【釜山12日神屋由紀子】韓国東南部の浦項(ポハン)市は日本の町づくりを学ぼうと今月から毎週、福岡県内へ職員を派遣するユニークな研修制度を始めた。4泊5日の日程で、福岡市を拠点に北九州市にも足を延ばし、都市開発や環境政策を重点的に視察。来年末まで全職員の半数にあたる約1000人を送り込む計画だ。これほど大規模な自治体による派遣研修は珍しい。
浦項市は人口約51万人。鉄鋼大手ポスコ(旧浦項製鉄)の“城下町”として知られる。
8月末に朴承浩(パクスンホ)市長が日本出張で福岡市に立ち寄り「都市開発など学ぶ点が多い。全職員が一度は見るべきだ」と研修を発案。新潟県や広島県に友好都市はあるが、韓国に近い福岡市だと経費が抑えられ、環境政策で知られる北九州市も行きやすいと判断した。
宿泊用に博多区のマンションを借り、日本語のできる常駐職員を配置。毎週月曜日に福岡入りして金曜日に帰国する日程を組む。第1弾の18人が10月6日から10日まで滞在し、福岡市のシーサイド百道や苅田町の日産自動車九州工場、北九州市の紫川などを見て回った。参加した自治行政課の林鍾燮(イムジョンソプ)係長は「死んだ川と言われた紫川が市民の憩いの場に生まれ変わっていて感銘を受けた。浦項にも生活排水で汚れた内港があり、参考にしたい」と語った。
浦項市職員は2020人。1080人の派遣を見込んでおり、担当者は「日韓関係の改善にも役立てたい」と話す。
初回は視察先の自治体との交流はなかったが、今後はレクチャーの受講や交流も目指す。朴市長が9月、中国での国際会議で同席した吉田宏福岡市長に協力を要請。同市は「月1回程度のレクチャーを検討したい」(国際部)としている。
=2008/10/13付 西日本新聞朝刊=