独立行政法人日本原子力研究開発機構と、共同研究する4社・組織は7日、草津温泉の温泉水から高価な希少金属のスカンジウムを、「金属捕集布」を用いて取り出すことに成功した、と発表した。
共同研究は、同機構高崎量子応用研究所(高崎市)の玉田正男リーダーのグループを中心に、日本カーリットR&Dセンター(渋川市)、アンザイ(安中市)、群馬分析センター(高崎市)、群馬県産業支援機構(前橋市)が、草津町の協力を得て行った。
研究では、ポリエチレンに放射線を照射するなどして、スカンジウムが吸着しやすい分子を接ぎ木のように組み入れる「放射線グラフト」技術を使って金属捕集布を製作。この布を入れた捕集装置に、温泉水が流れ込む湯川の水を1分間当たり40リットル流し続けたところ、水中のスカンジウムの95%以上を捕集した。1年間では220グラム捕集できるという。
実験に使用した水は雨水などで希釈され、温度も低かったが、草津温泉の温泉水には1トン当たり約17ミリグラムのスカンジウムが含まれており、高温の源泉を使用すれば捕集効率がアップするという。
スカンジウムは、アルミニウムの耐熱性や強度を高めるために混ぜるほか、近年は自動車ランプなどに使われるメタルハライドランプの材料として需要が伸びている。1キロ当たりの価格は200万円といわれ、すべて輸入に頼っている。
玉田リーダーは「5年程度かけて、捕集布の耐久性強化や、利用できる源泉の調査を進め、ビジネスモデルを構築したい」と話している。【増田勝彦】
毎日新聞 2008年10月8日 地方版