医師不足など公立病院が抱える問題を考えるシンポジウム「地域医療の危機にどう向き合うか」が12日、有田市箕島の市文化福祉センターで開かれた。医師らでつくる「有田地方SSN研究シンポジウム実行委」と湯浅町教委が主催。約80人が訪れた。
同市立病院小児科の紀平省悟医長が「産科・小児科から全体に広がった医療崩壊の実態と、医療の未来」と題して基調講演。少子化で不採算化した小児科や訴訟リスクの高い産科の閉鎖が相次ぎ、公立病院への負担が増えたことに加え、研修医制度の変化で多くの大学が関連病院への医師派遣を中止・休止し、関連病院の「突然死」を招いたと説明した。
続いて、同病院の経営状況を報告。07年度決算見込みで1億2200万円の赤字を計上することで、「医療収益の5・6%で、十分解消可能」だと説明。「和歌山市内の医療圏にのみ込まれるか、有田地域の第2次医療圏を守るのか。市民の選択にかかっている」「病院経営への市民参加などを進めるべきだ」などと訴えた。
最後に、婦人会関係者らが加わり、パネリスト6人が勤務医の過重労働や医療費抑制政策の中での病院の生き残り策を議論した。参加者から「賢い患者になるにはどうすればいいか」という質問があり、「医療は人が人にすること。適切な医療でも期待通りの結果になるとは限らないことを理解してほしい」と答えた。【加藤明子】
毎日新聞 2008年10月13日 地方版