セクハラの「難しさ」 その1

2008年06月18日 10:34

講師の仕事でいちばん多いのがDV。次がセクハラ。
昨年の雇用機会均等法の改定で、企業にセクハラ防止の措置義務が盛り込まれたことで、去年から少しずつ講座の依頼が増えてきている。

ただ、講師仲間で「いちばん難しい」と言われているのが、セクハラ。

DVはね、まぁ、わかりやすい。
「お隣のオクサン」を殴ると犯罪になるのと同様に、「自分の妻」を殴っても犯罪ですよ、ということなので。

でも、セクシュアルハラスメントの場合は、同じ行為をしても、相手の受け取り方によって、セクハラになったりならなかったりする。

DVが「相手が誰であれ、こういうことをしてはいけません」と明確なのに対し、セクハラはそういう明確な基準がないから、男性受講者から「何をしたらセクハラなのか教えてくれ」とわかりやすい答えを要求されたり、「モテるヤツだとオフィスラブで、オレがやるとセクハラというのは納得いかない」という不満が聞こえてきたりする。

セクハラには大まかに、2種類ある。

「対価型セクハラ」
地位や権力を利用して性的関係を強要したり、それを拒否した相手を解雇したり降格したり、あるいはそれを匂わせて相手に不利益を負わせるもの。

「環境型セクハラ」
性的な言動、あるい性別役割の強要により、働きづらい環境が作られるもの。


で、男性陣を混乱に陥れるのが、2つめの「環境型セクハラ」。

環境型セクハラは、さらに、

・視覚型・・・ポルノ雑誌を見る、からだをなめ回すように見る、等
・身体接触型・・・通りすがりにからだの一部を触る、等
・言動型・・・性的な発言や質問をする、性的なうわさを流す、等


と、3つに分類されるのだけれど、最後の「言動型」というのが難しいようなのだ。

アウトになりやすい例としては、

「きょうはセクシーだね」
「ちゃんと化粧をしてこい」

「○○ちゃん」
「おばさん」

「初体験はいつ?」
「彼氏はいるの?」
「結婚しないの?」
「子どもはまだ?」



男性へのセクハラについては別エントリーを立てるけれど、女性への「セクハラ発言」としてはこういうのが代表的。

でも、こうした「セクハラ発言」をしたからといって、それが即「環境型セクハラ」になるかというと、そうではない。

相手にもよるし、状況にもよるし、頻度にもよる。

セクハラがなぜ人権侵害なのかというと、就労(あるいは就学)の環境をおびやかされるからである。働いて食べていく(あるいは、その準備段階としての勉強)という、QOL(Quality of Life:生活の質)に関わる問題にリンクする、「離れたくても容易に離れられない」ところで起こるから、セクハラは深刻な人権侵害なのである。

(続く)