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【主張】北のテロ指定解除 約束破れば再指定せよ 拉致で日米連携の再確認を

2008.10.13 03:00
このニュースのトピックス主張

 北朝鮮が核申告の検証枠組みに同意したことを受けて、米政府は北に対するテロ支援国家指定を解除した。日本政府が慎重な判断を求めたにもかかわらず、内容よりも形の合意を優先する結果となったのはきわめて遺憾である。日米同盟や拉致問題に及ぼす影響も深く懸念される。

 米国務省が発表した合意によれば、北朝鮮は6月に提出した核計画申告に盛り込んだ全施設の立ち入りや試料採取を受け入れ、国際原子力機関(IAEA)にも「重要な諮問や支援」の役割が与えられた。しかし、申告されなかった施設の査察には「相互の同意」が前提と明記され、北に拒否権を与えたに等しい譲歩である。

 また、申告から除かれたウラン濃縮やシリアなどへの拡散行為の解明は事実上先送りされたほか、核完全廃棄に不可欠な核兵器製造・貯蔵施設、核爆弾の数量、核実験施設などの検証も明確でない。いずれも今後の検証体制に重大な禍根を残すのは確実である。

 指定解除後も米国は核実験や人権侵害などで多くの制裁を維持し、実質的影響はない。日本も独自の制裁を延長した。とはいえ、北が「敵視政策の象徴」としてきたテロ支援国リストから除かれる象徴的意味は大きく、その影響は拉致問題にも及ぶだろう。

 ≪瀬戸際外交に屈した米≫

 解除のタイミングやここに至る経過にも大きな問題があった。

 ブッシュ大統領は6月、指定解除方針を議会に伝えたが、「北が包括的検証に応じない」との理由で解除を遅らせてきた。反発した北は夏以降、核無能力化作業停止、IAEA要員排除、プルトニウム再抽出などの動きをエスカレートさせ、核実験準備ともとれる行動も見せた。

 北の挑発に直面する度に譲歩を重ね、最後は指定解除に追い込まれた6カ国協議のヒル米首席代表の責任は重大だろう。「包括的で強力な検証」を掲げた大統領がいかにも北の瀬戸際外交に屈した印象を強めたのは否定できず、マケイン共和党大統領候補など米国内でも強い批判が出ている。

 だが、日本政府の対応にも問題はなかったか。伝えられた合意にこれだけの詰めの甘さがあり、中曽根弘文外相がライス国務長官に「まだ確認すべき点がある」と慎重な判断を求めたのは当然だ。訪米した中川昭一財務・金融担当相も「認められない」との意向を伝えはした。

 それでも大統領が最終判断を下す前に、こうした重大な懸念を麻生太郎首相自らがきちんと伝えてほしかった。拉致問題への影響も考えれば、この段階の解除が日米同盟の根幹を揺るがし、将来に問題を残しかねないからだ。

 ≪首相自らが前面に立て≫

 国民も「プロの政治家」を自任する首相に期待したはずだ。結果として日本の意向を尊重しない同盟の現状を見せつけてしまった首相への失望感は小さくない。

 指定解除は拉致被害者家族会にも深い衝撃と失望を与えた。飯塚繁雄代表は「手の届かないところですべてが決まるむなしさを感じる」と語り、増元照明事務局長は「同盟国民の命を助ける協力をしない裏切り」と批判する。

 ブッシュ大統領は2年前、横田めぐみさんの母、早紀江さんと面会して、「拉致解決へ働きかけを強めていきたい」と約束した。この約束はどうなったのか。

 北がテロ支援国家に指定された1987年の大韓航空機爆破事件が示すように、拉致は国際テロ工作の一環として行われた国家犯罪である。

 家族会は何度も訪米して「拉致は現在進行中の国家テロ」と訴え、テロ支援国家指定の理由に拉致が盛り込まれた。

 指定解除は家族会に対する背信行為でもある。麻生首相は「被害者全員を返すよう強く主張する」と家族会に約束した。飯塚代表は「大きなカードを失った分、日本政府にはそれに匹敵する政策をしてもらうしかない」という。

 米高官によれば、指定解除は暫定的で、北が約束を破れば再指定もあり得るという。検証手順は月内にも開かれる6カ国協議で最終確定をめざし、14日にワシントンで開かれる日米韓次官級協議でも最重要課題となる。

 日本政府はあくまで厳正かつ包括的な検証の実現を要求し、拉致問題解決についても日米の連携を改めて確認すべきである。

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