2007/02/28(Wed)−前田 雄吉(まえだ ゆうきち)国会質問
予算委員会第7分科会 『ネットワークビジネスについて』
○前田分科員
 民主党の前田雄吉です。
 きょうは、ネットワークビジネスについて伺いたいと思います。
 世界ではもう標準なビジネスモデルでありますフランチャイズとこのネットワークビジネス、日本では、四十年の歴史の中で悲しい歴史があります。無知、無理解、誤解、偏見、勘違いの五段拍子の思い違いにさいなまれまして、非常にこれらの認識が十分ではない。
 経済産業省の前身であります通産省を白洲次郎氏がつくられましたとき、日本の経済を引っ張るリーディングインダストリーをきちんと守り立てる、保護、育成する、それが趣旨で経済産業省の前身である通産省ができたというふうに私は理解しております。ですから、大臣におかれましても、私のそうした趣旨に基づいての本日の質問をよくお聞きいただきたいと思います。
 まず初めに、私は毎年この時期に同じ質問をします。このネットワークビジネス、経済産業省としては、何兆円、何百万人の人が携わる産業と認識されていますでしょうか。
○松井政府参考人
 お答えいたします。
 今先生御指摘のネットワークビジネスは、特定商取引に関する法律におきまして、連鎖販売取引として定義されている取引形態を示すものと認識をしております。
 当省が昨年度実施いたしました調査によりますれば、連鎖販売取引を行う調査対象事業者の年間の総売り上げは約一兆一千億円でございます。それから、勧誘や購入を行う会員数は約二千二百万人という調査結果が出ております。
 ただ、この結果はすべての連鎖販売取引事業者を対象としたものではなくて、売り上げにつきましては、調査でデータが得られました二百八十八社の範囲で事業者の売り上げを合計したものでございます。また、会員数につきましても、回答が得られました九十社の会員数を単純に合計したものでございますので、いずれも正確な統計値でないことは御理解いただきたいというふうに考えております。
〔主査退席、西村(康)主査代理着席〕
○前田分科員
 今、例年の質問の回答より前進した回答をいただいたと私は思います。例年はWDSAの推計値を出されて、ホームページで、二百万人という推計値を答えられていましたけれども、私は、そうした実態をきちんとつかんでいただく努力をこれからも続けていただきたいというふうに思っております。
 私ども、会社の数からして、今の統計値、非常に正しい、そして、今言いました会社の数で換算しまして、六兆円、八百万人の産業であるというふうに思っております。
 こうしたネットワークビジネスでありますけれども、本当にごくわずかな心ない人たちがおりまして、法を遵守しない人たちがいる。それで、大多数のまじめに働く皆さんが苦労をしておられます。
 警察にお聞きしたいと思いますけれども、このネットワークビジネス、同産業への昨年の取り締まり状況を伺いたいと思います。
○片桐政府参考人
 お答え申し上げます。
 特定商取引法による連鎖販売取引について申し上げますと、昨年中、この連鎖販売取引そのものに係る特定商取法に違反する行為の検挙はございませんでした。
 ただ、カタログ販売とか洗剤販売を介在させまして連鎖販売取引の体裁をとりながら、実質的に無限連鎖講を開設、運営等をしていた事犯を二事件検挙いたしております。これらの事件で、合わせて約六千人から出捐金がございまして、総額は合計で約二十五億八千万円に上っているところでございます。
○前田分科員
 今お答えいただきましたように、直接の商取引法違反による取り締まりはなかった、しかし、六兆円、八百万人の数からして、そこの中のごく一部の本当に心ない人たちがいたという事実を確認させていただきました。
 それでは、先ほど流通審議官にお答えいただきました、昨年実施されました平成十七年度連鎖販売取引実態調査、この印象を伺いたいと思います。
 非公式で、省内の方がこのように申されておりました。若い人でトラブルが多く、これは問題のビジネスという認識を今までは持っていたんだが、この調査結果によると、年齢の比較的高い、しかも女性が多いので、良識を持った方が十分おられるということで、妙な気がした、変な気がしたという声を私は聞きました。
 経済産業省としてこの実態調査の印象をどのように持たれたか、お聞きしたいと思います。
○松井政府参考人
 お答えいたします。
 昨年度行いました実態調査によりますと、この調査によってデータが得られた範囲内におきましては、先生おっしゃるような印象でございまして、会員の約九割が女性でいらっしゃいます。かつ、それも四十代の会員が三割を占めているということでございました。
