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北朝鮮のテロ支援国家指定、米が解除 6者維持へ譲歩

2008年10月12日1時12分

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 【ワシントン=鵜飼啓】米国務省のマコーマック報道官は11日午前(日本時間12日未明)、緊急記者会見を開き、北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除したと発表した。未申告核施設の検証を拒んだ北朝鮮に対し、6者協議の枠組み維持を最優先した米政府が譲歩し、事実上、申告した施設に限った検証計画を受け入れ、見返りに指定解除を決めた。日本政府は「検証計画には確認すべき点が残っている」として慎重な対応を求めていたが押し切られた形だ。

 ライス国務長官が11日午前7時半ごろに解除の手続きを行い、即時に発効した。マコーマック氏は解除理由を「検証に関して北朝鮮の相当の協力が得られた」とした。北朝鮮は解除を受けて直ちに無能力化を再開することで合意している。また、今月中にも6者協議首席代表会議を開き、米朝間の合意を確認する。

 米政府は北朝鮮が指定解除の遅れに反発して寧辺の核施設復旧を始めたことに危機感を強め、検証合意と指定解除の実現を急いでいた。北朝鮮が実際に施設再稼働に踏み切ればこれまで通りに6者協議を続けることは困難になる、との懸念があったためだ。

 国務省が発表した検証合意の概要によると、米朝は申告した全施設への立ち入りで合意。未申告施設については「相互の合意のもとで行う」としている。施設での試料採取も認められる。合意した検証措置はプルトニウムの核計画に加え、ウラン濃縮による核計画、外国への拡散にも適用される。検証には6者協議全参加国の専門家が参加できるとし、国際原子力機関(IAEA)も「重要な相談、支援の役割を担う」とした。

 昨年10月の6者協議で合意した「非核化第2段階」の大きな節目となるが、北朝鮮は今後も未申告施設への検証は受け入れない構えと見られ、核兵器製造過程やウラン濃縮による核開発、核拡散の検証は、現実には難しいと見られる。

 北朝鮮はテロ支援国家指定を米国の「敵視政策」の象徴ととらえており、解除を強く求めていた。一部の経済制裁はなくなり、米朝関係正常化の大きな障害が取り除かれたと言えるが、北朝鮮には核実験や人権侵害などをめぐる多くの制裁が引き続き科されている。このため、指定解除の実際的な影響はほとんどなく、あくまで象徴的な意味合いが強い。

 ただ、拉致問題を抱える日本政府や被害者の家族らにとっては衝撃といえる。マコーマック氏は会見の冒頭、「米政府は拉致問題に関する日本の立場を心から支持する」と強調。北朝鮮に対して日本の懸念に対処するよう強く求める、とした。

 ブッシュ米大統領は6月26日、北朝鮮の核計画の申告を受けて指定解除の意向を米議会に通告しており、解除の方向自体は米政府にとっては既定路線だった。だが、北朝鮮が検証計画についての合意を拒否したため、通告から45日過ぎて正式解除が可能になった後も解除を先送りしていた。北朝鮮は「合意違反」と反発、米政府への揺さぶりを強めていた。

     ◇

 ■テロ支援国家 米政府が国際テロへの支援を繰り返す国家に対して指定する。武器の輸出・販売の禁止、国際金融機関の融資に対する反対などの制裁を科す。北朝鮮は大韓航空機爆破事件後の88年1月に指定された。他にキューバ、イラン、スーダン、シリアが指定されている。解除する場合、大統領がその意向を議会に通告し、通告から45日後以降に最終的な判断を下す。対象国が(1)過去6カ月間、国際テロを支援していない(2)将来も国際テロを支援しないと保証する――との要件を満たす必要がある。

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