テレビ番組で見直し発言をした後に、記者団に囲まれる舛添厚労相=9月、東京都港区
後期高齢者医療制度(後期医療)の見直しをめぐり、舛添厚生労働相は10日、高齢者の医療費負担のあり方を「今から議論していけばいい」と、根底から見直す考えを示唆した。約10年にわたった議論を白紙に戻すことにつながるが、厚労省の審議会や与党内での調整手続きを素通りした異例の検討が続く。発言をたどると――。
舛添氏は福田政権時代、「若者4割(の負担割合)を決めたことに意味がある。大事なのは高齢者もちゃんと負担すること」(6月26日の政府広報オンライン)と75歳以上を切り離した現行制度を擁護していた。
しかし、後期医療に懐疑的な麻生太郎氏が首相就任直前の9月20日、突然、75歳以上の線引きを改めることを柱とする大胆な見直しを表明。だが、「廃止ではない」と強弁し、10日の会見では「『廃止する』とか『廃止しない』と言うのは全く不毛」と語った。老人保健制度が行き詰まり、後期医療導入まで約10年かけた議論についても「もっとクリエーティブに新しいパターンを考えればいい」と切り捨てた。
舛添氏は10日の閣僚懇談会で私案を説明したが、閣僚からは「今までの説明とつじつまが合わない」との意見が出た。河村官房長官は同日の会見で「この制度の根幹は大事。これまで積み上げたものがあるから、与党政調としっかり積み上げてもらいたい」と舛添氏にくぎを刺した。
舛添氏の発言で目立つのは、総選挙を意識したかにみえる、高齢者の情緒への偏重だ。「470万人(の保険料)がタダになった。いいものを残した上で、孫と切り離されるのは嫌だというのを直していく」と保険料の減免措置の維持を強調。9月30日の与党議員のパーティーでは「75歳以上はゴールドシート。ふかふか、優遇措置。65〜74(歳)はシルバーシート。我々若いのは立っておけ」とあいさつした。
こうした聞こえのよい発言の一方で、費用負担をどうするかは曖昧(あいまい)だ。6日の衆院予算委員会で現在5割の公費割合を「長期的には増やさないといけない」と答弁。その後は福祉目的税の検討に言及、10日の会見では「公費負担の全体の議論になる。ものすごい大きな議論があると思う」と、拡散気味だ。(南彰)