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【放送芸能】

『一人の子供も死なせない』 16日からテレ朝ドラマ『小児救命』

2008年10月12日 朝刊

 「理想の病院がないならつくればいい」と、若い医師が小児病院をつくり、救急現場で奮闘するドラマ「小児救命」(木曜午後9時)が、テレビ朝日で十六日から放送される。ドラマは社会を映す鏡であるべきだが、産科医不足と並んで問題に挙げられることが多い小児科医療の現場を、どう描くのか。 (宮崎美紀子)

 ドラマは、小西真奈美演じる主人公の小児科医・宇宙(そら)が、総合病院の小児科を辞め、「一人の子供も死なせない」と、二十四時間対応の小児科病院「青空こどもクリニック」を開業する物語で、原作のないオリジナルドラマ。

 企画したのは、難病の子どもを取り上げたドラマ「電池が切れるまで」(2004年)と「いのちのいろえんぴつ」(08年)を担当した中込卓也プロデューサー。作品を通じて小児科医、患者、家族との出会いが重なった。中でも大きな影響を受けたのが横浜市に実在する二十四時間対応の小児科専門病院だったという。

 「そこの先生は開口一番『一人の子供も死なせないと思ってやってます』とおっしゃった。直感でドラマにしたいと思った」と振り返る。

 一方で偏らないよう、中規模病院や大学病院も取材。「みんなすごく優しく、かつ、すごく疲れていた。そして、それぞれの立場で今の医療現場に問題を感じていた。だからドラマでは悪役は作らない。町の開業医も大病院も、それぞれの役割があることをきちんと見せたい」という。

 監修は規模や形態の違う複数の病院の医師に依頼し、バランスとリアリティーを重視。「救急」ではなく「救命」という言葉を使ったのは、「命」を扱っていることを関係者全員が肝に銘じるためという。

 「僕らはずっと、ドキュメンタリーに負けたくないと思ってドラマをやっている。ドラマだからできることがあると信じている」。中込さんは力を込めた。

◆医師の目から 『過酷な現状知ってほしい』

 ドラマの監修の1人が、埼玉県久喜市にある土屋小児病院の土屋喬義院長。夜間も小児科医が常駐し、救急に24時間対応するなど、ドラマに登場する病院との共通点も多い。現場の小児科医の立場から、ドラマへの期待、注文を聞いた。

 −このドラマの企画についての感想、希望は。

 われわれがこのドラマに協力した理由は、今の小児科の現状を知っていただき、民意を行政に反映してほしいからです。目の前の患者を助けるのは大事ですが、小児救急のシステムをいかに維持するかが重要課題。医師の過労、救急施設の減少など、救急をやりたくてもできない現状を伝えてほしい。

 −ドラマで描かれる「青空こどもクリニック」(常勤医6人)のリアリティーは。

 実は、このような小規模な病院は、日本小児科学会が目指す「小児科病院の集約化」とは矛盾するんです。そういう意味では、一つの問題提起として興味深い。私自身は、宇宙先生のような人が出てこないと日本の小児医療の未来はないと思いますが、実際は難しい。宇宙先生が現実の問題にぶち当たった時、どう解決するのか、そこをきちんと見せないと現実と遊離してしまいます。

 −ドラマを機に視聴者に考えてほしいことは。

 まず、小児救急を潤滑に運営するだけの医療費がないことを理解してほしい。また、小児科医不足が叫ばれているが、問題は小児救急を担う病院の勤務医が過酷な労働条件に耐えられず早く辞めてしまうことにあるんです。小児医療の現場にお金が回るよう、国策としてやってもらわないと小児救急は死に絶えてしまいます。

 

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