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10年前の「悲しい日記」再び…

 最近、朝一番に目にするニュースを見ていると、まるでタイムマシンに乗って10年前のアジア通貨危機当時に逆戻りしたかのような感覚にとらわれます。もしかして、あの時と同じような金融商品が登場するのではないだろうか…。現在の状況はまるで、10年前の日記を引っ張り出して見ているかのようです。

 最近、新韓銀行は輸出入を手がける中小企業に対し、手数料を割り引きする「輸出入送金専用外貨通帳」のサービスを始めました。また、国民銀行とウリ銀行は、外貨定期預金の金利を年2%前後から年4%前後に引き上げました。さらに姜万洙(カン・マンス)企画財政部長官は6日、「各銀行がドル預金の活性化に努力するように」と注文しました。

 10年前を振り返ってみましょう。アジア通貨危機の真っ只中だった1997年12月、各銀行は外貨預金通帳を相次いで発行しました。旧韓美銀行(現・シティ銀行)は97年12月、外貨預金と同時に保険に加入でき、金利も他行(年1%台)より3倍も高い(年3.49%)「国を強くする外貨預金」のサービスを始めました。

 韓国外換銀行も、外貨定期預金の金利を1%引き上げて年6.56%とし、また韓一銀行(現・ウリ銀行)は「国を愛する外貨通帳」のサービスを始め、外貨普通預金の金利を年1%から4%にまで引き上げました。

 銀行の倒産が相次いだ98年には、預金の元金保障が流行りました。韓美銀行や朝興銀行(現・新韓銀行)、第一銀行(現・SC第一銀行)などは「元利金保障」をうたった預金商品を発売しました。不安感を持つ預金者らが銀行に預けた金を相次いで引き出す「バンク・ラン」を防ぐための苦肉の策だったと言えるでしょう。

 最近は貯蓄銀行などが、「元利金が5000万ウォン(約381万円)まで保障される」といううたい文句を掲げ、集客に躍起になっています。もちろん、金利は年7%という高い水準に設定しています。

 アジア通貨危機当時、韓国の各銀行は、米国の韓国系住民や海外の駐在員らを対象に、外貨通帳を作るキャンペーンまで展開しました。98年5月には、米国でクリーニング店を経営する韓国系住民300人による「母国を助けるための投資団」が来韓したという記事が、各紙の経済面を飾ったものです。現在また、これと似たようなことが起こっているというわけです。国民銀行の関係者は「海外の駐在員たちが最近、ウォン安ドル高の進行を受け、ドルを海外から韓国へ送金して運用するという動きを見せており、その促進に向けて積極的に動いている」と話しています。

 日記帳には「とてもラッキーだ」と書かれていますが、まだ金融市場で明らかになっていないこともあります。通貨危機の直前、起亜グループの主要取引銀行だった第一銀行は、「起亜を助ける通帳」や「海外債務を返済するための通帳」を発行しました。また、朝興銀行は「100万人の雇用創出を支援する通帳」を発行し、雇用を増やした企業には収益金を寄付しました。

 すっかり過去のものとなったこれらの出来事が再び再現されることになれば…考えただけで背筋が寒くなります。

 最近、米国発の金融危機が実物経済にも影響し始めています。先行きの見えない不景気によって、企業倒産の続出や「万年失業者」の問題を心配しなければならない時が近付いているようにも感じられます。「春夏秋冬」というグループの『10年前の日記を取り出して』という歌には、「わたしにはもっと多くの出来事があった/一体どんな悩み事があるというのか/昨日のつらかった出来事も/すべて過ぎ去った出来事に過ぎない」という歌詞がつづられています。韓国が金融危機や実物経済の危機を無事に克服し、この歌を軽い気持ちで歌える日が来ることを願ってやみません。

趙義俊(チョ・ウィジュン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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