先日,今度初めて出張に行かせていただく先の担当の方から,「先生の略歴を教えてください」と依頼がありました。
学会などの講演が始まるときに,よく演者の経歴とか現在の所属とか専門とかを座長に紹介されますが,きっと略歴をお知らせしたらそ れを使って研修のときに私をみなさんに紹介してくださるのでしょう。
もちろん,略歴をお伝えすることには何の躊躇いもありません。
それに今回の出張で私がお話しさせていただくのは専門職の方々なので,その場面で私がどんなふうに紹介されるかということは大して 気にならない,というか神経質になることもありません。
が。
患者さんたちの前で自分がどのように紹介されるか,というのはとっても気になったりします。
精神科医になって間もない頃から,ベテランの先生方が「○○先生は老年精神医学がご専門です」とか「△△先生は統合失調症の分子精神医学の第一人者でいらっしゃいます」みたいな紹介をされているのを聞くと,妙にそういうシチュエーションに憧れた(笑)というか,やっぱり自他ともに認める専門領域があってこそ一人前,みたいに思っていました。
でも,専門領域があるということは,専門じゃない領域があるということ。
そして,自分の専門領域の患者さんばかりを診療しているわけではありません。
自分の専門領域ではない患者さんの前で,その方の診断名とは無関係な私の専門領域が紹介されたとしたら,その患者さんはどう感じるのだろう?
たとえば,私の外来を受診してくださっている成人のうつ病の患者さんの前で誰かが「NINA先生の専門は児童精神医学ですよ」と言ったとしたら,そのうつ病の患者さんはそれを聞きながらどう思うのかな,と。
「え,先生ってうつ病の治療は専門じゃないんだ…」と思って,がっかりさせたり不安にさせたりしてしまうことにならないかな。
専門領域じゃないからまったく診ることができないというわけではないし,きちんと診させていただいているつもりだけど,やっぱり専門じゃないってことは信頼を失うことにつながるんじゃないか,と心配になってしまうのです。
治療が順調に進んでいればそんなことは何の問題にもならないはずだと思うけれど,それでも自分の専門外の領域の患者さんにわざわざ自分の専門領域はどのあたりなのかを知らせたくはないな,…と。
専門がはっきり定まることにはいい面もあれば悪い面もある。
まぁ,考えてみればあたりまえのことですよね。
そこまで気にしなくてもいいことかもしれないけど,このことに限らず,あらゆる患者さんの反応を想定して,マイナスのできごとを極力避けられるような敏感さをいつももっていたいと思います。
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