2008-10-09 29歳の最後にしたこと
■子殺し
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この場所は私の場所であるけれども、何か得体の知れないものたちの巣窟とも繋がっているようで、
精確に私の場所であるとは定義し難くなっていた。
それはここが公開された場であるからこそのことなのだけれども。
アンモナイトの殻の奥、内省を始めてから何年が経過したことだろう。
始めは大学生だった。
私はあらゆるものに餓えていた。
あらゆるものに脅え、あらゆるものを欲し、あらゆるものから逃げ、あらゆるものであった。
30歳になりました。
29歳最後の二週間。
一日目に母となり、十日目に子殺しをし、十四日目で三十路の女となりました。
母となったその日に言われたことは「来年の4月29日が出産予定日です」。
実際にあの子が何日間、私の中に居たのかは知らないけれども、
「妊娠6週目になります」と言われました。
7週目にはあの子は私の中から、何か金属製の巨大な耳かきのようなもので、
柔らかい身体を幾度も穿り返されて、この世に死んで出てきました。
毎夜、大量の睡眠薬を飲む私の中で、子がいったい何回卵割出来たのか、
生きていたのか、死んでいたのか、既に異形のものとして成長している途中だったのか、
私にはそれすらもよくわかりません。
何故……
母親の心がわかって恐ろしかったのね。
手術中の他人の会話や看護士たちに押さえつけられた感触など
もうそれはそれは殊更明確に記憶しているのであります。
これでも一応は人工中絶手術の手順について詳しく書かれたサイトを
幾つか見てはいたのですが、私の場合はまったく違うものでした。
私は押さえつけられてはいましたが、自ら暴れることもなく、
ただ「よろしくお願いします」、「お手数かけます」と人の声がするたびに唱えていました。
病室に一人になったとき、手の指を動かしてみました。
動きました。
足を上げてみました。
少々辛かったものの、上がりました。
患部は多少じんじんする程度でした。
思い切って目を開けてみました。
思い切って上半身を上げてみました。
少し眩暈がしただけでした。
思い切って立ち上がってみました。
ふらつきましたが歩けました。
書いてあったこととまるで違うな、そう思いました。
2008-07-31
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別に本当に似ているとは思っていないが、単孔の女・陳家蘭を浮かべて挙げたのだ。
澁澤龍彦の『高丘親王航海記』に登場する旧きカンボジアの王宮、
特別に作られた後宮にいるという世にも珍しい女たちのことである。
アーモンドのような切れ長の瞳に華奢な身体、鎖骨が浮き上がり、
長くて黒い髪の毛が垂れている。
その下半身は明らかに鳥のものであり、臍もない。
これは稲垣足穂曰くのV感覚とA感覚を同一化したものなのだろう。
男はとかくP感覚に囚われすぎるし、少年でもなく女でもない生き物こそがP感覚に対し、
私の長く黒い髪の毛は乳房まで長いが、
乳房は膨らみ、張り詰めていて、括れた腰から肉感溢れる尻と太ももが伸びている。
およそ単孔の女とは程遠い、完全な女である。
しかし私は女でありながら卵を産むことがない。
内情は不完全な女である。
Vは完全な遊戯場であり、妓楼である。
私はあなたのことを瞬きもせずに見つめるだろう。
黒目がちで潤みを施す私の瞳には長い睫毛が生えている。
私は自分の目の効果を熟知しているから、あなたのことを見つめるだろう。
身じろぎもせずに見つめるだろう。
伸ばした腕にその腕を絡めなさい。
その胸に沈みこむ白い指に立たせなさい。
妓娼の繰り出す秘戯に吐息を漏らせば
その唇に湿った舌が迎えに行く。
私が声を上げれば、もう、あなたは私の虜。
2008-07-19
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わーい。
ネットで検索したら、恐らく15分くらいでまとめられちゃうかもしれない問題を、
わざわざ書棚から7冊も本を取り出して調べるよ!
ワクワクしちゃうなあ。
トーキングヘッズだったかなあ。
そんな名前のサブカル雑誌が安っぽいテーマばかり掲げていて、
何だかなあって感じなんですけどね、
そこのライターがやばくって、
参考文献にね、ウィキペディアを使っちゃってるの。
そのまま引用してるの。
おいおい、て感じでしょ。
そんなもの、大学生のレポートでしか許されないし、
大学生だって4年生にもなってそんなことしたら、
担当の教授につき返されちゃうよ。
そういうわけで、別に大学に提出するわけでもないんだけれど、
人とお話するからには、不確定であやふやな情報源をあてにするほど、
腐ってはいないのですよ。
遊びとはむきになればなるほど楽しいものだと思います。
『異形の王権』/網野善彦
『歴史の中で語られてこなかったこと』/網野義彦
『日本中世の民衆像』/網野義彦
『紙と祭りと日本人』/牧田茂
『「悪所」の民俗誌 色町・芝居町のトポロジー』/沖浦和光
『辺界の輝き―日本文化の深層をゆく』/五木寛之・沖浦和光
『歴史の中のサンカ・被差別民 謎と真相』/別冊歴史読本
2008-07-08
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風呂上り、化粧水と美容液を付けただけの顔。
最近は「マイナスイオンを出す」という眉唾ものの扇風機で髪の毛を乾かしている。
半乾きになったところで椿油とドライヤーで乾かす。
実は鎖骨の下も肋骨が浮いているのだが、照明が暗いのでわからない。
肌が年々白くなっていく。
ピラティスとヨガの効果で筋肉は美しくつくようになり、
身体がだいぶしなやかになってきたと思う。
去年は大切な人が自殺したショックで72キロまで太ったのに、
今では48キロ。
一年で身体がだいぶ変わった。
球体関節人形になりきる写真作品のモデルにまでなっている。
それでも私は人形になっていない。
オートマトンになれたの?
