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社説:危機下のG7 悪夢の歴史を繰り返すな

 大恐慌は、米国を皮切りに世界の各国が、「自国さえよければ」の保護主義に逃げ込んだことで深刻化した。自国を守るための保護貿易政策だったはずが、結局は互いを窮乏させ、国家の対立を招き、皆が敗者となった。

 その対立への反省から築かれたのが第二次世界大戦後の国際協調体制だ。しかし、その一つである多国間の貿易体制は世界貿易機関(WTO)の自由化交渉が決裂したことで、保護主義の魔物に付け入る余地を与えてしまった。今、忍び寄る不況は、その魔物を誘う蜜(みつ)となる恐れがある。

 グローバル化が進んだ現在は、一国の決定や行動の影響が、市場を介してあっという間に他国に及ぶ。何十年の歳月を費やして築き上げた相互信頼に基づく協調体制も、いったんひびが入ればたちまち崩壊の危機にさらされかねない。

 協調体制を守り魔物を追い払うことができるのか。

 先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は金融危機の深刻化を防ぐため「緊急かつ異例の行動」をとることで合意した。身勝手な施策により他国に害を与えるようなことのないよう、各国が協調して危機に当たる意思も表明した。

 まずはG7の決意と結束を評価したい。そのうえで、これが速やかに具体的措置として裏付けられることを強く望む。

 世界の株式市場が歴史的大暴落を記録した週の終わりに開かれたG7だった。共同で新しい具体的取り組みを始めるという合意はなかったため、週明けの市場が評価するかどうかは、分からない。とはいえ、今回の合意に盛り込まれた原則は、今、最も必要とされているものばかりだ。

 まず「あらゆる手段を行使」し、影響力の大きな金融機関の破綻(はたん)を阻止すると表明した。金融機関の信頼回復を促すため公的資金による資本注入の覚悟があることも明確に打ち出した。預金者保護でも万全の対応をとるという。

 次は、具体的行動により「本気」であることを証明することだ。米国のポールソン財務長官は、公的資金を使い幅広い金融機関に資本注入する考えを表明した。速やかに目に見える成果を上げてもらいたい。

 欧州の場合は、単一市場でありながら複数の国家で成り立つため、一体となって行動をとることが、政治的に困難だろう。それでも、市場の注目がかつてないほど集まっている時だけに、G7合意を裏切るような不協和音は禁物である。大戦で焦土と化した欧州に恒久平和をもたらそうと歩みだした統合の精神が今、試されている。

 さらに、単独で問題を解決できない国が現れた場合、連帯して救済する仕組みを作る必要がある。

 主要国の指導者たちに課された責任は、かつてないほど重い。

毎日新聞 2008年10月12日 東京朝刊

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