2008年08月14日

【Jリーグ秋春制移行問題】サカダイの犬飼会長インタビューを考える。犬飼氏が就任したのはJリーグチェアマンではなく、日本サッカー協会の会長だということを思い知る(下)

日本サッカー協会(以下JFA)は、日本国内におけるサッカー(フットサル)普及のための統括団体である。JFAは、国際サッカー連盟(FIFA)などのサッカー団体をはじめ、日本オリンピック委員会(JOC)などの国内スポーツ団体に所属し、日本代表や日本オリンピック代表を派遣している他、国内サッカー(フットサル)競技大会の主催や、サッカー(フットサル)指導者・審判員の育成、47都道府県のサッカー協会と連携をしてサッカーの地域活動の組織化も努めている。
参考)財団法人日本サッカー協会公式サイト JFA 目的・事業

また、川淵前日本サッカー協会会長(現名誉会長)が掲げた、キャプテンズ・ミッションを継承する形で、犬飼JFA会長は、11項目からなる「プレジデンツ・ミッション」を全く文言すら変えることなく掲げている。

「プレジデンツ・ミッション」
Mission1  「JFAメンバーシップ制度」の推進
Mission2  「JFAグリーンプロジェクト」の推進
Mission3   「JFAキッズプログラム」の推進
Mission4   中学生年代の環境充実
Mission5  エリート養成システムの確立
Mission6  女子サッカーの活動推進
Mission7  フットサルの普及推進
Mission8  リーグ戦の推進と競技会の整備・充実
Mission9  地域/都道府県協会の活動推進
Mission10  中長期展望に立った方針策定と提言
Mission11 スポーツマネジメントの強化

参考)財団法人日本サッカー協会公式サイト プレジデンツ・ミッション

プレジデンツ・ミッションをはじめ、JFAの事業活動に莫大な資金が必要なのは言うまでもない。これらのプレジデンツ・ミッションを含めた日本サッカー協会の事業における総予算は、2008年度で約178億円である。現在行われている北京オリンピックに日本代表選手団を派遣している日本オリンピック委員会の倍以上の予算規模となり、日本のスポーツ団体でも大規模組織の一つと言える。
ではJFAは、この約178億円という事業予算をどう捻出しているのだろうか。財団法人であるため税制面で一部優遇はあるが、基本的にはすべての収入を事業活動によって得ている。
以下のものが主な収入源となる。

・登録料収入(選手・チーム・指導者・審判員の登録料)
・代表関連事業収入(各年代)(試合の入場料・テレビ放映権料等)
・競技会開催事業収入(高校選手権・天皇杯・CWC等の入場料・テレビ放映権料等(Jリーグの入場料の一部(3%)も含む))
・指導普及事業(指導者講習会、研修会参加費、教本ビデオ等販売収入)
・事業関連収入(協賛金、スポンサー・グッズ等ロイヤリティー収入)

※過去のニュースから調べた内訳です。JFAの収入内訳(具体的な金額)の情報ソースがあればぜひご教示ください。

これらの事業収入の中で大きな割合を占めるのが、代表関連事業収入、競技開催事業収入(Jリーグの上納金)、事業関連収入(スポンサー契約等)(具体的な金額は不明)であるが、昨今の日本代表(五輪代表を含む)の人気低下の煽りを受けて、代表関連事業収入及び事業関連収入が著しく減少している。日本代表戦の入場収入やグッズ販売もさることながら、日本代表の人気低下は、最も事業収入で大きい比重を占めるスポンサー契約の数を減らしかねない。まだ恐らく大きな額の運用資金や繰越金があるにせよ、これだけJFAの事業規模が大きくなれば、短期間のうちに収益モデルの循環不全が起こる可能性も大いにあり得る。つまりJFAが事業の継続と拡大をしていくためには、事業収入を増やしていかなければならない。とりわけ代表関連事業収入および事業関連収入の減収に歯止めをかけ、増やしていかなければならない。そして代表関連収入・事業関連収入を増加に最も直結した施策が、「日本代表の強化」であることは明らかである。日本代表がワールドカップで躍進することや、オリンピック代表がメダルを獲得することなどは、JFAの収入増加に直接反映する。そもそも、日本サッカー協会が事業を行う目的達成の成果として日本代表の強化が挙げられる。
JFAにとって日本代表の強化をし、日本代表人気を復活させ、日本代表の広告価値を高めることは、プレジデンツ・ミッションに明記されていないもう一つの重要なミッションなのである。
日本代表強化という観点から秋春制移行を考えた時には、大きなメリットがありそうである。秋春制に移行することにより、短期的には、日本人選手を海外リーグで経験を積ませる可能性が高まり、また国際Aマッチを組み易くなる。またJリーグでサッカーのし易い環境を整備することにより選手のレベルを高められる。
確かに今シーズンのJリーグを観戦して思うことは、暑さが理由なのか、それとも暑さによる疲労蓄積なのかは不明であるが、チームの実力差とは関係なく要因で勝敗が決まる試合が多いような節がする。暑さとスケジュールが「最大の敵」と各クラブが考えるようなリーグでは、チームにも、そしてチームでプレーする選手にも一定以上の成長は見込めない。
長期的に考えても、日本代表の強化が実現できれば、JFAの事業収益モデルは確固なものとなり、潤沢な資金のもと、日本のサッカー環境の改善や、育成制度を構築できれば、日本サッカー界の裾野を広げ、結果的には、更なる日本代表の強化が実現するというよい循環が形成される。

