先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)がワシントンで開かれ、各国が信用不安に陥った金融機関への公的資金投入で合意した。一歩前進だ。次は実効性のある具体策づくりが鍵を握る。
G7声明は「現在の状況は迅速で例外的な行動を求めている」としたうえで、金融システムの維持に全力を挙げるとともに、各国金融機関が民間部門だけでなく、公的部門からも資本調達できるようにするなど五項目で合意した。
米国のポールソン財務長官は会議後の声明で、金融機関からの株式買い上げの細目を検討中であると表明し、議決権のない優先株購入を示唆した。
世界の株式市場で株価が暴落し、金融危機が一段と深まる中で、米国はじめ各国が公的資金投入に踏み切る方針を明確にしたのは、評価できる。週明けの市場にも安心感を与えると期待したい。
米国政府による最大七千億ドル(約七十兆円)に上る不良資産買い上げ、日米欧中央銀行による大量の資金供給と米欧の協調利下げに加えて、今回の公的資金投入で、危機を乗り切るための基本的な枠組みが出そろった形だ。
ただ基本方針が決まったとはいえ、投入する資金枠や方法など具体策は決まっていない。市場には、強い金融機関が生き残って、弱いところは結局、淘汰(とうた)されるのではないかなど疑心暗鬼もある。
日本の経験に照らしても、金融システムを守りつつ、経営陣のモラルハザード(倫理観の喪失)を助長しないように制度を設計するのは容易ではない。米国では税金による救済策に対する反発も強いだけに、制度づくりに入念な知恵と工夫が求められる。
具体策づくりに手間取れば、市場は不安にかられて、再び株価急落の嵐に見舞われる可能性もある。ドル安懸念も残る。時間との競争である。米大統領選への政治的配慮を横に置いても、ここは危機乗り切りを最優先すべきだ。
麻生太郎首相は、緊急の主要八カ国首脳会議について「必要があれば、主催する用意がある」と述べた。市場動向次第では、検討する価値があるだろう。
公的資金の投入に続いて、米国ではアイルランドやドイツなどが決めた預金の全額保護策も浮上している。各国がばらばらに保護に動くと、資金逃避が加速しかねない。自国利益だけを優先するような動きは危険だ。各国は足並みをそろえて危機に立ち向かう姿勢を堅持する必要がある。
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