
海上自衛隊の特殊部隊「特別警備隊」の隊員を養成する第一術科学校(江田島市)の特別警備課程で九月、同課程を中途でやめ、潜水艦部隊への異動を控えた男性三等海曹(25)=愛媛県出身、死亡後二曹に昇進=が、一人で隊員十五人相手の格闘訓練をさせられ、頭を強打して約二週間後に死亡していたことが十二日、分かった。
七月にも別の隊員が異動直前の格闘訓練で隊員十六人の相手をさせられ、歯を折るなど負傷していたことも判明。
教官らは三曹の遺族に「(異動の)はなむけのつもりだった」と説明しており、同課程をやめる隊員に対し、訓練名目での集団暴行が常態化していた疑いがある。海自警務隊は傷害致死容疑などで教官や隊員らから詳しく事情を聴いている。
三曹の遺族は「訓練中の事故ではなく、脱落者の烙印を押し、制裁、見せしめの意味を込めた集団での体罰だ」と強く反発している。
関係者によると、九月九日午後、同学校のレスリング場で「徒手格闘」の訓練が行われ、三曹一人に対し、十五人の隊員が次々に交代しながら五十秒ずつ格闘した。
午後四時五十五分ごろ、三曹は十四人目の相手からあごにパンチを受け、意識不明に。江田島市内の病院に搬送後、呉市内の病院へ転送された。
意識が戻らず、九月二十五日に死亡。司法解剖の結果、死因は急性硬膜下血腫だった。
徒手格闘は自衛隊独自の格闘技で、頭や胴に防具を、拳にグローブを着け、パンチやけり、投げ技、絞め技などで闘う。
当時、二人いた教官の一人がレフェリー役で、レスリングマットの周囲を隊員らが囲み、倒れ込む三曹を起こして闘わせ続けたという。意識を失う直前の三曹は呼吸が乱れ、ガードが下がった状態でパンチを受けていたといい、頭部に繰り返し強い衝撃を受けていた可能性がある。
海自呉地方総監部は、事件当日と死亡翌日に「訓練中の事故」と広報したが、三曹が十五人の相手をしていたことなどは公表していなかった。
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