 犬飼JFA会長は、Jリーグのチェアマンになった訳ではない。積雪の多い地域をホームタウンにするクラブの冬の季節の積雪による試合(練習)環境の悪化や観戦環境の悪化、観客動員の減少もある程度、折込済みなのかもしれない。既に秋春制移行に起こりうるあらゆるデメリットと日本代表強化というミッションを天秤にかけて「秋春制移行」という決断を下している節がある。

犬飼JFA会長は、サッカーダイジェストのインタビューで秋春制移行問題に対して、

ネガティブなことばかりに目が行くのは“やる気”がないから。秋春制は実現させたいと思っている。(サッカーダイジェスト8/19号犬飼会長インタビューより)

という言葉に強い決意を感じる。
ちなみに犬飼JFA会長のインタビューで推測できる「寒さ」対策としては、積雪地域のJクラブには、人工芝の利用許可、降雪時期のアウェーでのゲーム実施、熱線や温風設備などの設置するための自治体への働きかけ、それらの設備投資へのJFA,Jリーグの直接的なサポートを含めていろいろな施策について考えているようだ。ただそれらの施策が、降雪地域での試合実施を実現し得る施策なのかは現段階では分からない。

秋春制へ移行した際の「防寒対策」を考えるよりも、そもそも秋冬制への移行が、日本代表の強化・日本代表人気の回復への効果的な施策になり得るのか考える必要がある。また一部の地域Jリーグクラブ及び、サポーターを蔑ろにしているという事実も残る。
前者に関して言えば、確かに選手のプレー環境を考えればやはり、熱い夏より冬場の方が選手の力は発揮されが(当然、降雪のない地域での話です)、日本代表強化・日本代表人気の回復の施策が、Jリーグの春秋制の移行のみだとは決して思わない。例えば、サッカーダイジェスト8/26号でセルジオ越後氏は、自身のコラム(セルジオ越後の天国と地獄)においてJリーグクラブの削減を実施、1チームにおける選手レベルを高めることを提言している。
 また、秋春制への移行は、一部のクラブやサポーターを蔑ろにしていることに関しては、そもそも、日本サッカー協会の会長に、Jリーグのサポーター本位の決断を期待する方が間違っているのかもしれない。Jリーグクラブ33クラブを統括するのは、直接的には日本サッカー協会ではなく、Jリーグである。今回の秋春制移行問題について鬼武Jリーグチェアマンの言動は気になるところである。特に、サポーターの観点で言えば、移行により直接的に影響があるのは積雪地域での試合の積雪対策である。調べたが、ほとんど鬼武Jリーグチェアマンの秋春制移行に関する意見を見つけることができなかった。唯一、今週発売されたサッカーダイジェスト8/26号の鬼武Jリーグチェアマンへのインタビューの最後に秋春制への移行について言及している部分を発見した。秋春制への意見を尋ねられた鬼武Jリーグチェアマンは、

これまでも議論していることで、現状で結論が出ていないものです。J1とJ2だけの問題では決してないのですが、JリーグのことはJリーグで決める、ということです。

と語っている。
もしこのコメントが信用できるものなら、2010年シーズンで秋冬制が導入されることはないのではないかとも思うのだが…。
秋春制移行問題に関しては、鬼武Jリーグチェアマンがイニシアティブをとり決めてもらいたい。

