『ブースター効果』を得る機会もなくなったことが主因」という。

 同様の現象が起きた米国では06年から、思春期・成人用の三種混合ワクチンを11-13歳時の二種混合ワクチンに替えて推奨。欧州でも1990年代後半から対策が講じられているという。

 国内でも11-12歳で接種する二種混合(DT)ワクチンを三種に切り替える臨床試験を開始した。岡田医師らは「早期に結論を出し、接種を始める必要がある」とし、成人用ワクチンの検討の必要性も訴える一方「症状がある場合は早めに診察を受け、マスクをつけるなど感染防止に努めてほしい」と話している。

【写真説明1】岡田賢司医師
【写真説明2】小児科定点約3000機関からの百日ぜき報告数
【写真説明3】百日ぜきの年別・年齢群別割合

=2008/10/12付 西日本新聞朝刊=

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