 一方、国民生活センターのPIO―NETのデータによりますると、連鎖販売取引に関する消費生活相談の約四割が二十代の方からのものでございます。ちなみに、十代の方が二%弱、三十代の方が一二%、四十代の方がやはり一一%ほど、五十代が一三%、六十代が一〇%、七十代が六%、このくらいの数字になっておりまして、連鎖販売取引につきましてはやはり若年層のトラブルが多く生じている、こういうふうに認識をしてございます。
○前田分科員
 今お答えいただきましたように、そういう若い人のトラブルが印象に残るということでございますけれども、実態は、多くの女性がみえて、また年齢の高い層が中心になられているビジネスだというお答えでした。
 私は、日本のこのネットワークビジネスも世界標準のものであるべきであるというふうに思っております。というのは、きちんとした認識を持たれる、持つべきであるというふうに思っているんですね。
 欧州委員会に対して、ニール・オッフェンが事務局長を務めております訪問販売協会世界連盟、WFDSA、この報告によりますと、販売員のタイプを七類型に分けて分析しております。
 ここに報告書がありますので少し申し上げますと、まず一番目に、卸売価格またはディスカウント価格の購入者、つまり、安く買えるということでここに加わっているという方たちですね。二番目に、短期、特定の目的を持つ販売員、つまり、クリスマスのときだけお金が要るのでやられるという方とか、そういう方ですね。三番目に、生活の質の向上を目指す販売員、これは、奥さん方とか、御主人の収入プラスアルファを考えておられる方たち。四番目に、キャリアを目指す販売員、これは、がむしゃらにこのビジネスで仕事をしたいということで、アメリカでは全体の六%にしかすぎないですけれども、こういう方たち。それから五番目に、社会的接触を求める販売員。六番目に、認知を求める販売員。それから七番目に、商品を愛用する販売員ですね。こうした七類型に分けての分析があります。
 私は、ここぐらいまできちんと去年の実態調査をもっとしっかりして、どういう人たちがこの業に携わっているかという分析を政府の方でもさらに調査されるべきと考えますけれども、いかがでございましょうか。
○松井政府参考人
 今先生御指摘でございました訪問販売協会世界連盟、WFDSAの報告につきましては、当方存じておりませんので、今先生の御指摘のような類型についてどのように考えたらよいか、現時点においてはお答えをすることができません。
 ただし、特商法につきましては、常に問題取引の実態を把握して制度の整備などに従来から努めてきているところでございますので、この作業の一環といたしまして、必要に応じて、対象となる取引の業態ですとか、あるいは海外の状況などなどについて調査を継続的に行ってまいりたい、こういうふうに考えております。
○前田分科員
 今、流通審議官は、さらなる調査、継続の調査を述べていただきましたので、ぜひきちんとこの業態の実態をつかんでいただきたいというふうに思っております。
 私は、このネットワークビジネス、男女も関係なく、若い方もお年寄りもできる、そして障害者の方も健常者の方もできる、そうしたあらゆる方ができるビジネスであるというふうに思っております。安倍政権は、格差の是正、弱者の救済、そのための再チャレンジ、それから生き方としてのワーク・ライフ・バランスと言っておられるわけですけれども、私は、ネットワークビジネスはこれにも合致するのではないかと。とにかく、遵法の、法律を守っての上のこの仕事はどんな方でもできるわけですから、私は、今直面しているこの日本の課題にも寄与する産業ではないかというふうに思っておりますけれども、どのようにお考えでしょうか。
○松井政府参考人
 お答えいたします。
 連鎖販売取引につきましては、それを統括する事業者や個人販売員の活動が、法律に従ったものであり、また、適正に行われていれば、必ずしも問題を生ずるものではないと考えておりますが、連鎖販売取引事業者も先生がおっしゃるように千差万別でございますため、御質問の点につきましては、一概には申し上げることはできないと考えます。
 連鎖販売取引は、個人を販売員として勧誘し、さらにその個人が他の個人を次々と勧誘して、多段階に組織を拡大するものであり、組織が拡大すればするほど、また、その組織の中でいわゆる上位に上がった人ほど、利益がふえる仕組みでございます。このため、虚偽説明などの無理な販売勧誘が行われたり、下位の販売員の過剰在庫等によるトラブルなどが発生しやすい取引形態と言え、国民生活センターのPIO―NETのデータによりますれば、年間約二万件の消費生活相談が寄せられております。
 経済産業省といたしましては、消費者利益を保護するため、引き続き状況をしっかり注視するとともに、特定商取法に基づく厳正な対処をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
