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社説2 中国は農村を改革できるか(10/13)

 中国共産党は12日、都市部に比べ発展が遅れている農村の振興を目指して新たな農村改革に踏み出す方針を決めた。重要会議である第17期中央委員会第3回全体会議(三中全会)で「農村改革推進に関する若干の重大問題に関する決定」と題した文書を採択した。

 文書の詳細は不明だが、新華社などによると三中全会は2020年の農民1人当たりの平均収入を今年の2倍にし、国全体の食糧安全保障を確保するとの目標を掲げた。

 そのため「動揺することなく農村改革を進める」と強調し、特に都市と農村の「二元構造」と呼ばれる現状を打破する必要性を強調した。

 中国では都市住民と農民を戸籍の上で区別したうえで、教育や社会保障、政治的な権利など様々な面で農民より都市住民を優遇している。これが深刻な経済格差や頻発する暴動など様々な社会問題の温床となっており、三中全会が「二元構造」の打破を打ち出したのは当然である。

 問われるのは実行だ。農民の権利を都市住民なみにするには、戸籍制度、選挙制度、さらには教育や医療など広範な制度改革が必要になる。早急に具体策をまとめ、実現していくべきである。

 共産党は1978年12月の第11期三中全会で改革・開放路線への歴史的な転換を決めた。以来ほぼ5年ごとに開く三中全会で経済運営の基本方針を定めてきた。改革・開放30周年にあたる今年の三中全会が農村改革を取り上げたのは、農村問題がきわめて重要になっていることの裏返しでもある。

 今回の三中全会は、中国の「食の安全」問題に世界的な関心が集中しているさなかに開かれた。会議は農業の持続的な発展と高付加価値化のためにも「農産品の品質と安全」を重視すると強調したが、具体策が明らかでないのは物足りない。

 米欧の金融危機についても論議し「柔軟なマクロ経済運営で国内の消費を刺激し経済を安定させる」方針を打ち出した。消費の活性化には7億人を超え、13億の総人口の5割以上を占める農民の収入増と農村の発展が欠かせない。外需主導の成長から内需主導への転換を占う意味でも農村改革の行方を注視したい。

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