【Jリーグ秋春制移行問題】サカダイの犬飼会長インタビューを考える。犬飼氏が就任したのはJリーグチェアマンではなく、日本サッカー協会の会長だということを思い知る(上)

posted by toddocom |02:14 | Jリーグ | コメント(10) | トラックバック(0)
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【Jリーグ秋春制移行問題】サカダイの犬飼会長インタビューを考える。犬飼氏が就任したのはJリーグチェアマンではなく、日本サッカー協会の会長だということを思い知る(下)

週に1、2度の試合なら、除雪したりドームを使ったりで何とかなるでしょう。
しかし、秋春制になった場合、降雪地域のクラブにとって最大の問題は、雪が積もると「練習」ができない点です。常に見過ごされる問題点なんですけど。

自前で屋内スタジアム持っているクラブなんてありませんからね。毎日の練習のために、屋内のスタジアムを借りるか、広いグラウンドを除雪するか、いずれにせよ莫大な費用がかかることは間違いないでしょう。

posted by ラムダ | 2008-08-14 02:56

【Jリーグ秋春制移行問題】サカダイの犬飼会長インタビューを考える。犬飼氏が就任したのはJリーグチェアマンではなく、日本サッカー協会の会長だということを思い知る(下)

協会は視点が「秋春制への以降」に向いているようですが、
本当に問題なのは「年間の試合数を如何に減らすか」では?

ナビスコ、天皇杯、日韓選抜、ゼロックス、東アジア選手権などなど、
存在自体を再考すべきものが多々あると思うし、もし年間
スケジュールがもっと緩やかになれば、それだけで選手の負担が
軽減することは容易に想像できる。もちろん「利益」的な部分も
絡むので一概に全て廃止には出来ないのかもしれないが、
まずやるべきはそこの改善だろう。

それをやろうとせず、一気に「秋春制へ!」などと一発逆転風の
案を出して皆の目を誤魔化し、問題を希薄化させる協会の手法には
心底辟易する。

posted by 三連敗 | 2008-08-14 10:27

【Jリーグ秋春制移行問題】サカダイの犬飼会長インタビューを考える。犬飼氏が就任したのはJリーグチェアマンではなく、日本サッカー協会の会長だということを思い知る(下)

冷静で落ち着いたよい記事ですね(最近一方的な視点の記事が多かったもので…)

正直、協会の姿勢や施策で不満が多いのも事実です。
ただトータルで考えた時に、これほど短期間で成長し、また普及などの視点をもって
動こうとしている協会が世界でどれくらいあるだろうか、と思います。
管理人さんのおっしゃる通り、協会が秋春制を持ち出してきて時間をかけて議論を
している中で、雪国チームなどを考えていないはずがないと思います(重視しているかは
全く別の問題ですが)。

冷静に考えれば、ほとんどの問題において、わたしたちサポーターよりも協会の方が
深く考え、実際に行動していると思われます。
(もちろんそれでもサポーター側が議論し、声をあげることも重要だと思います)
問題はそれらがなかなか見えてこないことではないでしょうか。
今回の犬飼さんのインタビューのように、また協会スタッフによる公式見解として、
何が議論され、重視され、どういう経緯で結論に至ったかを共有したい。
そこがあればもっとお互いに前向きな議論が進むと思うのですが…

選手からも希望が出ているように、秋春制は単なる思い付きや誤魔化しではないと思います。
それだけに現在の状況は残念です。

posted by なるほど | 2008-08-14 12:35

【Jリーグ秋春制移行問題】サカダイの犬飼会長インタビューを考える。犬飼氏が就任したのはJリーグチェアマンではなく、日本サッカー協会の会長だということを思い知る(下)

犬飼さんはそんなにJを欧州リーグの草刈り場にしたいんですかね?

協会が議論しているとは思えない内容ですね。
現名誉会長のときはおそらくトップダウンのような形でしょうから、今は名誉会長からのトップダウンじゃないでしょうか。

まずはあまり期待できないオールスターを廃止してみてはいかがでしょうか。
これはスポンサーのための試合でしょ。選手やサポーターが望むようなチームや試合にならないような気がします。
来年韓国でやるらしいので、わざわざ韓国まで行って試合を見る人がいるのか見物です。

posted by とおりすがり | 2008-08-15 02:00

【Jリーグ秋春制移行問題】サカダイの犬飼会長インタビューを考える。犬飼氏が就任したのはJリーグチェアマンではなく、日本サッカー協会の会長だということを思い知る(下)