〔西村(康)主査代理退席、主査着席〕
○前田分科員
 今ちょっと気にかかった言葉がありまして、先生がおっしゃったように千差万別の業態だというふうに言われたんですけれども、私はそんなことを言っていませんので。千差万別じゃなくて、遵法の精神、法律を守っているか守っていないか、ごく一部の守っていない人間がいるということを言ったわけで、千差万別と言っているわけじゃないので、その辺だけはきちっと理解しておいていただきたい。
 そして、私の過去の質問に対して、きちんと遵法の精神のもとでビジネスをすればこれは正しいというお答えをいただいております。少し申し上げますと、例えば十七年の二月二十八日、これは小此木副大臣ですね、販売活動に携わる組織や個人がしっかりと正しいルールのもとで商売を行われているならば、それは規制の対象とはならないというか、自由な経済活動の中でやっていただいて結構な話であるというふうに言われています。それから、ちょっと前後しますけれども、平成十八年三月一日、これは迎政府参考人、法律に従って適正に行われていれば、必ずしも問題が生ずるわけではないわけでございますというふうに答えていただいています。それから、平成十六年三月一日、江田大臣政務官ですね、特定商取引法等の法をきちんと遵守されている、そういう業者の皆様にとっては何も問題はないと思いますというお答えをいただいております。
 私はやはり、もうこれはとにかく法律を守れ、守ったもとでのビジネスは正しいというふうに考えておりますけれども、これについて経済産業省はどのようにお考えでしょうか。
○松井政府参考人
 先ほども申し上げましたとおり、連鎖販売取引につきましては、それを統括する事業者や個人販売員の活動が、法律に従ったものであり、また、適正に行われていれば、必ずしも問題を生ずるものではないと考えております。
 ただ一方、連鎖販売取引は、個人を販売員として勧誘し、さらにその個人が他の個人を次々に勧誘し、多段階に組織を拡大するものであり、組織が拡大すればするほど、また、上位に上がった人ほど、利益がふえる仕組みであります。このため、虚偽説明等の無理な販売勧誘や、下位の販売員の過剰在庫等によるトラブルが発生しやすい取引形態と言えます。
 したがいまして、今申し上げたような虚偽の説明とかそういったことがないように、法律をしっかり守って、その定義に当たっても、適正に事業をやっていただければこれはトラブル等も生じないわけでございますので、そのところはきちっと法律の義務を果たしていただくというようなことであろうと思っております。
 先ほども申し上げましたように、国民生活センターのPIO―NETのデータによりますれば、連鎖販売取引につきまして年間約二万件の消費生活相談が寄せられているという現状にかんがみ、状況を引き続き注視するとともに、特定商取法に基づき厳正に対処してまいりたい。
 なお、経産省といたしましては、連鎖販売取引事業者について、平成十七年度に二件の業務停止命令、十件の指示を行っており、引き続き悪質な事業者の排除に力を入れてまいりたい、こういうふうに思っております。
○前田分科員
 そのとおりですよ。悪質な事業者については厳格に取り締まってください、まじめにやっていらっしゃる方が迷惑しますので。
 そこで、今お話があった国民生活センター、この苦情件数、過去三年で業態別にどんなことが、上位だけで結構です、一位、二位、三位ぐらいで結構ですので、言っていただきたいと思います。この業態別の順位ですね。
○田口参考人
 お答えを申し上げます。
 国民生活センターや各地の消費生活センターに寄せられます消費者の苦情件数を販売形態別に見ますと、二〇〇三年度以降、各年度とも、件数の多いものから申し上げますと、一番目に通信販売、二番目に店舗販売、三番目に訪問販売、四番目に電話勧誘販売、次いでマルチ取引となっております。
○前田分科員
 今順位をお聞きしましたけれども、過去においてよりはマルチレベルマーケティングはぐっと順位が落ちているわけであります。だんだんと遵法の精神のもとでやっておられる方がふえてきたということではないでしょうか。
 そこで、私は残念なものを見つけ出しました。マルチレベルマーケティング、ネットワークビジネスが、すべて、全否定だという国民生活センターのパンフレットを私は見つけました。
 これはひどいじゃありませんか。「友だちからの「いい話」はトラブルの始まり」、その下に、「「ネットワークビジネス」「MLM」とかたって友だちを勧誘し、会員にすることでマージンを得るというマルチ商法が広がっています。」これは、海外に私も留学していましたけれども、海外の方が見たら笑いますよ、本当に。