違うわ。
私は「人形のよう」になりたかったのだわ。
私は探究者。
2008-07-03
私と彼が感じあえなかったのは、
3センチ程、私の方が身長が高かったからだ。
肌が綺麗
こんなに白かったんだ
すごく可愛い声を出すんだね
私は抱き合いながら、ベッドの下部の方へと体をずらしていた。
彼は私の左胸を触りながら、どこが私の心臓かと手をずらしていた。
甘い匂いがする
そう言って、彼は私の乳房をずっと弄っていた。
自分より年下な気がしてきた、彼はそう言って髪の毛を撫でていた。
私は緊張のしどおしで、身体を震わせていただけだった。
ねえ、一生のお願いだから、私に一生のお願いを何回も使わせて。
じゃあ、お願いだから、そんなに「好き」と何回も言わないで。
もう一ヶ月前なのだ。
彼は「何かしらアートっぽいもの」への創造欲を私の中に見出し、
私の中からエロティシズムを得、
けれども私たちはお互いに余りにも似すぎていたから、
お互いを傷つけあい、ただ一度の情交がお互いを引き裂いた。
彼からもらったCDに入っていた曲。
彼が好きだった曲。
二人が好きだったもの。
きっとあの人は最初で最後の、私より背が低い男。
さようなら。
一ヶ月もしないで、簡単に幕を引かれた後の恋愛の前から去ることが出来るようになったのは、
別の男がいるからなのか、慣れただけなのか。
私を必要とする男がいたら、その男に私を与えるだけなのよ。
■
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中野の窓枠を恋しく思う日がある。
安い洋品店で買ったギンガムチェックのワンピースを簡易着として、
あの部屋に残してきてそのままだ。
ギンガムチェックのワンピースを着て、
床に寝そべり、
3日も風呂に入っていない男が私に汚いペニスを差し出してきたとき、
何かが壊れた。
あの背の高い男は私をいつも、
その無神経で踏みにじるくせに、
いつまでも私を必要だと辛抱強く待つ。
年下の駄目男はいけない。
年下の男は駄目だ。
自殺をしたり、無神経だったり、監禁したりする。
そのくせやたらと優しくて、嬉しそうな表情が上手だ。
そうやって幸せそうな顔を浮かべるから、
誰かを幸せに出来ることに満足感を得て、
一日で9回も口の中に射精されたり、
自分だけを見ていて欲しいと縛られて監禁されたりしてしまうのだろう。
初めて見たチンカスの付いたチンコをしゃぶって欲しいと甘えられるのだ。
2008-06-26 一緒に死んでくれる人
そういう言葉で検索をかけて、何人かここに辿り着いている。
私はあなたとは一緒に死なないから。
見ず知らずの人と心中するくらいなら、一人で死んだ方がましではないですか。
それとも同一目的の人々と集まることによって、
後戻り出来なくするのが目的なのかしら。
その日は一睡も出来なくて、
途中で折れるように曲がったペニスが、
私の中で上下するたびに結合が解かれてしまいそうで、
私は痛くて怖くて仕方がなかった。
私の身体とこのペニスは馴染まない。
彼もまた、私と馴染むことはないのかもしれない。
その予感は的中した。
■さて勉強はというと
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学問友達が一人もいなくなって寂しい。
勉強とは孤独な作業だけれども、研究というものは個人の寄せ集めで成り立つ。
ディスカッションが出来なくなった今日では、
自分の考えすら纏まらない。
いつも纏まらずに散らばっているものを、
話しながらかき集めて、その中で構築されたパロリチュールを見て、
自分でも自分の思考が明確になるのだ。
最近は色恋沙汰ばかり書いていて、本当に自分が何をしているのか呆れてくる。
恋愛が何かしらの機動力となっていては昔のことで、
今は私の中で邪魔にしかならないと気がついた。
新しい恋愛は発想の源にはならず、もう過去の蓄積だけで書いていける。
恋愛って結局は同じことの繰り返しだって、この年齢になって漸く気がついたのだもの。
そろそろ地盤を固めないと。
私はここには生の自分を出したくありません。
いつも虚像でありたいのです。
ただ、私にはあの人にこれ以上メールをして良いのかわからず、
そしてここに書けば、もしかすると目に留まるのではないかと、
こうするしかなかったことを告げておきます。
人間関係がうまくいかないと、いつもスクーデリア・エレクトロの「miss」を歌ってごまかそうとする。
切なくなると歌う。
「♪全ては僕たちのmisunderstanding~擦れ違っただけ」
この私は虚像だから。
だから仕方がない。
あの人の周囲には明らかに知識ある人たちが集まっている。
私など、取るに足らない存在だ。
単なる色気違いと思われていても文句は言えない。
そんなつもりじゃないんだ。
私には学問上の友人がいないの。
だからあなたが羨ましいの。あなたに近付きたかったの。
確かに学問上の付き合いの人と恋愛が絡んだもの(それは相手からのものばかりで、私は誘惑などしていない)になりがちなのは認めるけど。
でもいつも悲しくなる。
私は性別抜きで話していたのに、話したいのに、
相手はいつも私を女としてしか見てくれないなんて。
私は……。
人と付き合うのが苦手です。