経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”

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【第47回】 2008年10月10日

恐慌を鎮める抜本策実施を阻む
リーマン会長350億円報酬への怒号

 米議会が金融恐慌の実態解明に乗り出した。下院は6日の公聴会で、破綻した投資銀行大手リーマン・ブラザーズのCEO(最高経営責任者)だったリチャード・ファルド氏を追及。早速、過去8年間に現金やストックオプションをあわせて3億5000万ドル(350億円強)相当の報酬を得ていた事実を明らかにした。

 しかも、ファルド氏は資金繰りの悪化を把握していたにもかかわらず、高額のボーナスの支払いを続けて、リーマン・ブラザーズの資本を食い潰していたという。

 その一方で、金融恐慌はとどまるところを知らず、10ヵ国の中央銀行の同時利下げにもかかわらず、世界的な株式相場の下落に歯止めがかからない。残された最後の手段が、米政府による金融機関の自己資本補完のための公的資金の投入だ、との見方は少なくない。

 しかし、破綻したリーマンの役員が高額報酬を受け取っており、それゆえに自己資本の食い潰しが加速していた事実が明るみに出たことで、納税者の公的資金投入に対するアレルギーがこれまで以上に強まるのは確実だ。

 いかにして、経営者たちが貯め込んだ法外な報酬を吐き出させるのか。あるいは、経営者たちの刑事責任を問うことはできるのか。こうした政策的には隘路に過ぎない問題に議論が集中してしまい、経済危機の回避策作りが再び迷路に陥りかねない情勢となっている。

ファルド氏の経営責任を
議会は執拗に追及

 「議会は先週金曜日、ウォール街のために7000億ドルの救済パッケージを承認せざるを得なかった。しかし、もしウォール街がもう少し無謀でなく、大統領府ももう少し注意深ければ、(現在直面しているような)金融危機は回避できたはず。そうすれば、我々議員は誰一人、こんな法案に賛成票を投じずに済んだのだ」――。

 米下院「監視・政府改革委員会」のヘンリー・ワックスマン委員長(民主党、カリフォルニア選出)は6日の公聴会の冒頭演説を、こう切り出して、怒りに声を震わせてみせた。ベテラン政治家らしく芝居気たっぷりに、ウォール街の高額所得者たちの不始末に多額の税金をつぎ込むことへの納税者の怒りを、代弁してみせたのだ。

 その約3時間後、ワックスマン委員長は、公聴会の第2部で、あのリチャード・ファルド氏を証人として喚問した。ファルド氏に「真実のみを述べる」と宣誓をさせたうえで、ファルド氏が過去数年に受け取った報酬の推移を詳細に書き込んだ大きな図表を示しながら追及を開始した。

関連キーワード:アメリカ サブプライム問題 グローバル経済 金融機関 金融危機

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執筆者プロフィル

写真:町田徹

町田徹
(ジャーナリスト)

1960年大阪府生まれ。神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒。日本経済新聞社に入社後、記者としてリクルート事件など数々のスクープを連発。日経時代に米ペンシルバニア大学ウォートンスクールに社費留学。同社を退社後、雑誌「選択」編集者を経て独立。日興コーディアルグループの粉飾決算をスクープして、06年度の「雑誌ジャーナリズム賞 大賞」を受賞。「日本郵政-解き放たれた「巨人」「巨大独占NTTの宿罪」など著書多数。

この連載について

硬骨の経済ジャーナリスト・町田徹が、経済界の暗部や事件を鋭く斬る週刊コラム。独自の取材網を駆使したスクープ記事に期待!

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