人工芝の利用「許可」……(嘆息)。

屋根の開かないドームスタジアムで野球と併用の札幌ドーム、しかしピッチの天然芝の質は一級品だということを誇らしく思っていた札幌サポの端くれとしては……何ともはや、という気分です。

Jリーグの強化がなければ、代表の強化だってありえないでしょうに。
犬飼氏の言い分には、何度読んでみても、怒り以外の何ものをも感じることができません。

posted by AH | 2008-08-15 16:43

【Jリーグ秋春制移行問題】サカダイの犬飼会長インタビューを考える。犬飼氏が就任したのはJリーグチェアマンではなく、日本サッカー協会の会長だということを思い知る(下)

ラムダさん
コメントありがとうございます。
犬飼JFA会長は、試合や練習をするのにお金がかかろうが秋春制にしようとする決意を感じます・・・
なぜそこまで秋春制を強引に進めようとしているのでしょうか?

今、考えてはいけないことが一瞬頭をよぎりました…
まさか、J1クラブ数を減らすための伏線ではないでしょうね…
そんなことは絶対あってはいけません…

posted by toddocom@管理人 | 2008-08-16 00:41

【Jリーグ秋春制移行問題】サカダイの犬飼会長インタビューを考える。犬飼氏が就任したのはJリーグチェアマンではなく、日本サッカー協会の会長だということを思い知る(下)

三連敗さん
コメントありがとうございます。
試合数を減らす手っとりばやい方法は、チーム数を減らすことです。ただなかなか難しいでしょうね、増えたチームを減らすのは・・・

野球のようにリーグを二つに分けるなどの方法もあります。
大会を減らすのは、もったいないのでヤマザキナビスコ杯をU-23でやるなどもいいのではないでしょうか?当然OA枠も導入です。

posted by toddocom@管理人 | 2008-08-16 00:45

【Jリーグ秋春制移行問題】サカダイの犬飼会長インタビューを考える。犬飼氏が就任したのはJリーグチェアマンではなく、日本サッカー協会の会長だということを思い知る(下)

なるほどさん
コメントありがとうございます。
長期的な育成のインフラの構築・短期的な代表の強化
JFAも課題山積です。
これらの課題に取り組むためには、資金が必要です。どのように安定的に資金を確保していくか、犬飼会長の重要なミッションだと思います。
もしかすると収益モデルを開発した代々の会長よりも継続させるこれからの方がよっぽど難しいかもしれません。

必ず議論の先には、最良の答えがあると信じていますが、秋春制移行の問題は、特定の人間が密室の話合いで決めたり、議論がされないままトップダウンで決めるテーマではありません。十分議論がされるべきですよね。

posted by toddocom@管理人 | 2008-08-16 00:53

【Jリーグ秋春制移行問題】サカダイの犬飼会長インタビューを考える。犬飼氏が就任したのはJリーグチェアマンではなく、日本サッカー協会の会長だということを思い知る(下)

とおりすがりさん
コメントありがとうございます。
JOMOCUPですが、来年は韓国でやるでしょうが、
来年以降は、大会方式を検討せざるを得ないでしょうね。

犬飼氏の言動を知るにつけ、
Jリーグと他国のリーグとの選手の流動性を高めることが、個人のレベルアップとJリーグに所属する日本人選手の活性につながると考えているようです。

確かに一理ありますが、
来シーズン以降に既に現実になりそうですが、
ブラジル人助っ人3人
アジア枠1名
在日外国人1名の計5名の外国人の出場も近い将来Jリーグで目にするかもしれません。

ただ私は、ヨーロッパ外国人が5人も出場するJクラブで日本人のレベルが上がるとは思えません・・・

posted by toddocom@管理人 | 2008-08-16 01:01

【Jリーグ秋春制移行問題】サカダイの犬飼会長インタビューを考える。犬飼氏が就任したのはJリーグチェアマンではなく、日本サッカー協会の会長だということを思い知る(下)

AHさん
コメントありがとうございます。
秋冬制は、積雪地域のクラブにとっては全く理不尽な案だと思います。
Jリーグ強化と日本代表強化は密接に関係しますが、
積雪地域のクラブが弱体することが、Jリーグの弱体と考えていないようにも感じます。

大宮のサポをやっていて感じますが、JFAは代表選手のいないクラブには冷たいような気がします・・・

恐らくJFAの考え方として、Jリーグは日本代表強化の一つの「しくみ」だが、Jリーグによって日本代表の強化を鈍化させてはいけない。みたいな考え方があるような気がします。

posted by toddocom@管理人 | 2008-08-16 01:08

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