Print this Post Article Lists Back

【社説】教科書問題、理解できない歴史学界の対応

 韓国史研究会や東洋史学会、西洋史学会など歴史関連の21の学会は8日、政府の「左寄り」韓国近・現代史教科書の修正方針を「歴史教育の自立性に対する重大な挑戦」とし、「歴史教科書は歴史学界に任せよ」と主張した。

 地球上のどの国にも、歴史教育を歴史学者の「自律」に任せる国はない。教育の目的は、将来国家を担う健全な予備市民を養うことにある。健全な市民のベースは自国の歴史に対するバランス感覚だ。したがって教育、とりわけ歴史教育に国家と社会が関与するのは当然のことといえる。国定や検定制度という教科書審議の権限が国家に与えられているのもそのためだ。

 大人たちが見ている一般の歴史書は、「黒人とアメリカ原住民の視点で見た米国史」「労働者の視点で見た英国史」「朝鮮族の視点で見た中国史」のように少数者の視点で書かれることもあり得る。しかし、歴史教科書に関しては、どの国でも総合的でバランスの取れた見方が必要だ。つまり、ある一線を越えてはならないということであり、そのためには少数者の見方を排除することもあり得るということだ。「南朝鮮労働党員が経験した解放直後の政局」、または「金日成(キム・イルソン)の軍隊の視点で見た韓国戦争(朝鮮戦争)」は、教科書で子どもたちに教えることはできないということだ。この教科書は2002年の検定の際、内容の誤りや偏向的な理論・見方・表現の項目で、10人の検定委員のうち7人がC、3人がBをつけた。すなわち教科書として不適合と評価されたのだ。出版されてはならない教科書が検定制度の網をくぐり、検定をパスし、全国教職員労働組合の全幅的な支持を受け、全国の約半数の学校で使用されることになった。

 歴史学界は、このように逸脱した教科書が検定を堂々とパスする際も、また子どもたちが全国の教室で大韓民国の正当性を否定する教科書で学ぶ間も、何一つ異議を唱えなかった。いくつかの学会はむしろ「何ら問題はない」と、この逸脱した教科書に免罪符を与えていた。今回の声明に名を連ねた学会や歴史学者は果たして、金星出版社の教科書をじっくり読んだのだろうか。また、その内容に同意しているのだろうか。このような教科書を擁護し、黙認していた歴史関連の学会が今になって「現行の教科書に問題があるなら、筆者や歴史学界の厳正な検討を通じて修正すべきだ」と主張しているが、これは学者的良心から見ても、非常に恥ずかしいことといえよう。

 学界や学者らがポピュリズムに揺れ動き、あるいは学界の中心を占めている386世代(1990年代に30歳代で80年代に大学に通った60年代生まれの世代)に影響され、われわれの未来を担う世代の教育を崩壊させるため先頭に立ってはならない。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る