 過去に、訪問販売法、五十一年につくったときに、法律のスキームとして、マルチレベルマーケティングを全面禁止するのではなくて、定義を広くして、その中で、悪いマルチ、問題のある行為を規制してこられました。このときの天谷審議官の三類型が御答弁の中でありまして、悪いマルチ、よいマルチ、それから灰色のマルチと区別されておられるわけですね。全否定しているわけではありません。
 私は、ここに書いてあるように、ネットワークビジネスを経済産業省は全否定するわけですか、お聞きしたいと思います。
○松井政府参考人
 お答えいたします。
 昭和五十一年の立法以来、連鎖販売取引につきましては、禁止をするのではなく、特定商取引法によりまして、連鎖販売取引事業者に関する規制を定め、これによって取引が適正に行われるように取り組んできたところでございます。
 現時点で、直ちにこの考え方を変更する考えはございませんが、国民生活センターのPIO―NETのデータによりますれば、先ほど申し上げましたように、連鎖販売取引につきまして年間約二万件の相談が寄せられているという現状にかんがみまして、引き続き悪質な事業者の排除に力を入れ、特定商取法に基づき厳正に対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
○前田分科員
 そのとおりですよ。流通審議官、本当にそのとおりですよ。やはり悪質なものを排除するべきだということですよ。だから、これは間違っていますよ。恥ずかしい話だ。ぜひ、これはもう回収すべきですよ。
 これは、幾ら印刷に金をかけて、何万部刷ったんですか、生活センター。
○田口参考人
 お答え申し上げます。
 まず、マルチ取引についての国民生活センターの認識でございますが、いわゆるマルチ取引につきましては、その取引自体がいわば悪ということでは決してなくて、例えば、勧誘に当たりまして、特異な一部の成功例を引用して、多大な利益が容易に得られるかのように消費者を信じ込ませるといったようなことによりましてトラブルとなる事例が多いということから、特定商取引法によりまして、その弊害が生じることのないよう所要の規制がなされているというふうに認識しております。
 御指摘のパンフレットにおきましても、そのような認識に基づきまして、例えば、「友だちを紹介するだけ」などと目的を隠して勧誘を行ったり、あるいは学生ローンや消費者金融からの借り入れを強いるなどの問題につきまして、消費者に対して注意喚起を促すものでございまして、ネットワークビジネス全般を悪いマルチと否定しているわけではございません。
○前田分科員
 いや、これは、だれが見てもネットワークビジネスは悪だというふうに見えますよ。こうやってマルチ商法の問題点、書いてありますよ。だから、悪いマルチとしっかりと書いたらどうですか。こんなものが出回っていて、もしこれで損害賠償請求が起きたら、だれにやればいいんですか。国民生活センターの理事長ですか。どうですか。
○田口参考人
 お答え申し上げます。
 このパンフレットにおきましては、ただいま申し上げましたとおり、ネットワークビジネスをすべて悪いマルチと否定しているわけではございませんで、消費者がトラブルに陥ることのないよう、わかりやすい形で注意喚起を行うために作成いたしたものでございます。
 したがって、法令を遵守して正当な事業活動を行っております事業者に対しまして損害を与えるような内容のものとは考えておりません。
○前田分科員
 いや、実際、いろいろな方が私のところへ見えるんですよ、こんなものを出してもらっては困ると。実際の被害がこれで起きてくるわけですから、被害が出たときに、生活センター、ちゃんと補償してくださいよ。いいですか。
 私は、書くんだったらきちんと、遵法の精神を守らない、遵法精神のない、あるいは、法律を破っている悪徳マルチ、そういう言葉を使うべきだと思いますけれども、生活センター、どうですか。
○田口参考人
 お答え申し上げます。
 消費者に対するパンフレット等におきましては、できるだけわかりやすい形で注意喚起、情報提供を行っていかなければいけないということでございます。
 したがいまして、一般の消費者がなるべくわかりやすい形でいろいろ注意点を掲げるということを心がけておりますが、先生御指摘のように、マルチ取引がすべて悪であるというような誤解の生じないように、そこは十分配慮してまいりたいと思います。
○前田分科員
 時間が来ましたのでこれでやめますけれども、きちんと、わかりやすく消費者の皆さんに、悪徳マルチと悪いところは書いてやってくださいよ。
 ぜひこれをお願いしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。