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【外信コラム】ソウルからヨボセヨ 新紙幣の歴史歪曲?
韓国では来年、新しい紙幣として5万ウォン札と10万ウォン札が発行されることになっている。5000円、1万円札に相当するが、経済発展や物価上昇などから高額紙幣が必要になったからだ。新紙幣の人物も、時代を反映して初めて女性が採用され、5万ウォン札に李朝時代の賢母で名高い申師任堂が登場する。
問題は10万ウォン札。表の人物は抗日運動家として知られる政治家・金九(キムグ)で、これはこれで日本人としてはいささか落ち着かないが、裏面に予定されている19世紀の古地図「大東輿地図」をめぐって議論が起きている。この地図に日韓の領土紛争になっている竹島、韓国でいう「独島」を入れるべきかどうかというのだ。
この古地図の原本にはもともと島は見あたらない。それを紙幣に使用するに際し、島を書き加える案が検討されていた。近年の反日・独島愛国主義を反映した発想だが、これには当然、「古地図の改竄(かいざん)ではないか」「こんな歴史歪曲(わいきょく)をやったのではほかの件でも疑惑を招く」など批判の声が出た。
この古地図の写本には島を書き加えたのがあるという。紙幣の図案は一種のデザインだから島を加えてもいいじゃないかというわけだが、結局、政府・中央銀行当局は前政権の決定ということもあって発行をしばらく保留にしたという。それにしても“愛国”のためには古地図も書き換えていいとは、その大胆な発想には改めて驚く…。(黒田勝弘)