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2008年10月13日

◎テロ指定解除 日本の対北朝鮮外交に転機か

 米政府は北朝鮮をテロ支援国家とみなした指定の解除に踏み切った。指定解除は北朝鮮 が核計画を六カ国協議に申告した見返りとして米政府が約束したことだったが、米側が厳しい検証方法を突きつけ、約束違反だと反発した北朝鮮が対抗措置として寧辺の核施設無能力化の中断などに走り、延期されていたものだ。

 日本の政府は拉致問題で進展がないまま指定解除しないよう米政府に求め続け、拉致問 題解決への動きがみられないとして北朝鮮に対する経済制裁をさらに半年間延長することを閣議決定した矢先である。日本の主張が入れられなかったのは任期切れを控えたブッシュ政権が交渉を壊したくなかったからだと思われる。

 米側は権力中枢にある金正日総書記について重病説や回復説などが乱れ飛ぶなか、ライ ス国務長官の「融和路線」を体現するヒル国務次官補(六カ国協議の米首席代表)が訪朝し、度重なる交渉を通じて気心が知れる間柄になった金桂冠外務次官らと会談し、検証を緩やかにすることによって北朝鮮が段階的に核放棄に向かうとの合意に達したようである。

 米政府の指定解除は日本の対北朝鮮外交にも影響が及ぶことになろう。それは対北外交 に転機が訪れることを意味する。要するにライス国務長官―ヒル国務次官補のラインが描く外交のシナリオに追従するのか、それとも日米同盟を維持しつつ、わが道を行くのかの板挟みになることが否定できないのだ。

 アフガニスタンにおける武装勢力タリバンの掃討がうまくいかず、米欧の当事者の間に タリバンと「対話」する路線転換論が生まれてきたとの報道がある。加えて、米国はイラクの後始末や金融危機への対処に手一杯で、来年一月の任期切れを控えてブッシュ政権はいわゆる死に体同然である。これらも指定解除の決断を促したと考えることができる。

 当面、日米同盟は堅持しなければならない。民主党の唱える軸足を国連中心に移すなど は非現実的だが、米国では政権交代という不確実性がある。日本の外交は力不足を克服しなければならなくなったのだ。

◎クマ大量出没の恐れ 人の被害ゼロを期したい

 二〇〇六年ほどではなさそうだが、今年は奥山のブナ、ミズナラ、コナラの実が不作で 、これらの実を餌にしているツキノワグマが食べ物を求めて人里へ大量に出没してくる恐れがある。富山県では九月中に注意情報を出して警戒を呼び掛けており、やや遅れて石川県も十月一日に注意情報を出した。

 富山県ではクマの出没情報が今月六日現在で二百八十三件に達しており、山へキノコ狩 りに出掛けた四人が襲われてけがをしている。民家へ入り込んできた例もある。石川県では同十日現在百五十七件で、幸い人が襲われたケースはない。

 北陸の人里に出没するクマは白山・奥美濃地域に生息するものだといわれる。それが東 西では新潟県から滋賀県まで、南北では長野、岐阜両県から石川県の宝達志水町や羽咋市の山間部でも姿や足跡などの痕跡が見られるようになった。広域的なクマの管理や、人的被害を皆無にする対策が必要になってきたのである。

 〇四年、クマによる人身被害が全国で多発したため、富山、石川両県も翌年から毎年、 ブナ、ミズナラ、コナラの実の付き方調査を実施するようになり、クマの動静を探る参考にしている。

 今年八月の調査によると、富山県では県西部の奥山で不作が目立つ。それによると、ブ ナは「凶作」、ミズナラは「凶作から不作」、コナラは「不作から並作」だそうだ。

 石川県のそれはブナが「凶作から大凶作」であり、ミズナラが「並作」でまあまあ、コ ナラが「凶作から並作」となっている。キノコもクマの餌だと知っておきたい。

 クマを人里へ近づけないために柿や栗などの収穫を早めに終え、クマが隠れる場所とな る茂みを刈り取ってなくしたい。山へ行かないのが安全なのだが、行かねばならない場合、人間の居場所をクマに知らせるために鈴を提げたり、携帯ラジオを鳴らしたり、車から降りるときはクラクションを必ず鳴らすことだ。猟友会のパトロールも効果がある。とにかく人身被害が起きないように警戒を強化したい。


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