2007 / 01 / 16
  Jリーグの「秋春制」移行は自殺行為

州の主なサッカーリーグは、秋に開幕して春に閉幕する、いわゆる「秋春制」だ。これに合わせ、Jリーグも秋春制に移行しようという動きがある。

日本代表のイビツァ・オシム監督も、就任直後に秋春制を提唱。これに迎合してか、Jリーグ幹部達も日程変更に前向きで、’08年にも秋春制移行を目指していると言う。鬼武健二チェアマンも、秋春制には「変えたほうが良い」とハッキリ発言している。

日程を合わせれば、選手の欧州への移籍がスムーズになる。欧州のクラブとの練習試合や、代表の親善試合も組みやすくなり、代表も強化できる。酷暑の時期がオフになり、選手のパフォーマンスが向上する可能性もある。

こうしたメリットは否定しない。だが、これらメリットを差し引いても、Jが秋春制に移行するのは自殺行為だと言えるだろう。

春制では、冬にリーグ戦を行う必要がある。たしかに、冬寒い欧州でも秋春制で運営できているが、日本には欧州にはない難敵がいる。それは「雪」だ。

北海道、東北、北陸、山陰といった地域の冬の積雪量は、実は世界的にみても特異的。秋春制で日程を組むイングランド、ドイツ、イタリアなどの都市部では、ほとんど雪は積もらないのだ。このうちドイツ南部(ミュンヘンなど)は比較的雪が多いが、年間降雪量は札幌に比べ5分の1以下。それでもドイツのブンデスリーガには、クリスマス頃から1ヶ月以上のウィンターブレークがある。

アルプスに近いイタリア北部(ミラノなど)も、冬の気温や降水量は東京と同程度。トリノなどは、昨年の冬季五輪期間中でさえ積雪がなく、スキー競技会場では人口雪が大活躍した。

雪が多い北欧(ノルウェー、スウェーデンなど)やロシアのリーグは、日本と同じく春に開幕する日程だ。つまり、日本のような雪の問題を抱えながら真冬にゲームをしているリーグなんて、世界のどこにも無いのである。

1が秋春制になれば、チームの入れ替えがあるJ2も、その下のJFLや各地域リーグも、一斉に秋春制にする必要がある。雪で苦しむことになるのは、新潟や札幌や山形といった一部のクラブだけではない。除雪や芝の管理などの莫大な費用で、破産するクラブも続出しかねない。

スイスリーグのように3ヶ月ほどの長い冬休みをとり、雪を避ける手はある。だが、それでは日程が詰まるため、チーム数の大幅削減は避けられない(スイスリーグは10チーム構成)。

サポーターに寒中観戦を強いては、観客動員数が減る可能性も高い。欧州に比べてTV放映権料収入が圧倒的に少なく、入場料が収益の多くを占めるJリーグでは、より深刻な問題になり得る。寒い冬には選手の怪我も増えよう。学校の新学期と合わなくなるデメリットも、言うまでもない。

欧州と日程を合わせて代表を強化したいという考えはよく分かる。だが、日本に合ったスケジュールで国内リーグをじっくり整備し、充実させ、その結果代表が強くなるというアプローチこそ、とるべきではなかろうか。

    稲見純也 JunYa Inami

<この記事は、1月09日発売『週刊漫画サンデー』に掲載されたものです>


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